Interview

野村佑希(花咲徳栄2年・外野手&投手)長所を開花させた1年冬の練習【前編】

2017.12.28

 センバツは第90回、夏の選手権は第100回大会を迎えるなど、高校野球にとって節目の2018年。加えて新3年生となる世代は2000年生まれが大半を占める、いわゆる「ミレニアム世代」。すべてにおいて記念すべき一年を飾るべく、全国各地で逸材たちが活躍の助走に入ろうとしている。
 そこで今回はそのトップレベルプレイヤーたちを徹底インタビュー。今回登場して戴くのは2017年夏・埼玉県勢初優勝を果たした花咲徳栄で中軸を張り、現在は主将・高校通算35本塁打スラッガー・外野手・最速146キロ右腕の四刀流を務める野村 佑希である。
過去・現在・未来をあますことなく語って頂いたロングインタビュー。まず前編では2年夏、甲子園でのブレイクにつながった1年冬の練習を中心に、甲子園の活躍までを振り返っていただきます。

貴重な経験を積んだ1年秋

野村佑希(花咲徳栄2年・外野手&投手)長所を開花させた1年冬の練習【前編】 | 高校野球ドットコム
インコース打ちについて解説する野村佑希(花咲徳栄)

――まず中学時代の野村選手について教えてください。
野村 佑希選手(以下、野村)「はい。僕は群馬県の太田市シニアに所属していて、全国大会での出場もなく、地区大会でも、2回戦ぐらいまでいけばいいところのチームで、部員も10人程度のチームでした。

――中学時代はどれくらいのサイズがあったのですか?
野村 中学3年から184センチ80キロありました。体も大きくて、あまり当たらなかったですけど…打てば打球は飛びましたし、投手としても135キロは投げることができました。

――そんな野村選手が花咲徳栄に進むきっかけを教えてください。
野村 花咲徳栄関係者の方が僕を見ていただいたことがきっかけです。そこで自分自身でも花咲徳栄のことを一度調べて、プロ野球に行く選手も多くいましたので、ここに決めました。

――実際、花咲徳栄に進んでみてどうでしたか?
野村 衝撃ばかりでしたね。自分は1年生からAチームの練習に混ぜてもらったのですが、2学年上には高橋 昂也さん(現:広島東洋カープ)がいましたし、1学年上には清水 達也さん(現:中日ドラゴンズ)と、プロ入りする先輩が投げる球は本当にすごくて、これが超高校級の投手なのかと驚きを隠せませんでした。

――ベンチ入りしたのは1年秋から。ファーストとして試合に出場していましたが、あの時はどんな思いでプレーしていましたか?
野村 あの時は実力でベンチ入りしたのではなく、監督さんが僕を経験させるために入れていたのが分かりました。あの時は全然打てなかったですね。

――関東大会に進むも慶應義塾に初戦敗退。140キロ台の速球を投げ込む森田 晃介投手の前に3打数無安打でした。
野村 逆にレベルの高い投手と対戦出来て、自分に何が足りないのかを自覚できてよかった大会だったと思います。

――ここから冬の練習に入りますが、どんなことを課題にして取り組みましたか?
野村 自分は内角打ちを苦手にしていましたので、バスターバッティングをやりました。これはチーム全体でやっているのですが、バスターをしながら、インコースも、アウトコースも逆方向へ打ち返す打撃を繰り返しやっていました。

[page_break:2年春、箕島戦の本塁打を機に才能が開花!]

2年春、箕島戦の本塁打を機に才能が開花!

野村佑希(花咲徳栄2年・外野手&投手)長所を開花させた1年冬の練習【前編】 | 高校野球ドットコム
バスターヒッティングも打撃開花のきっかけとなった

――ちなみにバットはどれくらい振っていたのですか?
野村 具体的な数は分からないのですが、1キロぐらいの重いバットも、振り続ける練習もあり、最低でも2時間はバットを真剣に振っていたと思います。

――その中に全国的に有名になったハンマートレーニングが入ったんですね。
野村 そうです。これはインパクトの強さを鍛えるトレーニングです。やり方は真上から振り下ろして、下にあるタイヤをハンマーでたたくのですが、この時、注意していたのは振り下ろしたときに、しっかりと受け止めること。衝撃を受け止めて叩くことが大切です。繰り返していくとインパクトの強さが出てきて、こんなに飛距離が出てくるのかと思いました。

―― 冬を超えて、その成果を実感するようになった時期はいつですか?
野村 練習試合解禁直後は、投手から打つのは久しぶりでしたので、感覚が合わず、ダメでした。つかんできたのは3月下旬の関西遠征からですね。

―― つまり本塁打を打ったのもその時期からですか?
野村 そうです。2年生になって初本塁打を打ったのは箕島(和歌山)戦でした。マウンドに立ったのはエースの中川虎大さん(横浜DeNA育成枠指名)なんですけど、ストレートが本当に速かったです。でもちょうど高めに浮いたスライダーがきてくれたので、打ったら、左中間へ入ってくれました。

[page_break:2年夏は人生で一番良い経験をさせてもらった]

2年夏は人生で一番良い経験をさせてもらった

野村佑希(花咲徳栄2年・外野手&投手)長所を開花させた1年冬の練習【前編】 | 高校野球ドットコム
盛岡大附戦で本塁打を打つ野村佑希(花咲徳栄)

――この本塁打で野村選手は感覚をだいぶつかんだのでしょうか?
野村 そうですね。冬の練習で、スイング軌道も改善されて、強く振ることもだいぶ形になっていたので、あとはタイミングをどう取るかだったんです。本塁打を打てるようになってから、関西遠征10試合のうち5本塁打も打つことができました。

――野村選手は春の県大会でも4本塁打を打ちますが、ベストホームランはどの試合ですか?
野村 大宮東戦で放ったバックスクリーン弾です。広い県営大宮で、バックスクリーンに打つことができて、本当にうれしかったですね。

――さらに関東大会・早稲田実戦(東京)では2対5と3点ビハインドで迎えた5回表、1点差に詰め寄る本塁打を放ちました。
野村 あの試合は満員の観客が入った中でしたが、そういう中で、追い上げる本塁打を打ったのは自分にとって自信になりました。

――そして夏の埼玉大会に突入しました。打率.407を放ち、3連覇に貢献。野村君は埼玉大会の打撃を振り返ってどうでしたか?
野村 いや全くダメでしたね。打率を見ると見栄えは良いですけど、内容面は全くよくなかったです。

――そうなんですね。そうなると夏の甲子園まではどうやって立て直しをしたのでしょうか?
野村 岩井(隆)監督と西川さん(愛也・埼玉西武ライオンズ2位)によるマンツーマン指導を受けました。

――お2人からはどんな指導を受けたのですか?
野村 まず監督さんからは、構えの時に、両腕が硬直しているので、それを柔軟に使える形にしようと指摘を受けまして、それで西川さんの構えを参考にしました。西川さんの構えと似ているといわれるのはそのためです。
西川さんからはスイングは悪くないけど、タイミングの取り方が悪いので、バットが出やすいタイミングの取り方を意識しなさいと指摘を受け、2人の指摘を意識して甲子園開幕まで振り続けて、ようやく間に合った感じです。

――万全を期して臨んだ夏の甲子園。まず初戦の開星戦(島根)で3安打。初ホームランが出たのは日本航空石川戦(石川)。7回表、相手エース・佐渡 裕次郎投手から打った一打でした。
野村 打ったのは低めのスライダーですね。僕は低めは得意で、打てると思って振り抜きました。打った時、タイミングが早かったので、入るかなと思ったんですけど、うまく振り抜くことができて、打球も伸びてくれて、スタンドに入ってくれました。

――その後も安打を重ね、甲子園2本目は、準々決勝の盛岡大附戦でした。左腕・三浦 瑞樹投手が投じたインコースです。
野村 甲子園4試合目で、甲子園という舞台になれていたというのもありましたし、研究をしていて、三浦投手のタイミングはもうつかんでいました。インコース打ちの形はできていたので、自然と回転することが出来ました。あのホームランは自分にとって今までの本塁打で最も飛んだと思います。

――インコースは得意になっていたんですね。
野村 そうですね。1年前の自分とは別人となりました。

――甲子園第2号は先制アーチとなり、準決勝進出に貢献。その後も快打を連発し、計6試合で25打数13安打、2本塁打6打点、打率.520と4番として立派な働きを見せ、埼玉県勢初となる夏の甲子園優勝に大きく貢献しました。甲子園優勝を経験して、改めて感想をお願いします。
野村 優勝した直後は優勝ということに実感があまりなかったのですが、埼玉に戻ってからいろいろな人に声をかけられて、優勝ということを実感しましたね。振り返ると、自分の野球人生で優勝という経験がなかったので、人生で一番良い経験をさせていただきました。(続きを読む)

(文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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