最新器具で技術革新!選手の思考力とやる気を増幅させる光泉(滋賀)!【前編】
滋賀県草津市にある光泉高校。2002年夏に甲子園の出場経験があり、その後も2016年春に県大会優勝を飾るなどコンスタントに県内で上位に進出する有力校だ。ミズノ社の計測アプリ「MA-Q」の導入や部でのTwitterアカウントの活用など最新テクノロジーを積極的に取り入れる同校の取り組みに迫った。
プロ注目のバッテリーを中心とした新チームで挑んだセンバツ出場の夢
桜が咲き誇るグランドで練習する光泉の選手たち
昨夏は初戦で準優勝した綾羽に0対3で敗戦。敗れたその日に古澤和樹監督が主将に指名したのがフェントン・ライアン(3年)だ。フェントンはオーストラリア人の父と日本人の母との間に生まれたハーフで3歳から日本に住んでいる。選手としては上位打線を打ち、捕手を務めるチームの中心。「明るくて、誰にでも同じように発言できる」という理由から満場一致で主将になることが決まった。
3年生が少なかったこともあり、旧チームのレギュラーは多く残っていた。その中心が当時で最速142㎞の速球を投げていたエースの吉田力聖(3年)だ。中学時代は向日市立西ノ岡中軟式野球部に所属し、目立つ存在ではなかったが、2年生になって台頭。県内でも有数の好投手となった。
リードするフェントンは二塁送球を1.9秒で投げる強肩捕手。リード面についても「配球もだいたい、僕が思っているのと同じようになってきましたね。他の子は机上の空論が強すぎて、自分の思っている理想のリードにこだわりすぎているところがありますが、アイツは柔軟にいけるタイプです」と古澤監督の評価は高い。
主将のフェントン・ライアン
チームの主力である吉田とフェントンは高卒でのプロ入りを目指している。昨秋の活躍でプロのスカウトが吉田をマークするようになり、スカウトが見に来た練習でアピールできたフェントンにも注目するようになった。
吉田が「プロ一本しか考えていない」と決意を示せば、フェントンも「高卒でプロに行きたい」と意欲を見せている。光泉出身のプロ野球選手はまだ出ていない。二人が同校初のプロ野球選手になれるかどうかに注目だ。
経験値のあるチームは1回戦、2回戦を突破して16強に進出。3回戦では3度の甲子園出場経験のある滋賀学園と対戦した。
先発した吉田は13安打を浴びながらも1失点に抑えたが、打線が滋賀学園の竹本徹(3年)の前に3安打と抑えられて完封負け。
「あの試合に勝っていたら成長できたと思っていたので、なんとか勝たせてあげたかったですけどね」と古澤監督にとっても悔やまれる敗戦。この敗戦でセンバツ出場の夢は断たれた。
数字が出てこそ練習方法が洗練されていく
バッティング練習をする光泉の選手たち
滋賀学園に完封されたのを機に古澤監督は冬の打撃練習を見直した。
「最後は数じゃないのかなと思い始めましたね。ヒット3本に抑えられましたが、振る力はないとは思わなかったんです。ちゃんと野球に近い形で打撃練習をやってあげないと、バッテイングは伸びないと思いました」
実戦的な練習を増やしたことでバットを振る量は半分から三分の一に減ったが、春先の練習試合では得点力が例年以上になったこともあり、手応えを感じているようだ。
そして投手陣には「MA-Q」の導入を決めた。「MA-Q」とは専用センサーを内蔵したボールを投げることで、ボールの回転数や回転軸、速度を計測できるミズノ社が開発したスマホアプリである。
本体が29,800円+税、充電器が15,000円+税と高価なため、購入を迷ったが、「今年は吉田もいるし、他にも楽しみなピッチャーもいるので、買うなら今年」と古澤監督は2月頭に取り入れることを決めた。「MA-Q」を導入した理由と効果について古澤監督はこう力説してくれた。
プロ注目の吉田力聖が手に持つのが導入したMA-Qである
「最近の子は数字に敏感ですし、ピッチャーの投げ方って主観的な部分ってあるじゃないですか。すごく綺麗な投げ方をしていたらそれでいいかといったらそうではないんです。数字で見せたら足りないところがわかるし、工夫して数字が伸びたら、これが正解だとわかるじゃないですか。
だから計る時は『何か材料を持って来いよ』と言っているんです。今週は先週よりここを改善したから回転数が上がった、回転軸の傾きがなくなった、球速が上がったとなったら持ってきた材料は正解だし、やってきたことは正解だったなと。数字が落ちてもやったことが間違いだったのではなく、次は別の努力をする方がいい。試行錯誤したことが数字に表れるのが一番最高じゃないですか。
数字で表せられるところは数字で表すべきだと思っています。勉強でも偏差値で自分の能力がわからないと、自分のやっている勉強が正しいかわからないし、テストの点数が上がらないと、モチベーションにも繋がらない。バッター陣にもスイングスピードやベースランニングのタイムを計っています」
前編はここまで。後編では実際にMA-Qをどうやって活用しているのか。さらにはTwitterやYoutubeの活用への考え方など最新テクノロジーへの考え方を紐解きます。後編もお楽しみに!
(文・馬場 遼)