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現状を把握するための体力測定

2018.11.15

現状を把握するための体力測定 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 秋の公式戦もおわり、本格的なオフシーズンが近づいてきました。これから来年のシーズンに向けて体づくりのためのトレーニングを行うところも増えてくるでしょう。さて今回はオフシーズンを前に自分の体を知るための形態・体力測定についてお話をしたいと思います。

年間活動計画を確認してみよう

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形態や体力測定を行うことはオフシーズンを過ごす前にも必要不可欠なもの。

 高校野球の年間活動計画を確認してみましょう。春のシーズン(公式戦・練習試合)、夏の公式戦、新チームになってから秋のシーズン(公式戦・練習試合)、そしてオフシーズンと大まかな流れがあります。またこの他にも遠征や合宿、地域での大会、学校のテスト期間などチームによってスケジュールは変わってきます。測定のタイミングとしては、夏の公式戦が終わって新チームになったところ(7〜8月)、オフシーズンに入る直前(11月末)、シーズン前(2月末〜3月上旬)をめどに行うと、一年を通して体の状態を把握することができます。測定を行う目的は大きく4つ挙げられます。

1)現状を把握する

 自分自身の現状を把握するために、体力要素や体の大きさを数値化して確認します。体力測定を行うことでこれから強化したい体力要素(たとえば瞬発力やスタミナなど)、強化したい部位(ケガをして不安の残るところなど)を把握し、目的に合ったトレーニング計画を立てて実施することができます。

2)目標を設定する

 今の自分の状態から考えられる目標を設定し、それに対して必要なトレーニング量や負荷、プログラム内容を決めます。目標は低すぎても高すぎてもトレーニングのモチベーション(やる気)に影響を及ぼしますので、階段を一歩ずつ上るようにやや高い目標を設定し、クリアできればさらに次のレベルを目指すようにすると良いでしょう。

3)トレーニングの方向性を確認する

 トレーニングを続けていても「体に変化が見られない」「野球の技術レベルに反映されない」といったときに、体力測定によって体の状態を確認し、トレーニングの量や内容などを再検討します。ある選手にとって必要なトレーニングでも、別の選手にとっては必要でないこともあります。数ヶ月経ってもトレーニングの成果が見られないときは早急に確認してみましょう。

4)ケガをしたときの体力評価

 ケガをしてしばらく全体練習に参加できない場合、またリハビリテーションなどを行いながら競技復帰を目指すときに、定期的に体力を評価し、競技復帰に必要な体力要素が回復しているかどうかをチェックします。ケガの再発予防とともに、ケガをした部位をかばって他の部位をケガすることのないように、定期的に行うようにしましょう。

[page_break:測定項目をリストアップ]

測定項目をリストアップ

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走力測定ではスプリント能力とベースランニングの技術を確認することができる

 必要とするデータを確認し、測定項目をリストアップしていくようにしましょう。まずは基本的なところを抑えておくようにしましょう。

《体重と体脂肪率》

 ただ単に「体を大きくする」「体重を重くする」というのではなく、パワーアップに必要な筋肉量に変化が見られるかを体重と体脂肪率から割り出します。最近の活動量計は体脂肪量を計算してくれるものもありますので、その増減に着目しましょう。体脂肪量が多く、動きづらさを感じる場合は体脂肪を減らすようなトレーニングを取り入れる必要がありますが、必要以上に体脂肪を減らしすぎてしまうと体の組織を作るための材料が減ってしまい、体調を崩す一因ともなるので注意が必要です。

《周径囲と筋力》

 メジャーを使って体の部位を測定する周径囲は体の大きさだけではなく、筋力の評価にも役立ちます。常に同じ位置の周径囲を測ることと、皮下脂肪の厚さ(皮脂厚)に変化がないことが前提となりますが、毎回同じ部位を同じ人が測定すると測定誤差も少なくなり、屈筋と伸筋をあわせた筋のサイズの尺度として評価することができます。ケガをしてしばらく動かしていない部位は筋肉がおち、周径囲も細くなってしまいます。このようなときに、ケガをする以前の周径囲と比較してみると、どの程度筋力が落ちてしまったかをある程度把握することができます。

《筋力の評価》

 ウエイトを使ってトレーニングを行っている場合は、筋力測定を行うようにしましょう。普段から行っているトレーニング種目を中心に体全体を評価できるように上半身のエクササイズ(ベンチプレスなど)や下半身のエクササイズ(スクワットなど)、また体幹を中心とした腰背部のエクササイズ(デッドリフトなど)を選択します。

 エクササイズの選択についてはストレングスコーチなど、なるべく専門家のアドバイスを受けることが理想的です。フリーウエイトを使って行う1RM測定(RM=最大反復回数のこと。1RMは1回だけ挙げられる重さ)は、最大筋力を評価する最もわかりやすい測定方法の1つです。ただしトレーニングの初心者にはやや不向きであること、また限界に近い重さを扱うためケガのリスクが伴うことなどを考慮し、選手の体力やチームスケジュールなどに合わせて行うようにしましょう。

《走力の評価》

 この他にもランニング項目を測定することがあります。ベースランニングのタイムと30m、50mといった直線距離のタイムを比較し、スプリント能力を上げたほうがいいのか、それともベースランニングの技術をより多く練習したほうがいいのかといったこともわかるようになります。

 このように測定する項目も考えていくといろいろと思い浮かびますが、まずは基本的な項目から始めて、その上で専門的な測定に進むとより野球選手に必要な体力要素がわかり、トレーニングや練習への意欲もさらにわいてくると思います。そして大切なのは測定を継続することです。定期的に測定をすることが自分自身の成長の記録ともなり、技術力向上への足がかりともなります。皆さんも体重や体脂肪といった身近な項目から定期的に測定する習慣をつけてみてくださいね。

【現状を把握するための形態・体力測定】

●測定時期の目安は新チーム発足時、オフシーズン前、シーズン前の年3回

●測定を行う目的は現状把握、目標設定の目安、トレーニングの方向性の確認、ケガをしたときの評価

●測定項目は体重・体脂肪率など基本的なところから始めよう

●ウエイトトレーニングを継続的に行っているところは筋力測定を行おう

●走力はスプリント能力とともにベースランニング特有の技術レベルのチェックにもつながる

●測定は継続して行っていくことが大切

(文=西村 典子

次回コラム公開は11月30日を予定しております。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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