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理性的な判断と管理があったからこそ佐々木朗希は飛躍した

2019.07.25

理性的な判断と管理があったからこそ佐々木朗希は飛躍した | 高校野球ドットコム

 5000人以上の観客が集まり、県内外48社、約150人のメディアが駆け付けた注目の一戦、大船渡vs花巻東。最大の注目だった佐々木朗希の登板はおろか、試合出場はなかった。その背景とは?

大投手を預かる大変さ

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佐々木朗希(大船渡) 写真:共同通信

 

 岩手県営野球場の1階。そこにはスタメン表が張り出されるが、スタメンも佐々木の名前はなかった。そして佐々木が最後まで登板することも、試合に出場することもなかった。その理由について国保監督は

「故障を防ぐため」と語る。またこうも語った。

「試合展開に応じて試合に出す考えはありませんでした」

 チームの4番打者でもある佐々木が野手としても欠場する理由とは?

「心の負荷がかかるからです。また野手として出れば投げる動作が入ります。そういうのもすべて排して、試合には出しませんでした」

 佐々木に登板しないと告げたのは決勝戦当日の朝。佐々木は笑顔で受け入れたという。ただ国保監督にとっては厳しい判断だった。

「甲子園大会の素晴らしさ、達成感というのは私も理解していますし、地元の方々の期待も高かったのは感じておりました。だからこそ負けたのは私の力不足。佐々木がいなくても勝てる投手を作れなかった、チームを作れなかった私の責任です」

 これほどの大投手を預かるというのはこれほど大変なのかと感じさせるを得なかった。そして国保監督は覚悟をもって選手を起用しているのも伝わってきた。 野手として出場することになれば、結果的にも肉体的にも、精神的にも負担がかかる。登板しないと決めたら、とことん試合にも出さない。こういう貫徹さが佐々木の才能を守ることができているのかを実感させられた。

 これまで大会前から国保監督の佐々木の投手起用について語られることは多かったが、佐々木だけが特別扱いしたわけではない。全投手が同じように大事に管理している。佐々木の中学時代のチームメイトで、投手の和田吟太は国保監督の方針について、

「本当に投手の状態を気遣ってくださる先生で、投手が全力で投げられるように調整させてくれる方でした」

 また大船渡も1週間ほどに球数管理をしている。あくまで目安だが、和田の場合、大会前では1週間で球数は100球以内、大会とは関係がない練習試合の場合、150球以内と決められているようだ。

 あくまで一部分の情報だけだが、厳格な球数管理が佐々木の故障を防ぎ、成長させたことは間違いない。

 投げれば佐々木は何度でも見たいと思わせるほど素晴らしい投球を見せてくれた。軽く投げているように見えても、回転数抜群の140キロ後半~150キロ前半のストレート、力を入れたときの150キロ中盤~150キロ後半のストレート、130キロ後半のフォーク、130キロ前半のスライダー、130キロ近い縦スライダー、そしてカーブと1球1球が一級品だった。

 最後の夏、しっかりと調子を合わせて29回を投げて、2失点と好投ができたのは、周到な調整があったからだろう。甲子園がかかる決勝戦で登板しなかったのは大船渡らしい決断だと思うし、驚きはなかった。むしろ21日、194球、24日、129球とかなりの球数を投げている。佐々木の将来を考えれば、特に痛みがなくても、登板させないのは最善の決断だといえる。理性的に決断した国保監督の行動を称えたい。

 高校日本代表候補となっている佐々木。もし選ばれれば、エースとして期待されるだろう。昨年からU-18では球数制限が設けられた。そこではリミッターを外した投球を見せてくれるに違いない。今度は世界の野球ファンを驚かせてほしい。

文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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