伝統となっている一大イベントで結束する東海大菅生!目指すは2年連続の聖地!
一大イベントで見られたシーンの数々
試合中に仲間のプレーに笑顔を見せる
6月中旬。そのグラウンドには笑顔の花が咲き誇っていた。そのグラウンドとは、昨夏の西東京代表にして甲子園ベスト4の東海大菅生のグラウンドである。今年のチームは、昨秋のブロック予選1回戦で敗退するも、春は都大会ベスト8まで勝ち進んだ。
夏の大会もシードを獲得し、2年連続の甲子園に向けて着々と歩みを進めている東海大菅生。夏の大会の組み合わせが決まったことで、ベンチ入りメンバーも登録される。これはつまりベンチ外となった3年生の事実上の引退が決まることも意味する。そんな3年生たちのための紅白戦が行われたのだ。
この引退試合はどんなキッカケで始められたのか。若林監督にお話を伺うと、
「メンバー外の選手は3年間応援をされないまま引退になってしまうので、そういう経験をしてもらいたかった」。そのため、吹奏楽部の顧問の先生にお願いをして、最後に応援団の声援を背にプレイすることとなったのだ。
だが、この時期は吹奏楽部の大会があるため、一度だけお願いをしなかったこともあったそうだが、それに対して吹奏楽部のOB・OGの父母の方が「やりたい」と声をかけてくれたことで伝統行事となった。
今では吹奏楽部の先生から一声かけてもらうほど大事な行事となったが、実際にグラウンドを見渡すと、バックネット裏には選手たちを応援するために、同校の吹奏楽部がズラッと楽器を持って並んでいる。
またブルペンを見てみると、選手の保護者の方たちがカメラを構えて息子たちのプレーを見守っていた。その横では選手がキャッチボールをしている瞬間もあった。本来であれば試合に向けて準備をするために使うはずのブルペンに、写真撮影をしている父母の方が選手と居合わせるという引退試合ならではのシーンも見受けられた。
また、他の部活の生徒もクラスメイトのプレーを一目見ようと、応援に駆け付けており、まさに一大イベントと言える状況だった。
そんな引退試合ならではのシーンはグラウンドの中にもあった。両軍のベンチには3年生の女子マネージャーも選手と同じユニフォームを着用し、試合に出場。ベンチ前の円陣での声掛け、バッティングに守備も行い、選手たちとともに試合を終始楽しんでいた。
少し前には若林監督自ら試合に出場するなど、この引退試合にコーチ陣も参加するシーンもあり、普段の練習や試合では見られない出来事が随所に見られた。
[page_break菅生野球で一戦必勝を誓う]菅生野球で一戦必勝を誓う
試合後、3年生の選手と父母の方だけで記念撮影!
試合後、サヨナラタイムリーを放った堀江尚輝に話を聞くと、「高校最後の試合だったので、親には感謝の気持ちを持って引退試合に臨みました」と語った。
また春は背番号3を付けていながら、この夏はスタンドから応援することなった田中祐樹は、「メンバー外との距離も縮まって、チーム全体の一体感はより強くなったと思いますので、ここから甲子園を目指して全力でサポートできればと思います」と話してくれた。
この試合をサポートしていたプロ注目のショート・田中幹也は、「いつも支えてくれる仲間の雄姿を見て、自分も夏はやってやるんだ、と思いました」と、仲間たちのプレーに力をもらっている様子だった。
日々の練習の辛さを忘れ、仲間とともに純粋に野球を楽しむことができるからこそ、選手間の距離も縮まり、チームとして団結力が深まる。選手のためには良い伝統だとは感じているが、気が緩まないように注意したいと若林監督は思っている。
最後に若林監督に夏へ向けての意気込みを伺うと、
「選手にはとにかく練習通りのプレー。7、8割の力を出してくれれば十分勝てると思っています。とにかくそれを徹底させています」と自信を覗かせた。
日大二、八王子、早大学院などが揃ったブロックではなるが、あくまで菅生野球をやれば結果はついてくると信じている若林監督。田中選手は「目の前の試合を一つ一つ勝ちたい」と意気込みを語ってくれた。引退試合で、より一体感が増したチームが目指すは2年連続の聖地だ。
(文=編集部)