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センバツ注目度ナンバーワン・星稜(石川)「現状の実力を再認識した秋季大会」【前編】

2019.01.27

 3月23日に開幕する第91回選抜高等学校大会。出場校が決まると、数多くの優勝候補が上がるが、その中で注目度ナンバーワンといっていいのが星稜(石川)だろう。2年連続の13回目の出場を果たし、過去最高のベスト8(1995年、2018年)を超え、優勝を期待される星稜の歩みを追った。

結束を深めた北信越大会決勝戦

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星稜の絶対的エース・奥川 恭伸

 どのチームにも全国制覇を狙える旬・雰囲気というものがある。2019年でいえば石川の名門・星稜だろう。国民的英雄・松井秀喜氏を筆頭に野球界で活躍する数多くの選手を輩出してきたが、今、それが目指せるチームになっているのだ。
 何せドラフト1位候補として取り上げられる絶対的なエース・奥川恭伸、強肩捕手・山瀬 慎之助、1年生ながら走攻守三拍子そろったショートストップ・内山 壮真を筆頭に攻守の力量が高い選手が多く、その期待感の高さは金沢に足を踏み入れると、大きく伝わってくる。

 しかし能力が高い選手が揃っていても勝てるわけではない。ただ能力が高ければ、成熟していないチームが多い秋季大会ならば、一歩先にいけるのは事実。スコアを振り返れば、大差で勝ち上がる試合が多かった。

 星稜の主将・山瀬は「奥川がU18でいない期間はまとまらず、苦しい期間でした。それでも勝てたのは元々このチームが甲子園に出ているメンバーが多かったので、能力などスタートラインが元々高かったからだと思います」と分析する。
 選手たちは大会に勝つことで自信につながる。チームは大会を勝ち進むごとに少しずつまとまっていった。林和成監督も「スタート直後、なかなかうまくいかないのは想定内でした。公式戦を戦っていくごとに、まとまりや個々の力がコンスタントに出てくるようになりました。そこにはちょっと時間がかかりましたけど、県大会から北信越と、日数を重ねるごと、試合を重ねるごとに良くなっていったと思います」と振り返る。

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啓新戦 クロスプレーはアウト

 今年のチームの課題は絶対的なエース・奥川に頼らないチームにできるか。多くの選手たちが反省したと振り返るのが北信越大会決勝戦の啓新戦だ。奥川が先発したこの試合。7回終わって2対0とリードしていたが、8回表に2点を取られ、同点に追いつかれ、そのまま15回まで決着がつかず、引き分けとなった。野手陣は反省の弁を残している。
 「チームとしても個人としても、反省することが多かったと思います」(1年・内山壮真
 「決勝の啓新との戦いで勝ちきれなかったので、チームとしてはまだまだだと思いました。」(1年・知田 爽汰
 「打撃陣に関しては、簡単に終わってしまう打席が多かったり、フライアウトが多かったので、工夫が無かったと思います。」(2年・東海林 航介
 このままではいけないと選手たちは話し合い、結束を固め、翌日の試合では奥川は登板せず、12安打7得点を挙げ北信越大会優勝を果たした。

[page_break:ベストゲームができた広陵戦 準備不足を痛感した札幌大谷戦]

ベストゲームができた広陵戦 準備不足を痛感した札幌大谷戦

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明治神宮大会で星稜は準優勝

 11月。神宮大会の初戦の相手は中国地区代表との対戦が決まっていたということもあり、林監督は中国大会を視察。そこで優勝した広島広陵をターゲットに絞った。

 かなり厳しい戦いになると警戒していた広陵戦ではコールド勝ちしたが、広島広陵の強さを実感していた。エースの奥川は「速球、変化球に対しても体が突っ込まずにボールを見て、振り切ることができていて怖さを感じた」といえば、野手たちも口をそろえて今まで一番強かった相手だったと語る。勝利したものの、林監督はチーム力については広島広陵の方が上とみていた。

 「もっと対策を練られたらあんなに上手くはいかないと思いますし、私たちとしては秋の大会のベストゲームがただ“できた”というだけで、広島広陵さんはわずか一週間前に中国大会を勝ち上がって、中一週間も無い中でのコンディショニングだったので、そこの差はあったのかなと思います。準備期間がウチは長かったのが勝てた要因かなと考えています。実力は広島広陵さんの方が上だと思います」

 とはいえベストゲームができたことは選手たちにとって自信となった。この勢いのまま準決勝も勝ち上がり、決勝では札幌大谷と対戦。試合は途中まで1対0でリードしていたものの、7回裏に逆転を許し、優勝を逃した。

 山瀬主将は「札幌大谷さんは絶対かなわない相手だったか?というと、そうではないかと思います。そういう相手に対して1回負けたら終わりという世界で勝ちを逃したというのは、まだまだ自分たちの力不足を感じましたし、拮抗したり負けたりしている時に逆転するような雰囲気づくり…、負けた原因として試合の中だけじゃないことがあったので、そういうところを詰めていかないといけなかったです。」

 試合に対しての準備不足を嘆いた。林監督は「ピッチャーや主力のバッティングに能力の高さを感じましたが、個々の能力以上にチームのまとまり感があって、不思議な、負けないチームだなというのは感じました。負けていてもこっちが押されている感覚がありましたし、しぶとさもありましたね。ウチもそうですけど、中学校時代(札幌大谷シニア)からの仲間が多いというのがしぶとさにつながっているのかなと思いました。」

 この敗戦を受け、林監督は「このままでは全国に進んでも1,2回戦で負けるよ」と選手たちに危機感を植え付けている。

 さて、星稜はさらなる高みへどんなチーム作りをしているのかは後編で迫っていきたい。

 センバツ注目度NO.1!全国制覇へ向けての3つの課題 星稜(石川)【後編】へ続く

(文・河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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