試合レポート

福知山成美vs京都翔英

2019.07.15

福知山成美が京都翔英との投手戦を制す

 京都翔英遠藤慎也(3年)と福知山成美小橋翔大(3年)による大会屈指の好投手対決が3回戦で早くも実現。雨中の[stadium]わかさスタジアム京都[/stadium]に駆けつけた大勢の高校野球ファンの期待に応えるハイレベルな投げ合いを両投手が見せてくれた。

 最速145キロの速球を投げる京都翔英の遠藤はストレートとスライダーを織り交ぜ、三者連続三振という最高の立ち上がり。一方の福知山成美・小橋も「ブルペンから調子が良かった」とこの日も抜群の制球力を見せ、こちらも2三振で三者凡退と完璧な投球を披露する。

 福知山成美は2回表、先頭の4番・井戸悠太(2年)が中前安打で出塁すると、続く5番・原陽太(3年)の二塁ゴロの間に二塁に進む。ここで6番・坂優斗(3年)が内角のストレートを詰まりながらもライト前に運び、井戸が生還。「選手点を取ることがこの試合に勝つための必須条件」と考えていた井本自宣監督にとってこの1点は大きな価値をもたらした。

 その後は両投手が好投を見せ、互いに得点が入らない。京都翔英が同点のチャンスを作ったのは7回裏、先頭の5番・鈴木遼(3年)が左越え二塁打を放つ。続く6番・森岡大輔(2年)は犠打を決めるが、捕手の原が雨でぬかるんだ地面に苦しみ、一塁へ悪送球。無死一、三塁とチャンスが広がった。

 しかし、ここで7番・菅野童夢(3年)は浅い右飛に倒れ、走者は動けず。続く8番・岡本翼(3年)はセーフティスクイズを試みるが、三塁走者は本塁に生還できず、挟殺プレーで一塁走者が三塁でアウトになる。それでも二死二、三塁とチャンスは続いたが、9番・遠藤は小橋のスライダーの前に空振り三振に倒れ、同点に追いつくことはできなかった。

 ピンチの後にはチャンスあり。ピンチを凌いだ福知山成美は8回表、二死一、二塁から7番・神内秦(3年)が適時二塁打を放ち、貴重な追加点を挙げる。だが、京都翔英もその裏に鈴木遼の適時打で1点を返し、試合の行方は最終回までわからなくなってきた。


 8回まで両投手による素晴らしい投手戦を繰り広げられてきたが、9回表に試合が大きく動く。9回表の福知山成美は9番・小橋、1番・佐藤翔平(3年)、2番・人知憲蔵(2年)の三連打で無死満塁と追加点のチャンスを作る。ここで3番・東原成悟(3年)が中越え2点適時二塁打を放ち、大きな追加点を奪った。3点差に広げられた遠藤は続くピンチを右飛と見逃し三振に打ち取って意地を見せるが、二死二、三塁から坂に中越え2点適時二塁打を浴びて涙の降板。1回戦からここまで大会屈指の投手に相応しい投球を続けていたが、ここでついに力尽きた。

 福知山成美は代わった今井大志(3年)からも追加点を奪ってこの回7得点のビッグイニング。9回裏は小橋からマウンドを託された左腕の橋本翔生(3年)が京都翔英の攻撃を無失点に抑えて試合終了。福知山成美京都翔英との大一番を制した。

 今年のチームを「一つの目標に集中できるチーム」と分析する井本監督。福知山成美の選手たちはこの試合を一つの山場と位置づけ、遠藤を意識して練習に取り組んできたという。ベンチもかなり盛り上がっており、この試合に懸ける想いの強さを感じさせられた。

 また、井本監督はセンバツで「ライナーバック」と書かれた紙を選手に見せたことで話題になっていたが、この夏は「切り替え」、「冷静に」など7種類に紙のバリエーションを増やしてきた。「言葉にするよりも視覚的に訴えた方が気持ちが落ち着くのかな」という考えから使うようになったが、紙を掲げると好結果につながることが多いという。

 9回の東原の打席では「笑顔」の紙を見せると、貴重な適時打を放ち、試合を決定づけた。紙を見る側の小橋が「雰囲気をガラッと変える一つのアイテムだと思っています。紙も白いのでスッと目に入ってきます」と話すように選手からも好評の様子。試合状況や選手の性格に合わせて出す紙を選ぶという井本監督のベンチワークにこれからも注目だ。

(文:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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