試合レポート

都立小山台vs帝京

2018.07.28

都立の希望の星・小山台、強豪・帝京破り、69年ぶりの決勝進出!

 

 都立小山台のエース・戸谷直大は、1年生から公式戦に登板し、評価も得ていたが、2年生の夏は関東一、秋は早稲田実、3年生の春は日大三と、ビッグネームとの対戦では、打ち込まれ、弱さを露呈していた。そして、準決勝の相手は、まさにビッグネームの帝京である。帝京相手にどこまで自分の投球ができるか注目されたが、立ち上がりから落ち着いていた。

 

 それでも2回裏は、帝京の5番・志田太陽の右前安打に、7番・竹田明憲のセンターオーバーの二塁打で、帝京が先制し、帝京のペースになるかとも思われた。けれども2回以降戸谷は、ひょうひょうとした雰囲気ながら、丁寧な投球をして帝京打線を抑える。そして、浮き足立っていたのは、帝京の方だった。

 

 4回表小山台は、6番・南大樹の左前安打、7番・西脇宗孝の四球に続き、8番・吉田大晟の打球は、人工芝の上で大きく跳ねて、三塁手の頭を越えてレフトに転がる安打となり、南が生還し、同点に追いついた。グラウンドが硬くなり、打球が大きく跳ねる傾向にあるにもかかわらず、三塁手の位置は、前過ぎた。さらに戸谷の犠打で二、三塁とし、1番・松永和也の右前安打で2人が生還した。

 

 リードを許した帝京であるが、5回表は、さらに帝京らしからぬミスで傷口を広げる。

 

 この回先頭の3番・飯田光塁は内野安打、4番・會川和希は死球で出塁。帝京は先発の左腕、横手投げの白石結太に代わり、エースの松澤海渡をマウンドに送る。小山台は犠打の失敗などでチャンスを広げられない。すると果敢に重盗を成功させ、二死二、三塁とし、7番・西脇の一、二塁間のゴロを帝京の二塁手・小松涼馬が捕球したが、一塁には誰もおらず内野安打となり、2人が生還した。一、二塁間のゴロの処理とカバーリングなど、帝京なら繰り返し練習してきたはずであるが、肝心なところでミスが出た。ダメを押すように、8番・吉田大晟の二塁打で1点。1番・松永和也の右前安打でさらに1点。西脇のゴロをアウトにしていれば、無得点で終わったこの回に、4点を失ったことは、あまりに大きかった。

 

 それでも、強豪校というのは、こうしたリードされた局面でギアが入り、猛追をする。しかしこの試合の帝京には、追いかける気迫のようなものは感じられなかった。

 

 また普通の都立校でよくあるのが、私立の強豪相手にリードをしても、相手のプレッシャーに負けて、四死球や失策で墓穴を掘ることが多いが、この日の小山台の戸谷は、9回に四球を1個与えただけで、制球は安定していた。守っても、難しいゴロを再三にわたり堅実の処理していた遊撃手の南をはじめ、派手さはないもののしっかりとした守備で、流れを帝京に渡さない。

 

 帝京は8回裏に安打3本で1点を返すのがやっと。終わってみれば、7-2で小山台が圧勝した。

 

 小山台の決勝進出は、都立第八という校名であった1949年以来69年ぶり。東東京大会で都立の決勝進出も雪谷以来9年ぶり、甲子園出場となれば、やはり雪谷以来15年ぶりとなる。近年都立は私立の強豪に水を開けられていたが、29日の決勝戦は、都立校の可能性を示す、重要な試合になる。

 

 一方敗れた帝京であるが、試合の内容の悪さが気になった。それでも、力のある選手は揃っている。ただ今回のベンチ入れでは、1年生が8人いるのに対し、2年生は1人だけ。チームを引っ張るためには、2年生の存在が重要なのではないか。

 

文=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.15

西東京大会は激戦ブロックが続出!昨夏甲子園出場の日大三は国士舘と同ブロック!【2024年夏の甲子園】

2024.06.15

東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15

【福島】日大東北がサヨナラ勝ち、帝京安積はコールド勝ちで4強入り<春季支部選手権大会>

2024.06.15

今年の東京は「スラッガー大豊作世代」! 超進学校に現れた「プロ入り明言」の二刀流、木製で本塁打量産の早実のスラッガーなどが夏を盛り上げる【注目選手リスト】

2024.06.15

“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.11

【北海道】旭川支部の抽選会は12日!旭川実、旭川志峯など強豪の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得