試合レポート

明豊vs札幌大谷

2019.03.29

継投が裏目に出た「神宮王者」、それでも晴れ晴れとした表情で甲子園を去る

 札幌大谷の先発マウンドに登ったのは、背番号18を背負った身長197センチの左腕・阿部剣友。試合前の会見で阿部の先発マウンドを明言した船尾監督は、同時にエースの西原健太の不調も明かした。
 「西原の登板は考えていない」と指揮官が語る中でマウンドに登った阿部だったが、この起用に見事に応える好投を見せる。

 球速こそ常時130キロ台前半であったが、197センチの身長から振り下ろすフォームは見るからに打ちづらそうで、1回戦で横浜投手陣を打ち崩した明豊打線を抑え込んでいく。
 強打の明豊打線を3回までヒット1本に抑え、難しい立ち上がりを難なく乗り切った。

 これは思った以上に明豊は手こずるかもしれない。そう感じた直後の4回裏、突如として試合は動いた。
 札幌大谷は、先頭バッターの表悠斗の出塁を許すと、ここまで好投を見せていた阿部をマウンドから降ろし、1回戦で好投した太田流星をリリーフに送ったのだ。

 この継投について船尾監督は「早い段階からの継投は決めていました。ランナーがでたらすぐに変えるつもりでした」と試合後に語り、予定通りの継投であったことを明かした。

 だが、結果的にこの継投は裏目に出ることになった。
 太田は、その後二塁に進塁を許して二死二塁とすると、4番・野邊優汰が右中間を真っ二つに破るタイムリースリーベースを浴び、先制点を許す。

 さらに5回裏、明豊の6番・山田昭太のツーベースから一死三塁のピンチを招いた札幌大谷は、8番・若杉にセンター前タイムリーを浴び、追加点を奪われる。
 点差が2点に開き、少しずつではあるが明豊に流れが傾きだす。

 札幌大谷は6回に1点を返して、その後も明豊の若杉を何とか打ち崩そうと攻め立てるが、以降は決定打が出ない。打てそうで打てない状況が続く中、試合は終盤へと入っていき、明豊は8回から、1回戦でも好投した大畑蓮をリリーフに投入する。

 札幌大谷は、この速球派の大畑に対しても、チャンスらしいチャンスを作ることが出来ず、試合はそのまま2対1で明豊が勝利して準々決勝進出を決めた。

 試合後、札幌大谷の船尾監督は、勝つには今日のような接戦しかなかったと振り返り、そんな試合展開の中で粘り強く戦った選手たちを称えた。
 「阿部は3回もいけるとは思っていませんでしたし、選手たちは粘り強く戦いました。負けたのは監督の責任なので、自信にして欲しいですね」

 また、夏に向けた課題を聞かれると「スイング力です。もっと打撃力をつけて、またここで戦えるようにしたいです」と話し、夏に向けた意気込みを力強く語った。

 今大会は2回戦敗退となったが、主戦となった太田を中心とした堅実な守備力は、「神宮王者」の名に恥じないものだった。さらに高いチーム力を身につけた「神宮王者」の野球を、夏の甲子園でも見せて欲しい。

(文=栗崎祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.29

【宮崎】延岡学園と日章学園がともにタイブレークを制して4強入り<県選手権大会>

2024.05.29

【佐賀】龍谷が佐賀商を破って優勝<NHK杯>

2024.05.29

パ・リーグ守護神成績一覧 際立つ則本の安定感!

2024.05.29

【2024年春季地区大会最新状況】北海道は北海が4季連続Vを達成、6月1日は近畿が準決勝、北信越&中国が開幕

2024.05.29

”魔曲”も登場! 9連勝千葉ロッテを支える今季の新戦力

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!