前向きに全国制覇と日本一の捕手へ 東妻純平(智辯和歌山)【後編】
一年生から名門・智辯和歌山の正捕手としてセンバツ準優勝、ベスト8の大きな原動力となった東妻純平選手。甲子園優勝、そしてプロも経験した新監督・中谷仁監督も下で才能を開花させ、捕手を初めてわずか二年あまりでドラフト候補にまで成長した。
今年のセンバツでも打っては一回戦の熊本西戦ではホームラン、守っては準々決勝・明石商業戦で二塁牽制アウトにする強肩を披露。捕手として三試合全てでマスクを被り、タイプの違う4投手を巧みにリードした。
後編では、捕手としてのテクニックは勿論、バッターとしても一目置かれる東妻選手に打撃の極意を教えてもらった。
◆兄のリベンジを胸に名門の扉を叩いた 東妻純平(智辯和歌山)【前編】
東妻純平が語るスローイング&ストッピングテクニック
東妻純平(智辯和歌山)
「遠投力は高校に入ってから20メートルほど伸びました」
東妻の高校入学時の遠投力は106メートル。これでも十分、強肩の部類に入るが、2年強が経過した現在、遠投力は125メートルに到達。ホームベースからセンターに投じたボールはついにフェンスの向こう側へ届くようになった。
「キャッチボールの遠投の際、低いライナーのままノーバウンドで投げられる距離がどんどん伸びていきました。要因としてはトレーニングで筋力がついたことが一番大きいと思ってます」
高校球界トップクラスと評されるスローイングは素早さと正確性を兼ね備え、二塁送球タイムの最速は1.84秒。
「正確でクイックなスローイングをおこなうために大切にしていることは?」という問いに対し、東妻は次のように答えてくれた。
まずは体の近くで捕球して(左)、右足を運ぶ(右)が東妻流ステップの方法
「まずはミットの芯でしっかり捕ること。そして腕を伸ばして捕りにいかず、体の近くで捕ることが大切です。そしてボールが収まったミットの真下に右足を持って行く。体の近くで握り替えたボールは耳の方にひかず、その場所に置いておき、あとは体の回転で投げたら勝手に腕が振られてボールが飛んでいく感覚で投げています」
第2関節まできっちり地面につけ(左)、右手を後ろに添えてリラックスして猫背になること(右)が東妻のストッピングの極意
ストッピングで大切にしていることについても尋ねてみた。
「1番大事なのはストッピングの形を正しく作ること。ミットをはめた左手の第二関節までしっかり地面につけることで股の間を抜かれることがないようにし、右手はミットの後ろに置く。上体の力を抜き、少し猫背になると防具と自分の体に若干の空間ができるのですが、この空間があるとボールが吸収されやすくなり、下にボトット落ちるストッピングが安定して実行できるようになる。ボールが当たることによる痛みも緩和できます」
あとはその正しい形を「早めに」作ることだ。
「大切なのは準備。ぼくは変化球のサインを出した時はワンバウンドがくるものだと思うようにしています。実際にワンバウンド投球が来た時も『あ、ワンバウンドになってしまった!』ではなく、『よっしゃ! ワンバウンドが来た!』と思えることで形をスムーズに作れる。いくらいい形を作れても作るタイミングが遅れてしまうと、うまく前に落とせないので、心の準備は非常に重要なポイントですね」
[page_break:狙って打った本塁打は1本もない]狙って打った本塁打は1本もない
東妻純平(智辯和歌山)
「ぼくはホームランバッターというよりは鋭いライナーで外野の間を抜いていくのが持ち味のタイプ。打点を稼げるチャンスに強い打者になりたいです」
テーマをバッティングに移し、目指す打者像を尋ねた際の東妻の答えだ。
取材日時点で高校通算28本塁打を積み上げていたが、「狙って打った本塁打は1本もない」という。
「現在はボールを長く見るために打つポイントを捕手寄りにすることを意識しています。やはりポイントを手元に持ってくる分、ボールになる変化球の見極めはよくなるので。以前はもっとポイントを投手寄りに置き、前で勝負していましたが、パワーがついた分、スイングスピードが上がり、ボールを呼び込んでも振り遅れなくなった。変化球を待っている時に速いストレートがきてもファウルで逃げたり、ライト線へ入れたりすることができるようになりましたね」
来たるラストサマーに向け、意気込みを問うと「日本一になることです!」と即答した東妻。最後に高校球児へのメッセージをお願いした。
「現状に満足してしまったらそこで成長は止まってしまうと思うので。常に向上心と疑問心を抱くこと、そしてミスをしても明るく笑顔で前向きでいることを自分は常に心掛けています。この記事を読んでくださっている高校球児のみなさんもミスしてしまった時こそ前向きに笑顔で頑張っていきましょう!」
文=服部 健太郎
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