Column

世界一浦和実業野球部が大好き!浦和実(埼玉)の頑張る!マネージャー

2019.04.10

 現在54人の部員が活動する浦和実業野球部。昨秋は準々決勝埼玉栄を破って4強に進出し、実力の高さを示した。今回は浦和実業を支える1名のマネージャーにお話を伺った。

誰よりも早起きして選手を温める!


ノックの補助をする石井 結衣菜マネージャー(浦和実業)

 お話を聞かせてくれたのは、新3年生の石井結衣菜さんだ。

 普段はジャグや補食作り、アイシング、ボール渡しなどを行っている。1人で部員を支える激務だが、イベントごとにお菓子を作ったり、夏大会前にはお手製のお守りも渡したりしているというから驚きだ。

 特に冬休みの練習期間には、毎朝一番早くグラウンドに到着し、部室のヒーターをつけて選手が少しでも温まれるように心がけていたという。寒い冬には早起きをすることさえ辛いが、誰よりも早く練習場へ向かう意識の高さに感服した。

 またマネージャー室には選手の選手への願いを書いた張り紙をして、選手を常に思いやっているという。

 「選手と一緒に戦う気持ちと選手への愛は絶対に負けません!!」と力強く言ってくれた石井さん。その言葉の通り、秋季大会では関東大会を目標に選手と一丸となって戦ってきた。少しでも選手のやる気が出るようにと、県大会の組み合わせが決まると、見やすい大きなトーナメント表を掲示した。

 「少しずつ目標に近づいていることが目に見えて分かり、とても嬉しかったです」と話してくれたが、石井さんの気遣い一つが部員のモチベーションを支えるきっかけとなっていることは間違いない。

 まさに完璧なマネージャー像の彼女がやりがいを感じるのは、笑顔で「ありがとう!」と言われた時。「一人でマネージャーをしているからこそ、どの時間もやりがいを感じています」と、常に前向きに頑張る姿勢はさすがだ。

 またマネージャー活動の中で一番楽しい時間は、練習試合や公式戦でスコアを書いている時だ。選手の活躍を一番近くで見ることができ、一緒に戦っていると実感できるスコアラーはマネージャーの醍醐味。「毎日の練習試合が楽しみ」と話してくれた。

 欠かせないマネージャーグッズは救急バック。万が一に備えて、絆創膏やテーピング、爪切りを入れて毎日持ち歩いている。緊急時の対応もマネージャーの重要な役割だ。

 心がけているのは、「選手に迷惑をかけない」こと。「1人でのマネージャー業務はどうしても選手に手伝ってもらう場面があり、練習を妨げてしまうのが申し訳ない」と話す彼女。

 「一人で仕事が出来るように、効率を頭の中で考えて行動するよう心がけている」としっかり答えてくれた。

 マネージャーあるあると言えば、選手の名前が漢字でフルネームで書けるようになることと、選手の後ろ姿で誰か分かるようになること。「坊主姿のエナメルバッグを持つ高校生を見ると、すぐどこの高校か知りたくなります」と高校球児愛が止まらない。

 また思わず選手に胸キュンしてしまう仕草は、夏の暑い練習時に汗を拭く姿や、話している時に優しく微笑まれたとき。中でも、「秋季大会で負けて泣いていた時に、1人の選手が慰めてくれたのは一番胸キュンしました。慰め方がかっこよくて男らしかったです!!」と話してくれた。

 その一人の選手がいったい誰なのか、気になって仕方ない。

 これまでの試合の中でも、10月6日に[stadium]埼玉県営大宮公園球場[/stadium]で行われた春日部共栄戦は忘れられない。

 関東大会出場を決める最後の試合だったが、両校得点につながる一打が出ず12回の延長戦にもつれ込んだ。最終的には春日部共栄の丸田選手に打たれ、惜しくも1対0で負けてしまった。悔しさで泣く部員もおり、中でもエースの三田選手は打たれた瞬間にマウンドにひざをつき泣いていた。

 「その時の光景は今でも頭の中によみがえってきます」と振り返ってくれた。しかし、「悔し涙を流したからこそ、春と夏にはもっと強くなれていると思う。辛い冬の練習を頑張る原動力になっているから、部員にとって良い試合だったと思います」と力強く答えてくれた。

 また、7月11日に[stadium]埼玉県営大宮公園球場[/stadium]で行われた夏の大会初戦、山村学園戦は鮮明に記憶に残っている。

 この対決が決まった時から、多くの人に注目され報道もされた。「エースの英さんがいるから絶対に負けることはない」と信じ応援していた最中、英真太郎選手の体調が悪化する緊急事態が起きた。しかし、手足がつっている状態でも処置を受けながら試合は続行。ベンチに戻る際に主将が肩を貸したり、会場全体が英選手を応援している状況を見て感動し、涙した。最後まで投げぬいた英選手を支えるチームメイト・応援する会場の温かさに感動した、とても印象的な試合だった。

 この春卒業した先輩たちは「元気をくれる存在であり、後輩思いの優しい人たちでした」と語る。

 「マネージャーの私にも下の名前で呼んでくれたり、いつも笑顔で話しかけたりしてくれる大好きな先輩。マネージャーも一人しかいなく、とても仲良くさせてもらいました」と尊敬してやまない。先輩というより友達としてたくさん話し、仕事をした、とても頼りがいのある先輩だったそうだ。

 支えあってきた先輩が卒業し一人になっても、懸命に部活を支える彼女の努力は並大抵ではない。

 日々練習に励むチームの選手に一言お願いすると、「毎日遅くまで練習お疲れ様です。マネージャーという立場で皆を支えなければいけないのに、私が一番支えてもらっています。皆の練習する姿や笑ってはしゃいでいる姿は私の元気の源です。毎日たくさんの笑顔をありがとう。引退までのあと少しの期間、皆の近くで、全力で応援させてください。皆なら必ず甲子園へ連れて行ってくれると信じています」と激励してくれた。

[page_break: ホームランボールをもらえるような存在になりたい!]

ホームランボールをもらえるような存在になりたい!


石井 結衣菜マネージャー(浦和実業)

 ここからは、石井さんにより詳しくお話を伺った。

 中学時代はバレーボール部だった彼女がマネージャーを志した理由は、「弟が野球をやっていて野球が好きになり、甲子園という大きな目標に向かって辛い練習を頑張る選手のために、少しでも力になりたい!支えたい!と思った」から。

 そんな秋元さんの目標を聞くと、「ホームランボールをもらえるようなマネージャーになりたい」と話してくれた。選手が一生忘れない瞬間であろう大切なホームランボールを、「マネージャーにあげたい!」と思われることほど嬉しいものはない。

 「すごく難しいことだと思いますが、自分なりに選手のことを一番に考えて愛して愛されるマネージャーになれるように頑張ります」と意気込む石井さん。ぜひ、思い出のホームランボールをプレゼントしてあげてほしい!

 活動を通して、「周りを見て行動できるようになり、メンタルも強くなった」と話す。「何か指示されてからしか動けなかったが、マネージャーになって自分で周りを見て動けるようになった」と自主性の大切さを学んだそうだ。

 マネージャーをする中で一番嬉しかったことを尋ねると、「練習試合や公式戦など一つの試合に勝つことはもちろん嬉しいですが、たくさんの方に応援され選手のことを褒めてもらえることが一番嬉しいです」と、石井さんらしい謙虚な回答だ。

 完璧な印象の石井さんだが、挫折しかけた経験もある。

 「自分は必要ないのではないかと思い、マネージャーを辞めようか迷った時期もありました」と。しかし、その度に選手の練習する姿、笑っている姿が頭に思い浮かび、「最後まで応援しようって思えた」という。「やっぱり選手の笑顔には負けます(笑)」

 選手愛が止まらない石井さんだが、選手にも愛されている。選手に誕生日をお祝いしてもらった経験はちょっとした自慢だ。

 2年の選手全員が昼休みに来て歌を歌ってくれ、欲しかったものをプレゼントしてもらったことがとても嬉しかった。「1年生の時はなくて誕生日も知られてないと思っていたので、とっても嬉しかったです」と話してくれた。初めて野球部に囲まれて写真を撮り、17年間生きてきた中で1番幸せな日になったという。「世界一浦和実業野球部が大好き!と改めて思った」と振り返ってくれた。

 また、当時の3年生の主将からもらった忘れられない言葉がある。山村学園に負けてしまった次の日、「ありがとう。最高のマネージャー」とLINEをもらったことは今も心に残っているそうだ。「マネージャーをやっていてよかったと感じ、嬉しかったです」と話してくれた。

 辛くてくじけそうになったら毎回この言葉を思い出し、自分を元気づけているという。

 「同期の選手達にもそう言ってもらえるよう、頑張ります」と本当に頼もしい。

 選手のために創意工夫し、全力で部活を支える石井さんの言葉はどれも心に響くものばかりだ。部員の活躍のため日々頑張る彼女を、ぜひ甲子園に連れて行ってほしい!

文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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