府立勢唯一の大阪ベスト8!躍進の鍵は野球を楽しむこと! 府立港【前編】
昨秋の大阪府大会ベスト8の顔ぶれを見ると、優勝した履正社や超名門・大阪桐蔭をはじめ、強豪私学が多く名を連ねた。その中に公立校が1校食い込んだ。その学校こそが今回紹介する府立港である。
昨夏は北大阪大会で3回戦止まりだったチームが、秋にはベスト8入り。大躍進とも言える活躍を見せた彼らの取り組みとは。その秘密を知るために取材に向かった。
まずは野球を楽しめ!
ロングティーで打力強化中
「練習からちょっと気持ちが折れやすい、負けるところがあったのですが、選手たちに1番求めたのは、野球を楽しんでほしいということです。」
新チームを作る際のテーマを語ったのは、昨年の4月から府立港で指揮を執る西原佑騎監督である。
西原監督は高校時代、府立港でプレー。その後は大学に進学後、母校に戻りコーチとして選手を指導し、現在に至る。
夏は3回戦で大阪学院大高に5対0で敗れた府立港。新チームを結成した時の手ごたえを聞くと、
「センターラインがしっかりしていたので、試合が崩れることがほとんどない。終盤の集中力と、『しっかりやれば勝てる』と選手に思わせればいけると思っていました。」
部員17名でスタートした新チーム。西原監督は自信を持っていたが、選手たちが抱いていた印象は全く逆のものだった。
チームをまとめる清久剛主将は、「いい加減な選手が多いので、まとめられるのか不安でした」と当時の心境を語る。さらに2年生の長安直希投手は「始まった当初は声も出ない、野球する以前の問題でした」と話す。
公立勢唯一の秋ベスト8の府立港の船出は不安そのものだった。ではどうして勝ち進むことができたのか。その答えを長安投手はこう語る。
「監督中心に意識付けをしてくれたので、この結果が出せたのだと思います」。
西原監督が意識付けしたものとは。その答えは冒頭に出てきた、「野球を楽しむ」ということだった。
[page_break:選手をほめて、失敗を反省させることで成長を促す]選手をほめて、失敗を反省させることで成長を促す
ミーティングをする府立港の選手たち
清久主将も「西原監督は何よりも『野球を楽しめ!』とよく口にしているので、チームの中で楽しめる雰囲気ができている」と語る。
では西原監督はどうして野球を楽しむことを大事にしているのか、本人に聞いてみると、
「高校野球で野球をやめる子もいますが、(大学など)上でみんなができるように野球を楽しめるようにしたい」と理由を語り、続けてこう話した。
「選手時代は人数が多く80名ほどいました。そうするとやはり試合に出られない選手もいて、結果も出なくて練習に対してやる気がない選手もいました。
そういう自分の経験から、ただしんどい、やらされているという感覚にはならないようにしています。全員が野球をやっている、という感覚にしたいというのが願いです。」
全員が野球をやっている、という感覚を持たせたいという西原監督。だから、府立港では実戦形式の練習でヒットを打ったら、ガッツポーズなど喜びを表現してもOK。西原監督も選手のことをほめて、モチベーションを上げている。そうやって選手の中で自信を深めている。
また、あるプレーで失敗をしても西原監督が叱ることはない。選手と話すのは、何で失敗したのか考えて、次はどうした方がいいのか、つまり改善策である。
「選手が持っているものが10あるのに、僕が7,8にしたらもったいない。10出してダメだった時に選手は成長します。ただ7,8で失敗したらずっと同じ失敗をするので。怒ることが悪いわけではないですが、大事なのは失敗を反省させることです。」
「怒るのは挨拶とか、時間を守るとか、当たり前なことを守れない時で、怒ることの方が多いです(笑)」と西原監督は話すが、野球を楽しむことを大事にするようになったのは監督になってから。それよりも前、コーチ時代から選手たちに訴え続けたことがあった。それは「準備」だった。
前編はここまで。後編では西原監督が語る「準備」について。そして春先への意気込みなどを伺いました。後編もお楽しみに!
(文・編集部)