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春の課題を「持ち越した」香川県、「収穫につなげた」愛媛県

2018.09.02

 第90回記念のセンバツ、第100回記念の選手権と「メモリアルな一年」だった2017~2018年シーズンの高校野球も福井国体のみ。ほとんどの学校は新たな100年への助走に入った。そこで今回は四国地区の4県について、2編に分けてその軌跡と次への提言を紹介したい。

 前編は残念ながら春の英明、夏の丸亀城西が共に甲子園初戦敗退に終わった香川県と、センバツの松山聖陵・初戦敗退から夏は済美がベスト4にまで駆け上がった愛媛県を取り上げる。

香川県:「全国で勝つ」戦術幅を創るために

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水野達稀(丸亀城西)

 夏の香川大会をノーシードから制し、14年ぶり5度目の甲子園へと足を踏み入れた丸亀城西だが、結果は日南学園(宮崎)の前に0対2で敗戦。大前 輝明(3年)の好投は光ったものの、ノーヒットに終わった1番・水野 達稀(3年・遊撃手)をはじめ、打線が攻略の糸口をつかめぬまま試合を終えてしまった。

 これで香川県勢はセンバツの英明に続く甲子園2大会連続初戦敗退。結果的には黒河 竜司(2年)が11奪三振の力投も、國學院栃木(栃木)の継投に打線があと一歩届かず2対3で敗れた英明が残した「守備から入る野球が崩れた際の第2案を持ち合わせていなかった」春の課題を持ち越し、丸亀城西も同じ轍を踏んでしまった印象が強い。 

 一方で、2016年に小豆島を21世紀枠センバツ出場に導いた杉吉 勇輝監督率いる高瀬の27年ぶりベスト8。琴平は36年ぶりベスト8。
 さらに観音寺一がベスト4、高松は84年ぶりの夏甲子園に王手をかけるなど、各々のスタイルを磨いた学校が躍進を果たした香川大会は例年以上の観客が詰めかる大盛況。
 高校野球に対する周囲の理解度・協力度は2016年・高松商のセンバツ準優勝以来定着傾向にある。

 加えて春秋2度の招待試合開催など、県高野連は県勢の実力強化に様々な策を打っているだけに、学校側がそれらの経験を「自ら動く」「戦術幅を広げる」材料にしなければあまりにもったいない。

 前記の流れの中で生まれた昨夏・三本松の8強を「歴史的」の3文字で終わらせてはならない。秋以降も混戦が予想される県内での競り合いを戦術幅の創成につなげるために。各校に求められるのは「全国で勝つ」の意識・練習・試合サイクルの熟成である。

[page_break:愛媛県:済美ベスト4の「方法論」を次のステップへ]

愛媛県:済美ベスト4の「方法論」を次のステップへ

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山口 直哉(済美)

 「土居(豪人)くんに合わせて春からずっと150キロに合わせて打ち込んできました」(済美・中矢 太監督)。その成果は中央学院(西千葉)との接戦、星稜(石川)とのタイブレーク激戦で発揮されることに。

 さらに高知商(高知)ではエース・山口 直哉(3年)の奮闘。報徳学園(東兵庫)との準々決勝ではあっと驚く池内 優一(3年・主将)先発で小園 海斗(3年・遊撃手)を封じることに成功。14年ぶりの済美ベスト4には松山聖陵のセンバツ初戦敗退を分析し、それを越えようとした青写真があったことを忘れてはならない。いわば「全国で勝つ」方法論を彼らが示した形である。

 愛媛大会ではその第1シード・松山聖陵を下した新田が決勝戦に進出し、ノーシードから第4シード・西条を退けた松山商、第2シード・聖カタリナ学園を下した今治西がベスト4入りするなど、大会としては100回大会にふさわしい盛り上がりを見せたものの、済美同様の方法論を他校が持っていたのか。そこには多くの疑問符が付く。

 幸いにも松山聖陵が基盤を作り、済美が拓いたことで再び全国で勝つための道はできた。先日、2年間の会期で「愛・野球博」も開幕した愛媛県。数年来途絶えている県外強豪校を迎えての招待試合の側面的支援など、野球どころ愛媛の根幹を支えている高校野球を次のステップに押し上げる策を実行に移していくこと。
 物的・経済的支援に加え、これからは県民の機運を高める「心の支援」も必須となる平成30年7月豪雨復興の一環としても、大人たちは若者たちに何をすべきかを、済美の躍進をたたき台として、真剣に考えるべき時期に来ている。 

文=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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