確かな「準備」と楽しむ心を忘れずに更なるステップアップを! 府立港(大阪)【後編】
昨秋の大阪大会で府立勢唯一のベスト8に進出した府立港。前編では新チーム発足時の様子からどのような取り組みをしてきたのか、監督や選手から話を伺った。後編では秋季大会を振り返ってもらいながら、春への意気込みを伺った。
府立勢唯一の大阪ベスト8!躍進の鍵は野球を楽しむこと! 府立港野球部訪問【前編】
「準備」することが全ての土台
ノックを受ける選手たち
準備の大切さをコーチ時代から訴えてきた西原佑騎監督。
「なんも考え無しにグランドにきてボールを捕ったり投げたりすることは、試合にはないです。」という西原監督の話はもっともだが、続けてこう説明した。
「(試合では)何かを考えるので、練習の時とか、終わってから次の日の準備とか、予定をしっかり立てるようにさせています。そこに対して取り組んで失敗したら考え直せばいいですけど、考えていなかったら考えるところから始めるので、そこはしっかりやろうと言っています。」
だから府立港ではある取り組みをしている。それはホワイトボードに1週間分の練習メニューを記載するというものだ。
「先のことがわかれば自分で準備できますし、計画的に自主練もできます。あとから遅れを取り返すのは大変ですが、これをすることである程度見通しを立てて練習をやることができるんです。」
今の選手たちは準備をすることができるようになってきたが、府立港にとってこれは土台だと西原監督は話す。
土台として築き上げた「準備」すること。そして監督就任後に新たに増やした「楽しむ」こと。この2つを武器に戦った秋の大会を西原監督に振り返ってもらうと、「正直どの試合も見たことのない展開でしたね。こんなことができるのか!という感じでした」と話す。
中でもターニングポイントだと語るのは、初戦の関西創価戦だった。
「楽しむことと、1つのプレーに対して準備をすることをずっと伝えてきましたが、さらにあの試合は集中することがしっかりできていました。」
ピンチは再三あったが、いいプレーもあり無失点。攻撃は相手投手の速球をなかなか打てなかった。だが最終回に初めてチャンスが来て、犠牲フライでサヨナラ勝ち。「最後まで集中力が切れず、チームとして最後まで全員で戦えた試合はあれが初めてだったかもしれない」と西原監督は振り返る。
1年生の前薗渉投手も「この試合の勝利を境に全員で戦えるようになり、チームが変わった」と感じていた。
チャレンジャー精神でこれからも楽しむ
笑顔で練習を見つめる西原佑騎監督
また5回戦で対戦した八尾戦もターニングポイントだという声が選手から上がった。
「大量得点できたのは1人1人が役割をしっかり果たすことができたからだと思います。」とチーム一のムードメーカー・村上晴次郎選手が語るように、8回まで5点差あったのを、一挙6得点でひっくり返してベスト8に進出している。
「(最終的に)試合をひっくり返しましたし。どんだけ打つねん!って感じでしたよ(笑)」と西原監督が話すほど、選手たちは一致団結でベスト8の枠に入り込んだ。
そんな実りある大会を通じて西原監督は、「毎試合、選手がこんな顔して野球を楽しむのか、という感じでした。一瞬一瞬でこんな顔するのかと。だから、その顔を引き出してあげたいです。
また、自信がつきましたが、最後はガツンと負けているので、もっとやる必要性を感じています。ただ大会でしっかり私学に勝てたことで、『自分たちもできる』って自信を付けられて、選手たちが楽しく能動的に練習ができるようになっているかもしれないです。」
「できない」「野球の練習が面白くない」と感じると、上手くならないし雰囲気も悪くなる。そう思わせないようにしていた時に、大会で私学に勝てた。この勝利で、選手の中でできる感覚が芽生えたことで野球を楽しめている、と西原監督はチームの雰囲気を分析した。
春に向けてオフシーズンを過ごす府立港。「8強ですが、チームは未完成。追い込んでパワーアップして、秋と違う姿でさらに上に行きたいです」と長安直希投手。
そして前薗投手は、「8強に行けたのは自信にしたいですが、挑戦者の気持ちで。プレッシャーはありますが、そこで勝てないと意味ないので、1つ1つできることをやれればと思います」と、選手たちは秋以上の結果を求める。
春にさらなる飛躍を目指す!
「秋が終わってからのミーティングでは夏優勝だと、選手は言いました。そのためにも春はステップアップしてさらに1つ2つ上がる必要があります」と、さらなる成長の必要性を西原監督は語る。だがその後に、「港かぁと他校から思っていただけると思うので、そこでしっかり準備して集中して、野球を楽しむ。周りの目を見てプレッシャーを感じて野球を楽しめなくなってしまわないことが一番のポイントだと思います。
あと頑張ったことをほめるのはもちろんですが、前にできたことができなくなるのは一番ダメなので、勝っても負けても野球を楽しみ切れるようにしたいです。」
自分たちらしさを見失わずに戦うことをポイントに挙げた西原監督。1つのプレーで試合の流れが変わることはよくある。だが、そこで動揺することなく平常心でいられることが、試合では必要だ。
そんな西原監督のことを選手たちに聞くと、清久剛主将は、「メリハリある、いい監督です」と話す。
ムードメーカー・村上選手は、「一番自分たちのことをわかってくれている監督だと思います」とコメントしてくれた。西原監督と選手の関わり方を見ていると、監督というよりも兄のような印象を受けた。
今回の取材、監督と選手たちが練習に対して本当に楽しく取り組んでいる姿に、心を打たれた。府立港が常に1つのプレーに対して準備し、野球を全力で楽しむことができれば、激戦区大阪でも上位進出することは十分可能である。
(文・編集部)