関東大会で評価を挙げた投手と野手は？注目選手のパフォーマンスを徹底分析！【関東大会総括】

　初回の関東大会総括では関東大会出場校の投手運用について紹介したが、今回は関東大会で活躍を見せた逸材について紹介をしていきたい。

　まずは3年生から。

今大会で評価を上げた和田朋也（山村学園）

　まず今大会で評価を挙げた投手は和田朋也（山村学園）ではないだろうか。ストレートの球速は最速135キロと決して速くはないが、球速差をつけた2種類のスライダーの精度が高い。一見、遅いストレートに見えるが、打者の手元で曲がる軌道なので、見た目以上に打ちにくい。良くなったのは投球の心構え。2年秋までの和田は強いストレートを投げようと力みが見える投球だった。はっきりいえば、スピードでは136キロを何度も計測した昨秋の方が速かった。

　今は130キロ前半ながらキレがあり、コーナーギリギリにコントロールされたボールを投げ込むことができている。今のメンタリティ、心構えで行っていけば、高いレベルで活躍できるだろう。

　今大会、20回を投げて無失点の好投を見せた中村晃太朗（東海大菅生）も別格の安定感だった。最速135キロ前後ながら、120キロ台のスライダー、スクリュー気味のチェンジアップ、カーブを駆使する投球術は攻略するのは難しい。中村はストレートのスピードが常時120キロ後半だった駿台甲府戦も、ストレートを打たれたのを見て、一転してチェンジアップ中心攻めに切り替えるなど、視野の広い投球ができるのが強み。全国レベルの技巧派左腕としてさらに進化した姿を見せてくれた。

速球派サイドハンド横山陸人（専大松戸）

　右投手では横山陸人（専大松戸）がナンバーワンだろう。右サイドから最速143キロを計測した速球は切れ味抜群で、強打の健大高崎打線を8回無失点に抑えた。千葉県だけではなく、関東の強豪校相手に抑えたことはポイントが高いだろう。全国で数少ない速球派サイドハンドとして成長に期待がかかる。

　埼玉県ナンバーワン右腕として注目された飯島一徹（東農大三）は桐光学園戦で先発したが、3回を投げ、7失点と悔しいピッチングに終わった。埼玉県大会と比べるとストレートが走っておらず、キレのあるスライダー、スプリット、ツーシームも鳴りを潜め、持ち味を発揮できなかった。とはいえ、全国的に見てもハイレベルな桐光学園打線と対戦したのは、夏へ向けて良い経験になったはず。さらに強力になる埼玉のライバルたちに抑えるためにはどういう投球をすればいいのか。その答えを夏に見せることを期待したい。

　
最速146キロ右腕・村田 賢一（春日部共栄）は、栃木工戦で4回無失点の好投を見せたが、東海大菅生戦で6失点完投。ストレートの常時は135キロ前後と、秋と比べるとまだ目に見えた球速アップはできていない。ピッチング、バッティングとすべてにおいて夏は上積みした内容を見せることを期待したい。

　ほかでは最速139キロのストレートを武器に今大会、14イニングで3失点の好投を見せた杉田智也（専大松戸）、右サイドから138キロを計測し、力強い投球を見せた紫藤大輝（東海大相模）、延長12回を投げ切った144キロ右腕・中山航（藤代）も自分たちの持ち味を示したといっていいだろう。

強打の三塁手・遠藤成（東海大相模）

　野手では、高校通算37本塁打のスラッガー・遠藤成（東海大相模）は18打数5安打を記録。爆発とはならなかったが、打席の内容を見ると、安定感がある。スクエアスタンスでどっしりと構え、不用意なボール球には手を出さず、速球、変化球にも柔軟に対応ができる強打者。21打席で三振はわずかに1回と、ミート力も高い。三塁守備は強肩が光る。県大会では遊撃手だった能力からすると、球際の強さ、肩の強さが求められる三塁手の方が持ち味を発揮できるだろう。

　遊撃手では成瀬脩人（東海大菅生）が抜群だった。動き出しのスピード、バウンドを合わせる動き、三遊間の深い位置からでもダイレクトで投げられる強肩と、今大会ナンバーワンのパフォーマンスを発揮した。打者としては打率.333を記録。広いコースに対応ができるバットコントロールの高さを存分に発揮。しいて言えば甘く入ったボールを長打にできる技術は欲しい。今年の遊撃手で、総合力はトップクラス。夏に大活躍することを期待したい。

　抜群の強肩と俊足を誇る小山 翔暉（東海大菅生）は捕手として成長を見せた。エース・中村晃太朗をはじめ2年生投手を粘り強くリード。ストッピング技術も高まり、1.9秒台の強肩を武器に盗塁刺殺を決めるなど、存分に持ち味を発揮。打者としては2番捕手でスタメン。犠打を一切しない2番打者として打線を勢いづけた。12打数3安打に終わり、小山の能力からすると、物足りなさを感じるだろう。3安打のうち2本は二塁打を記録するなど、狙い球をミートができた時は素晴らしい打球を見せてくれる。打撃面でどれだけ安定したパフォーマンスを発揮してくれるか、夏まで注目してみていきたい。

　今大会、野手として大きく評価を挙げたのは桐光学園鈴木智也（桐光学園）だ。東海大菅生の小山と同じく「バントをしない2番打者」としてスタメン出場。飯島一徹（東農大三）から痛烈な二塁打を放つなど、好投手相手にも能力を発揮し、今大会は14打数6安打を記録し、打率.429、出塁率.467、長打率.714と素晴らしい打撃指標を残した。鈴木は懐が広く、無駄のないスイング軌道で、最後まで振り切った鋭いスイングができているため、広角にも長打を打ち分け、構え遅れをしないので、140キロ台の速球に対しても対応ができる。打ち損じもなく、今大会の左打者では最も内容が良かった。

　足も速く、センターからの守備を見ると、守備範囲が広く、抜群の強肩。走攻守の総合力は今年の外野手の中ではトップクラス。全国クラスの逸材だと印象付けた。

ベスト4へ躍進させた橋本大樹（山村学園）

　初のベスト4進出の山村学園は高校通算15本塁打の 山村学園橋本大樹（山村学園）の活躍が光った。スクエアスタンスで構える姿は力みがなく、ボールの待ち方が良い選手。1回戦の水戸商戦では2ランを記録。15打数4安打5打点と勝負強さを見せ、二塁スローイングで最速1.88秒を記録した強肩や、投手陣を粘り強くリードした点も評価が高い。夏まで見逃せない好捕手となった。

　山梨学院戦で本塁打を放ち、2試合で8打数5安打の活躍を見せた水谷 優希（浦和実）も豪快なスイングから強烈な打球を飛ばし、振り切ったスイングでもミート力が高く、完成度の高い打撃を披露。ライトから強肩が光る大型外野手だ。

　次回は関東大会で活躍を見せた下級生の逸材を紹介したい。

文＝河嶋 宗一