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星城(愛知)【前編】「愛知の名指導者が就任。気配り・目配りで選手が成長」

2018.06.30

 6月30日から東西愛知大会が開幕する。西愛知は愛工大名電中京大中京享栄東邦の愛知私学4強が存在する。この4強を破り、甲子園の座を虎視眈々を狙っているチームがある。それが豊明市にある星城である。男子バレー部の強豪として有名な星城だが、尾東大会で二季連続で優勝を果たし、実力校として注目されている。

指導理念は「気配り・目配り」。王道でも理念は曲げない

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星城 平林宏監督

 2015年4月、星城に愛知の名指導者が監督に就任した。それが現在も指揮を執る平林宏監督である。平林監督は豊田西高校の監督として、1998年春の選抜で同校初の甲子園出場に導き、その後も愛知大会決勝へ勝ち進むなど進学校・豊田西を強豪校に育て上げた。そんな平林監督の指導方針は「当たり前のことをしっかりこなす。気配り、目配りです」と答える。だが、最初はなかなか浸透しなかった。

 「時代とともに我慢や辛抱ができない子供たちが増えてきているのかなと思います。教育的な環境などもやはりあるので厳しいしつけということは教育の世界に少ないので年々そういうものがありましたね」。

 それでも平林監督の方針は曲げなかった。その指導方針が勝つことにつながることは豊田西で実感しているからだ。
「野球で我慢、辛抱のできる子供たちが試合で競ったときにやはり勝てると思います。

 もう一つは挨拶や気配り、当たり前の気づきなどをできる子供たちが結果試合に勝つ。相手の出方に気づくとか、相手の配球に気づくとか相手より先に気づいて行動するということですから、そういうことが普段の生活の中でできてくると。必然的に勝つようになる。それが少し星城に来た時は欠けていた部分があったと思いますね」。

 平林監督は自分の色を浸透させるために急ではなく、少しずつ改革し始めた。感性を磨くために目に見えたごみ拾いやグラウンド整備が大切だと説く。それを上級生が率先してやることが
「やはり当たり前の挨拶や目の前にあるごみを、自分が落としたものではなくても拾おうと。それは自分がエラーしたときに後ろにいるカバーと一緒だと。生活面のことではすべて結び付けた話をしています。そういうことがきちっとできるようになると本当に強くなる。グランド整備だってそうですよ、自分が使う場所ですから。下級生が整備するものじゃない。自分が整備するものという風に。むしろ上級生が行動を背中で示す。それが下級生につながります」

 そして選手が実行に移せるよう、平林監督もグラウンド整備を行い、背中で示す。

 「私自身の信条としても私が本気でないと人を本気にさせることはできないと思いが強いので。豊田西であろうが、どこであろうが高校野球をやる子たちについての接し方は変えてないです」

 平林監督の想いを感じてきたのが現在の3年生たちだ。

[page_break平林監督の指導で成長を見せてきた選手たち]

平林監督の指導で成長を見せてきた選手たち

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星城 小笠原啓太郎主将

 今年の3年生は平林監督を慕ったり、また中学時代の指導者に「平林監督の元で学べ」といわれて入学した選手がほとんど。主将の小笠原 啓介は「社会に出たら、挨拶とか返事とか当たり前の礼儀とかが大事になってくると思うので、平林先生はいつも野球を学ぶと同時に、野球でいろんなことを学べと言われていて、そういった意味では将来に向けて役に立っていると思います」と、平林監督の指導の効果を実感している。

 また、星城の練習風景や、選手、マネージャーの立ち居振る舞いを見ると平林監督の指導はしっかりと行き渡っている。特にマネージャーの気遣いは素晴らしかった。取材中、「誰を取材しますか?」と声をかけたり、雨が降り出した途端、すぐに傘を持って、一緒に取材に同行してくれたりと、こちらが恐縮するぐらいの素晴らしい対応だった。

 平林監督は立ち居振る舞いの部分だけではなく、技術指導にも長けた指導者である。3番打者である小笠原は「体幹を意識して軸で回るということや、レベルで振るということは、1年生の時からずっと教えてもらっています」と話す。

 5番藤田健太朗は「技術的なことよりも、自分はこれまで消極的な打撃が目立っていたんですが、積極的に振っていけといわれて初球から打てるようになると、自分の打撃が良くなっていきました」と、成果を語る。
 また4番木村翔も「野球の基礎から教えてくれるので、とても参考になります。大学でも続けたいと思っていますし、先生の教えは大学でも通用する野球だと思うので、信頼しています」と多くの選手が平林監督の指導を信頼している。

 成長していく選手の姿を見て、平林監督も「就任してから最も打てる打線」と手応えを感じている。

 だが、夏のシード入り(県大会ベスト8)をかけた春季県大会では初戦敗退を喫し、ノーシードで夏を迎えることとなった。

 後編では今春の大会で浮かび上がった課題。そして明日開幕する東愛知大会への意気込みを伺いました。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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