できたことができなくなる
夏大会前になると、急に調子を落とす選手がいます。それまでは簡単にできていたことが急にできなくなります。大事な大会前に失速するのか、大会に向けて調子を上げていくのか、選手は夏大会絶好調で挑みたいところです。
では、どうして今までできたことができなくなるのでしょうか。心技体に分けて考えてみましょう。
心の焦りは身体に影響する
過度な焦りは禁物(写真はイメージ)
まずは、心の部分です。最後の大会になれば人数の多いチームの選手は、「背番号をもらいたい」と必死になります。精神的に焦り、不安にもなります。結果ばかり考えて、ひとつのことに集中できなくなります。
簡単なことを複雑に考え、色々なことに意識がいってしまい「あれも・これも」考えがちです。心の焦りは身体に影響するので、自分が自分に対して過度なプレッシャーをかけるのです。
次に技術の部分です。打者であれば精神的に焦ってくるので、今まで振っていなかったボール球に手を出し始めます。極端にいえば投球に対して飛びついて打ち出します。どんなに調子が良くても、ボール球をスイングし出すとヒットの確率を落とします。
凡打が続けば取り返そうとして力み、更なる凡打を引き起こします。
投手は精神的不安定から、無意識に力で球を抑えつけようとします。当然、球はばらつきますが、力で抑えつけようとして上半身が強い投げ方になることでしょう。
どんな投手でも四死球、打たれたりします。完璧主義でもないのに、ちょっとしたマイナスの結果が許せなくなる時期です。フォームのリズムが早くなり、リリースのポイントもばらつきます。
最後に身体の部分です。焦りから「もっとやらないと」いつもよりもたくさんやろうとします。やり過ぎが怪我・故障に繋がる選手もいます。集中力も分散しているので、「えっ」という防げる怪我をしてしまう選手もいます。
夏大会前に絶対に避けたい故障をしてしまうのです。
怪我までいかなくても、疲労からくるコンディションの低下もあります。大会に合わせて徐々に調子を上げたいのに、逆の流れになり選手もチームも失速するのです。
「あんなに春までは良かったのに・・」
最後の最後に調子を上げるには、どうしたら良いのでしょうか。一旦、調子を下げていても復活するには具体的に何へ意識を向けて、どう動いていけば復調するのでしょうか。
大会近くなって選手が意識するべきこと
全てを出しきり最高の夏にしよう!(写真はイメージ)
1 コンディション優先
結果が思わしくなくても、焦らないで量より質を考えます。少ない量を集中して行うようにします。指導者は、やり過ぎだと感じれば量をコントロールします。この時期は「もう1球」は禁止です。自分(チーム)で決めた量だけを行います。
良くても悪くても受け入れ、修正ポイントがあれば明確にして次の機会に取り組みます。ダメなところがハッキリしないと量をしようと考えるので、「今は○○だからうまくいかない」と原因を把握します。
大会に向けて食べる・寝ることを意識します。体重が落ちていないか、寝不足になっていないか、自宅(もしくは合宿所・寮)に戻ってからのタイムスケジュールを紙に書き出して、規則正しい私生活につとめましょう。
2 野球から離れる
大会が近くなれば、頭の中は野球でいっぱいになります。考えれば考えるほどプレッシャーは大きくなり、マイナスの渦に引き込まれます。野球の練習をするときはやるべきことに意識を向けますが、練習が終われば意識を野球から離すことも大事です。
学生ですから勉強をする。部屋の整理整頓を時間をかけて行う、など野球から少し離れてリフレッシュします。ONとOFFをはっきりさせ、生活にメリハリをつけます。
野球から離れているときは「気をためる」、野球をしているときは「気を吐く」と考えても良いかもしれません。この時期はためる行為を大事にすると良いでしょう。
3 基本に戻る
やるべきことを今一度整理をします。各分野について、何に意識を向けるのか。打つ、走る、守る、投げる、各分野について「これ」を明確にします。練習のときにはシンプルに「それ」へ集中します。
自分のリズムを大事にし、いつもしているルーティンをもう一度丁寧に行います。私は、原点回帰という言葉をよく使いますが、基本中の基本は何だったのか改めて考えます。基本に意識を向けて、できてもできなくてもOKという受け止め方が大事です。
と、いうことで、具体的に何に意識を向けて、何をすれば復調するのか分かったと思います。最後の最後となれば、誰でも不安になり「あと何日」とカウントダウンをすることでしょう。カウントダウンは、選手によっては徐々に大きなプレッシャーに変わります。
あと何日しかないという考え方から、何日から始まるという考え方に変換したいものです。どちらも同じことなのですが、期日が迫ってくるではなく、期日を追い越して未来に意識を向ける方が気分的に楽です。
やらなければいけない時間ではなく、ショータイムという考え方。今まで積み重ねたことを、たくさんの人に披露するという考え方です。粘り強く教えてくれた指導者、支えてくれた保護者、お世話になった恩師の方々、どんな結果になっても受け止めてくれることでしょう。
ショータイムまであと何日か・・
どうせやるならガチガチでプレーするよりも、思い切って元気はつらつプレーしたいものです。まずは、残された時間で調子を上向きにすることに集中してください。
終わり良ければすべてよし!
このコラムを読んで、本番で絶好調男になって欲しいです。
(文=遠藤 友彦)