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制球力、スピード、変化球、メンタル。すべてがグレートだった河野佳(広陵)!

2019.03.27

 第91回選抜高等学校大会4日目の注目は八戸学院光星vs広陵の一戦を制したのは広島広陵だった。勝利の立役者となったのは3安打完封の河野佳。完封に至るまで紆余曲折があった1年間を振り返る。

7割~8割のストレートでゲームメイクした

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八戸学院光星打線を0に抑えた河野佳(広陵)写真:共同通信

 高校生投手で、速球、変化球の種類の豊富さ、精度、制球力が優れた投手はなかなかいない。しかし河野はすべて優れた投手だ。最速150キロのストレートに加え、縦横のスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットはいずれも一級品。しかし順調に成長したわけではない。河野は一度は投手を首といわれながらもここまで這い上がった。

 1年生までの河野は135キロ前後ながら、多彩な球種を投げられたが、ストレートが走らず、コントロールも悪く、高校1年冬から2年春まで2回も投手も首になった。それでも河野は中井監督に泣きながら投手に戻りたいと懇願していた。投手として活躍するために、中井監督にストレートの大事さを説かれ、球種をストレート、スライダーに限定し、投球フォームでは軸足の使い方を見直し、夏では145キロまで球速アップ。秋では低めの制球力にこだわり、練習に取り組んで、エースとして活躍した。

 冬場は6割~7割程度でも質の良いストレートを投げる取り組みを行い、準備してきた。立ち上がり、1番・伊藤大将に対して、自己最速の150キロのストレートで空振り三振に打ち取った。自己最速を狙っていた河野は「嬉しかったですし、うまく力が抜けました」と手応えを話す。
 先頭打者にだけ全力投球にしたのは、ライバル視している奥川恭伸から影響されたもの。奥川も履正社戦で先頭打者に151キロを計測した。フルの力を出して、チームに良い影響を与えたかったのだ。

 その後は7割~8割のストレートで勝負。無駄な力みがないので、キレは素晴らしく、常時135キロ~140キロ前半のストレートを内外角に投げ分け、本人がこだわる高めのつり球で三振に奪うなど、強打の八戸学院光星相手にも圧倒した。

[page_break:最後まで頭脳は冷静だった]

最後まで頭脳は冷静だった

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ピッチング練習をする河野佳(広陵)

 また100キロ台のカーブ、120キロ台の縦横のスライダー、120キロ後半のスプリットに加え、さらに左打者の外側に逃げる120キロ台のチェンジアップも操り、ストレート以外の変化球の精度も高さも光った。捕手の鉤流 大遂の相手の状況を読んだリードも光っていた。

 「初球から打ってくると思いましたが、甘いボールを見逃してきたので、カウントを優先して配球しました。また3巡目から配球を変えるようにしました。
 具体的に説明すると、前半はストレートで押していきましたが、後半は速度が落ちてきましたのでコースにしっかり投げることを大事にしました。あとは変化球も少し増やしていきました」

 勝負の場面となったのは、8回裏、二死二、三塁の場面で、最もマークしていた3番武岡 龍世に打席が回った。ここで正捕手・鉤流は「まずは内角が苦手という印象を持っていました。それとバットが振れていない印象がありました。実際に今日の2打席目は内角でサードフライでしたので、最後は内角にしようと決めていました。なので、そこまでの過程を考えようと思って、打席の中の雰囲気を見ながら配球しました。」

 2ストライク1ボールと追い込んで、最後は内角へ141キロのストレートで遊飛に打ち取り、キーマンを抑えこんだ。そして9回のピンチになっても崩れることなく、河野は3安打完封勝利。中国大会準決勝(創志学園戦)以来の完封劇となった。河野は「素直に嬉しいです」と笑みを見せた。

 センバツの舞台で強打の八戸学院光星を完封できたのは、打者を抑えるにはどういう配球をすればいいか、1試合通してどういうピッチングをすればいいか、考え方の軸が出来上がったことが完封劇へとつながった。それはリードする鉤流も相手を分析した冷静なリードも見事だった

 昨秋までストレートのスピードにこだわり、「スピードガンにこだわりすぎや」と中井監督に叱責されていた河野は、今や貫禄あるエースに成長している。次の試合でも「完封したいです」ときっぱり言い切った河野。

 次の相手は名門・東邦。またも熱いピッチングを繰り広げるに違いない。

取材=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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