Interview

伊藤 翔投手(徳島インディゴソックス)「NPB入り、その先の『ヒーロー』へ駆け上げる」

2017.10.19

 角中 勝也(高知ファイティングドッグス~千葉ロッテマリーンズ外野手)や又吉 克樹(香川オリーブガイナーズ~中日ドラゴンズ投手)といった侍ジャパントップチーム経験者をはじめ、これまでの12年間で本指名17名・育成指名32名・計49名のドラフト指名選手を輩出している四国アイランドリーグplus。

 そして2017年、日本独立リーグのパイオニアと言える彼らが自信をもって送り出そうとしているのが徳島インディゴソックスの高卒1年目右腕の伊藤 翔だ。外連味のない腕振りから最速152キロをマークするストレートと、縦に切れ味鋭いスライダーをはじめとする変化球は、シーズン当初からNPBスカウト陣の注目の的であり続けている。

 では、18歳の青年はこの一年間、何を考えてマウンドで躍動し続けたのか?NPB入りのみならず、その先の飛翔を見据えたコトダマをお聴きいただければ幸いだ。

「自己流」で1年でNPBを決意した前期

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伊藤 翔(徳島インディゴソックス)

――昨年、四国アイランドリーグplusドラフト1位で徳島インディゴソックスに入団した伊藤 翔投手ですが、まずはそのきっかけを教えてください。

伊藤 翔(以下、伊藤):僕は(横芝敬愛)高卒後、次の世界で野球をする時は「野球でお金を稼ぐ」ところでやりたかった。そこで当初は社会人野球を志望していたんです。ただ、(伊藤 匠)監督と相談しても高卒では社会人野球入りは厳しい。同時に大学からも数校話をいただいていたので、大学に進もうと思っていたんです。

 ただ、そこで四国アイランドリーグplusのトライアウトの話を聞いて。「これが俺が望んでいた道だ」ということで決めました。以前から独立リーグの存在は知ってはいたんですが、それまでは「それこそ野球だけでお金を稼ぐのだから、僕みたいなレベルの選手が行けるところじゃない」と思っていたんです。でも、そういった話があって「大学4年間より、毎年NPB入りのチャンスがあるなら、挑戦してみたい」と思ったんです。

――徳島インディゴソックスに来てすぐにローテーション入り。最速149キロも早々に出しましたが、四国アイランドリーグplusの印象はいかがでした?

伊藤:先輩方は甲子園に出られている方や実績を持っている皆さんばかりなので、僕にとっては吸収することしかなかったです。「聴いて、試して、聴いて、自分で考えて、試す」この繰り返し。トレーニングも自分のためになるものばかりでした。

――対戦相手もマニー・ラミレスや、ラース・アンダーソン(高知ファイティングドッグス)といったMLB経験者をはじめ、外国人選手との対戦も数多くありました。

伊藤:もちろん外国人選手との対戦ははじめてでしたし、雰囲気、立ち振る舞いの違いを感じました。4月、アンダーソンに浴びたホームランは、確かに甘いツーシームだったんですが、ホームベースから離れていたのに外角よりを引っ張ってもっていかれた。衝撃でした。その中で抑えることができたのも自信になりました。

――前期序盤から阪神タイガースの2軍などNPB選手との対戦も経験しました。

伊藤:四国アイランドリーグplusのリーグでは空振りが取れるボールも当てられる。どんなボールでも対応してくる。バッティングの「うまさ」を一番感じました。NPBの選手を抑えるボールの必要性。ストレートにしても、変化球にしてもまだまだだと思いました。

 そして4月に阪神タイガース2軍と対戦した時、同期の才木 浩人須磨翔風高卒)の登板も観たんですが、「マウンド慣れしている。堂々としている」ということも感じたので、リーグでもっと経験して、レベルアップして追い抜かしてやろう。「1年でNPBに行く」という気持ちが生まれました。

――では、具体的にどのような形で「1年でNPBに行く」ようにしようと思いましたか?

伊藤:競った中でも勝ちきれる投手。どのボールでも三振が取れる投手になろうと思いました。(投手出身の)養父 鐡監督からも「変化球でカウントが取れないと、そのあとのストレートも活きてこない」、それと「どうやって簡単にアウトを取れるかを考えなさい」ということをずっと言われました。

――その中で、目標にする選手はいたのですか?

伊藤:僕は人のマネをするのは好きではないんですよ。参考にする選手もいないんです。自分で考えて、自分のものを創らないといけないと思っています。自分の好きな言葉も「自己流」。自分だけのものを貫きたいです。

[page_break:後期の模索から、ポストシーズンでの大活躍へ]

後期の模索から、ポストシーズンでの大活躍へ

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伊藤 翔(徳島インディゴソックス)

――伊藤 翔投手の活躍もあり、ブッチギリの優勝で終えた徳島インディゴソックスの前期でしたが、後期はチーム(4チーム中最下位)も伊藤投手も苦しみの時期でした。

伊藤:「いい時はいい、悪い時は悪い」というのがはっきりしていました。

――たた、その中でも課題にしていた変化球の向上は怠らなかったようですね。

伊藤:手首の使い方、握り方などいろいろとアレンジしてやってきました。特にカーブは腕が緩んで見逃されたり、待たれて次のボールで打たれる問題が見えたので、握りも変えました。スライダーなどでも高校時代までの手首を使うのではなく、腕を思い切り振って、リリースで「パチン」と来るところを探しながら取り組んできました。

 結果、カーブとスライダーで腕を振れるようになったことで、フォークも含めて三振が取れるようになった。いろいろと取り組んできてよかったと思います。

――香川オリーブガイナーズとのチャンピオンシップでは2試合2完投勝利1完封・防御率0.50でMVP。その要因は?

伊藤:短期決戦では後期の課題だったムラは出せない。そこで後期最終戦が終わってからはキャッチャーの垂井 佑樹さんがフォームをチェックしてもらったり、試合での意識の置き方について話をしてくれました。そこがチャンピオンシップにつながったと思います。

――では、四国アイランドリーグplusでの一年間を終えた今、改めて自分の投球像は?

伊藤:まずはチームの勝ちに貢献できるところをアピールする。一年間通じてきた勢いのあるストレートや、後期に取り組んできた変化球で打者に向かっていける投手になりたいです。藤平 尚真(東北楽天ゴールデンイーグルス)とかの活躍には刺激を受けているので、NPBに入ったら、一日でも早く一軍のマウンドに立ちたいです。

――10月26日のドラフト当日は、いったいどんな気持ちになっているんでしょうか?

伊藤:あの会場で、自分の名前が呼ばれるのが想像できない(笑)。実感がないです。その日になってみて、ですね。

「今日も決して調子はよくなったけれども、0に抑えることができました。『試合を作る』ことを覚えた。それが四国アイランドリーグplusに来て一番の収穫です」。

 7回7安打・奪三振6・1失点で勝利を引き寄せた第2戦に続き、7回107球3安打10奪三振無失点。養父 鐡監督も「3ボール1ストライクからカーブでストライクが取れるようになった。成長した」と褒めたたえたルートインBCリーグ・信濃グランセローズとの第4戦後、伊藤 翔はこう「卒業最終試験」受験後の感想を漏らした。そして徳島インディゴソックスは3勝2敗で独立リーグ日本一。雨中のスパークリングファイトには、再びMVPに輝いた背番号「14」がいた……。

 かくして今季NPB一軍、二軍、三軍。そして社会人・大学生・独立リーグを見回しても皆無の「高卒1年目先発ローテーション完全走破」を果たした最速152キロ右腕。次は、後期から登場曲とした「ヒーロー」となるために。18歳・伊藤 翔の10月26日はそこを目指すための大きな節目の日となる。

(インタビュー/文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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