試合レポート

米子東vs市立呉

2018.11.03

ベンチ入り16人の米子東の快進撃はまだ止まらない!タイブレークを制し、23年ぶりの決勝へ!

米子東vs市立呉 | 高校野球ドットコム
エースの森下(米子東)

 ここまで開星倉敷商と強豪を破り、準決勝まで勝ち進めた米子東。そして堅実な野球で勝ち進めてきた市立呉との一戦。

 両エースともに技巧派。市立呉の先発・沼田 仁は、右スリークォーター。常時125キロ~128キロのストレート、115キロ前後のスライダーのコンビネーションで抑える投手。初回、立ち上がりから二者連続三振を奪うなど上々の立ち上がり。スライダーが低めに集まると、術中にはまりそうな技巧派である。

 一方、米子東の先発・森下 祐樹(2年)は右腕のグラブを高く掲げてから真っ向から振り下ろす姿は松井裕樹桐光学園-楽天)を模倣したような投球フォーム。常時125キロ~120キロ後半(最速134キロ)の速球、120キロ前後のカットボール、110キロ以下のカーブを織り交ぜながらピッチングを組み立てる。立ち上がり、制球に苦しむもなんとか無失点に抑える。森下によると、現在のピッチングフォームになったのは、中学2年生から。投げやすいフォームを模索したところ、自然と今の投球フォームにつながったようだ。テークバックを大きく取っているが、着地時にしっかりと左ひじが上がったフォームで、肩、肘への負担は少ない。なぜここまで1人投げてもピッチングのクオリティが落ちない理由が理解できた。ただ球速が上がって出力が上がると、故障のリスクが上がりやすいタイプ。このチーム、ベンチ入り16人ながら投手は森下含めて5人いるという。秋の大会以降、森下をリリーフスタートできる布陣にしておきたいところだ。

 先制したのは市立呉。9番角井 夢海(2年)の中前安打、1番塩田 開都(2年)の右前安打で一死一、三塁から併殺崩れの間に1点を先制する。

 4回表、米子東は反撃に転じる。米子東打線は沼田仁が投じるスライダー攻略のため、1週間前から練習でスライダー攻略のための練習を繰りかえした。本番を迎え、選手たちは第1打席で沼田仁のスライダーの軌道を見極め、第2打席からアジャストする方針をとった。

 一死から2番山内 陽太郎(2年)が左中間を破る二塁打を放つ。山内はスライダー攻略のために、打席の前方に立って曲がりはじめをとらえるイメージで打席に立っていた。
「本当は第1打席で攻略しないといけないんですけど、それでもスライダーの軌道をイメージできていたので、打てて良かったです」とチャンスメイクの場面を振り返った。

 二死二塁から4番福島 悠高(2年)がスライダーを拾って左中間を破る二塁打。拾った当たりだけのように見えたが、そこは185センチ95キロと恵まれた体格をしており、リストの強さを生かして外野の間を破った。さらに米子東の追撃続く、5回表は主将・福島 康太(2年)の二塁打を皮切りに二死三塁から9番本多翔(2年)の左前適時打で2点目を入れると、6回表には1番岡本 大翔(1年)が高めに入ったスライダーを逃さず、レフトの頭を破る二塁打へ。


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同点に追いつく市立呉

 さらに、再び二死三塁から4番福島悠が二塁強襲安打とコーナーワークがうまい沼田に対し、しっかりと狙い球を絞り、甘い球を逃さないスタイルで着々と突き放した。福島悠は高校通算12本塁打のスラッガー。入学当時、85キロだったが、練習量の多さに苦しみ、80キロまで落ちたが、そこからトレーニング、1食500グラム~550グラムは食べることをノルマに掲げ、95キロまで増量した。打撃を見ていても、フルスイングだけではなく、スライダーを拾って安打にできるリストワークのうまさがある。福島は「1週間前からスライダーを打つ練習を繰り返し、スライダーを打つイメージができたからこそ、拾うことができたと思います」と語ったが、長打力と巧さを持った選手で好感が持てる。

 しかし7回裏、5番沼田仁の犠飛で1点を返し、さらに9回裏、市立呉は二死一、二塁から6番梅田 利功(2年)の中前適時打で同点に追いつき、試合は延長戦へ。

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6点目を入れる米子東

 タイブレークとなった延長13回表、一死二、三塁から2番山内の遊ゴロで1点を勝ち越し、さらに3番森下が右翼線を破る二塁打で5点目。そして4番福島悠は痛烈な中前適時打で6点目。この6点目が大きかった。13回裏、市立呉の反撃にあい、1点差に迫られたが、最後はエース・森下が踏ん張り、米子東が決勝進出。選抜出場へ大きく前進した。

 米子東の紙本監督は「生徒のみんながしっかりとがんばってくれました。試合を振り返ればスライダーをしっかりと攻略できたのが大きかったと思います」と選手たちを労った。また、米子東は中国大会に入って、すべて先制点を許しながら、その後、逆転勝利を収めており、それが彼らの試合パターンとなっている。

 だから先制されても慌てることはなかった。主将の福島康はこういう。
「この試合も先制を許しましたが、自分たちのペースと思って試合運びができました」
だが、途中追いつかれ、サヨナラ負けの危機があった。それでもサヨナラにさせなかったエース・森下について「森下が9回、13回と精神力の強さを発揮して、点を与えなかったことが大きいと思います」とエースの森下を称えた。
そして森下は「今まで投げてきた試合の中でも一番達成感がある試合です。ここ最近は学校のみんなが声をかけてくれて、とてもありがたい気持ちでしたので、なんとか決勝進出ができてほっとした心境です」と喜びをにじませていた。また先制のきっかけを作った山内も「最初はまさかここまでこれると思っていませんでした。ずっと基礎練習をやってきて、それで勝ち進む中で、力をつけてきたと思います」とここまでの快進撃に驚きを隠せない様子だった。

 米子東は平成7年以来となる決勝進出。その時は準優勝に終わっている。昭和39年以来となる優勝を目指し、広島広陵に挑戦する。

(文・写真=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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