ミスを事前に刈り取れる人間力 我喜屋優監督(興南)vol.5
我喜屋監督の思考に迫る連載コラム、最終回。「大人の野球」そして、今の興南の現在地とは。
今までの連載記事
第1回:自分自身の基準を持つ「人間力」
第2回:「根っこ」を育てるには
第3回:人間力は掛け算
第4回:実戦、人間力の作り方
ミスを事前に刈り取れる
我喜屋 優監督(興南)
「人間力」が付き「根っこ」が育つと、多くの気づきが出てくる。一般には「洞察力がある」であったり、「野球の感性が鋭い」などの表現をされるが、これらの言葉も「人間力」で表される。
我喜屋 優(がきや・まさる)監督(興南)は、「人間力」がつくと、
「お前に任せたとか、足が早いぞとか、前守れとか、風があるぞとか、そういう細かい注意も出来るんですよ」と話してくれた。
また、細かい注意を伝える大切さも語ってくれた。
「伝えることでピッチャーが助かる。チーム内でも気がつけば、「あっそうかそうか!スライダーが多いな、じゃあ俺スライダー狙ってくるわ」とかね。戦力もアップするし、野球を通して人間力もアップする。それが将来まで自分の仕事に活きてくる。野球だけの声じゃなくてね、それが仕事にも活かされるんですよ、語彙力が高まれば、コミュニケーション能力も高まるし、あるいは相手のことを気になるような、あるいは尊重するようなことも、全部言葉だからね」
伝えるという「計画」があれば、どうしたら伝えやすいのかをPDCAで改善していくことが出来る。声の大きさや、はっきりした指示、わかりやすい説明など改良することで、ミスを事前に防げるチームになる。
我喜屋監督は今のチームについて
「ただ毎日毎日『もっと大きな声出せ』『はっきりだせ』『もっとお前の指示があれば助かったのに』とか、いうのはまだ今教えている段階」
と話してくれた。
今は選手たちの人間力を育てる「基準」を伝えている。「基準」を教えた先に、我喜屋監督が見ているのは、もちろん選手たちが自分たちで考えプレーする姿だ。
[page_break:基準を自分で作って改善できることが大人の野球!]基準を自分で作って改善できることが大人の野球!
興南高校グラウンド
もう一度、始めの言葉に戻ってみたい。
「優勝するチームがどういうチームかというと大人野球なんですよね。大人の野球に普段から取り組めばいい」
大人の野球とは、根っこが育ち、自分自身で基準が考えられる「人間力」そして、その上で行われるPDCAである。
「4つ(計画・実行力・自分のやっていることのチェック、省みること、よし明日はこれで行こう)揃っているなら、『自分でやってごらん』に変わるわけです。自分でやってみな・自分でできるというのが甲子園には必要なんですね」
そう、優勝するチームに必要なのは、この大人の野球である。
「[stadium]甲子園[/stadium]まで行って操っていたら遅いんです。操るんだったら、ここで(グランドで)タイムかけて、こうやれ、ああやれと、よし出来た!OKと、答え合わせもしながらやらないと」
我喜屋監督が見ているのは、[stadium]甲子園[/stadium]で自分達で考えてプレーする選手たちだ。
[page_break:興南の現在地]興南の現在地
興南のエース・宮城大弥
「大人の野球」を目指している興南の現在地を我喜屋監督に聞いてみた。
「宮城大弥君を中心に例年よりも[stadium]甲子園[/stadium]経験者が多いですね。そういった実践経験、大きな試合を経験した選手が多いですよね。やはり心強いです。高校野球は経験がものをいう。
春夏連覇した時も、1年から試合を経験している子が多かった。負けたとしても、相手は3年生だから仕方ないよと。でも、全国の力を見て育ってきている訳ですから。彼らも負けから学ぶとすれば、やっぱり[stadium]甲子園[/stadium]では間一髪アウト・セーフの緊張感があるなぁとか。事前に準備をしないとけねないなぁと、事前に考えないといけないなぁと、いうことの大切さを学んだと思うんですよ。
今年の春は変な負け方をしたけども、やっぱり、あれだってセカンドでタッチアウトしておけばとか、ファースト、カバーリングしとけばよかったとか、思ったということが多い試合だったので、『思ったじゃダメなんだよ』と。貴重な体験をしたんだと、これを夏までに修正して活かせば、全国的なチームに近づいているチームであるなぁと今感じています」
「ここで全てOKというわけではなく、課題のある、この課題は、また取り組んで、達成する。もっと大きくなると、いうようなチームであると思います」
「彼らへの期待、周りの期待も大きいし、ただ他人の期待に惑わされるなよと、自分たちのやるべき期待を全うするんだよと伝えています。どうしても興南は追われる立場だから、興南を倒したら甲子園にいけるという相手の目標でもあるしね」
大人の野球が出来る道筋は見えている。周りでなく自分自身の基準をもち、歩み続けるだけだ。もちろん、そこに到達するまで興南は歩みを止めるつもりはない。
文=田中 実