「完膚なきまでの敗北」から見せた異国の地での成長 秋山恭平(筑後サザンホークス)
中学野球のトップレベルの選手が集まるU-15侍JAPAN。「WBSC U-15 ワールドカップ」では惜しくも4位という結果にだったが、中学野球のトップチームに相応しいプレーを各選手が披露した。
その中で3試合で先発を任され、大きなインパクトを残したのが筑後サザンホークスの秋山恭平投手だ。キレのある直球と変化球を武器に、「WBSC U-15 ワールドカップ」では先発の柱として活躍し、南アフリカ戦では3イニングで10奪三振を奪う珍記録を打ち立てた。
今回は、そんな秋山投手にインタビューを行い、U-15ワールドカップで得たものや課題、そして高校野球への意気込みを伺った。
キューバ戦から学んだ「低め」への厳しい攻め
秋山恭平(筑後サザンホークス)
屈強な体格の選手が揃うU-15日本代表選手の中で、秋山は身長165センチ、体重56キと体格にそれほど恵まれているわけではなかった。投手陣の中でも最速が140キロに達する投手が軒並み揃う中で、秋山投手の最速は133キロとこれまたインパクトのある数字ではない。
それでも秋山投手は、「WBSC U-15 ワールドカップ」に向けた強化合宿の時から大きな存在感を放っていた。なぜなら秋山投手には、体格や球威を補って余りあるほどの「キレ」と「コントロール」という武器があるからだ。
「自分の一番の持ち味は、球のキレとコントロールです。球種は、真っ直ぐ、スライダー、カーブ、チェンジアップを投げていて、一番自信があるのはチェンジアップですね」
秋山投手は「WBSC U-15 ワールドカップ」では3試合で先発を任され、南アフリカ戦では「3イニング10奪三振」という珍記録も残したが、この大会で猛威を奮ったのもチェンジアップだった。
「南アフリカは初球からはあまり振ってこなかったので、初球からストライクで勝負することが出来ました。三振はあまり意識してませんでしたが、結果的に変化球で三振もたくさん取れたので、そこは良かったです」
華々しい投球を見せた秋山投手だったが、実は秋山投手にとって南アフリカ戦はリターンマッチと言える試合であった。南アフリカ戦での快投の二日前、秋山投手はキューバ戦の先発を任された。満を持して登ったマウンドだったが、初回から甘い球を痛打され続け、2回途中6失点で降板。
「次こそ結果を残さないといけない」という、背水の陣で臨んだ中での快投だった。
「海外の選手とは、パワーやスイングスピードの部分で力の差を感じました。高めが強くて甘いコースに行ったら打たれるので、低め中心に厳しく攻めないといけないと感じました。抑えることが出来て良かったです」
[page_break:U18日本代表として、もう一度海外の選手と対戦したい]U18日本代表として、もう一度海外の選手と対戦したい
U-15強化合宿時の秋山恭平(筑後サザンホークス)
そんな秋山投手は、今春からは広島県内の強豪校へと進学予定で、高校野球の舞台と踏み出していく。当然ながら目標は甲子園であり、現在は高校野球に向けてトレーニングを積んでいる。
「今の課題は、左バッターへのインコースです。キャッチャーがインコースに構えても、真ん中に入ってしまうことがあるので、強く向かっていく気持ちを持って、しっかり投げ込めたらいいなと思っています」
また秋山投手は、プロ野球や高校野球からも多くの学びを得ていると話す。特に高校野球は、すぐ目の前に迫っている近しい存在であるだけに、具体的なイメージを持って練習にも取り組んでいる。
「昨年の大阪桐蔭みたいな打線と対戦することになったら、気を抜く暇がないですね。1番から9番まで強力な打線だと思うので、全員抑える気持ちでいきたいです。
U-15日本代表のメンバーにも大阪桐蔭に行く選手がいますが、もし対戦する機会があったら1打席くらいは真っ直ぐ勝負で戦ってみたいですね。」
高校入学までおよそ1カ月半、憧れは大きく膨らむ一方だ。そんな秋山投手に、最後に高校野球、そして将来の意気込みを語っていただいた。
「まずは1年生から試合に出て、3年生の力になりたいです。その後も、甲子園を目指してチームを引っ張れるようなピッチャーになりたいですね。
また、U18日本代表に選ばれて、もう一度海外の選手と対戦して、プロ野球選手になって日本を代表するピッチャーになりたいと思います。」
普通の中学生ならとても口にはできないような大きな目標を、秋山投手は冷静で落ち着いた口調で言い切った。その一点の曇りもない自信に、期待せずにはいられない。
文=栗崎 祐太朗