Column

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【前編】

2017.10.29

 2017年9月。
「応援ありがとうございました」の張り紙が校舎に掲げられるなど、いまだ真夏の甲子園ベスト8の余韻が残る香川県立三本松高等学校。3年生は「愛顔つなぐえひめ国体」を控えているとはいえ、すでに1・2年生中心となった通常練習直前のベンチ前には横長のホワイトボードが掲げられた。

 左上に「最大目標」として大書きされたのは「甲子園優勝」。これは3年生たちもたどった道のり。では、三本松はいかにして、最大目標に近づいていったのか?今回はその設定法と具体的なアプローチを日下 広太監督と3年生たちの証言から迫ってみたい。

「本気で思わないと手が届かない」甲子園優勝への道

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【前編】 | 高校野球ドットコム
最大・中間・月間目標が明示された三本松ベンチのホワイトボード

 三本松での現役時代は捕手。順天堂大卒業後、NPBの登竜門であるBCリーグ(現:ルートインBCリーグ)の石川ミリオンスターズと新潟アルビレックス・ベースボール・クラブで2年ずつ、計4年間プレー。
「独立リーグの選手は練習ではなく、試合を見た上で評価される」シビアな世界を経験した日下 広太監督は2016年7月、三本松の新チーム立ち上げ時に大目標として「甲子園優勝」を掲げた理由をこう説明する。

 ただ同時に、そして特に高校野球には大目標への道筋を作る「中間目標」等の部分が大事になってくる。そこでチームは以下の目標を設定した。

中間目標「秋季県大会優勝・四国大会出場」
*バッティングで圧倒し打ち勝つチームを目指す

 となれば、自然と練習メニューも決まってくる。ここは3年生たちに話してもらおう。
「ロングティーで強いスイングをすることを心がけました」(副主将・右翼手の川﨑 愛弥)
「守備では基本の補球を重要視しました」(遊撃手の黒田 一成)
「班別で2か所同時にノックを受けました」(一塁手の盛田 海心)
守備練習では効率化を重視して、彼らは打撃強化に取り組んだ。

[page_break:非を認め、アプローチの精度高め、「春・香川大会優勝」中間目標達成]

非を認め、アプローチの精度高め、「春・香川大会優勝」中間目標達成

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【前編】 | 高校野球ドットコム

三本松・日下 広太監督

「長打力が付いて楽しみに秋の大会を迎えたんですが……。秋の香川県大会では3試合を通じ長打は1本だけでした」(日下監督)結論から言えば、三本松は1つ目の中間目標は達成できずに終わった。秋の県大会では英明に3対6。

「手数が出なかったです」主将・渡邉 裕貴が首を傾げれば、英明戦で6失点の絶対エース・佐藤 圭悟は「3点以上取られたら厳しいと思っていたところで8回裏に5点を奪われた」と、見えない重圧に負けた自分を責めた。

 冬。新たな中間目標を「春季県大会優勝」に定めた三本松は、次に失敗の分析を練習メニューに落とし込んだ。

 指揮官いわく「秋の県大会では大きく振ろうとしすぎて力みが入っていた」打撃では2015~2016年・高松商強打線の原動力になっていた「ViPRトレーニング」を日下監督が自らが指導者資格を取得した上で導入。
「内側から力が出るようになった」と選手たちからも手ごたえをえたViPRたちは、甲子園まで彼らの必需品となる。実戦感覚を高めるためロングティーより「前から投げるボールを打つ」(盛田 海心)時間を増やした。

 身体の使い方にも目を向けた。盛田 海心の右膝半月板損傷リハビリを担当していた森安 昭斗トレーナーから股関節、肩関節のストレッチを学習。これも長期遠征となった甲子園でのコンディション維持に効果を発揮した。

 どんな時の自分たちのスイングをするためのメンタル面の改善も。
「ある程度スイングでいる選手たちだったので、自分が基本を度外視していた」日下監督は自らの非を素直に認め、試合時での自信を刷り込むための素振りにアプローチをした。

 ただ、こういったことが素直に選手たちの身体に入っていたのも、最初の大目標「甲子園優勝」があったからこそだ。佐藤 圭悟は監督に言われた言葉を今でも覚えている。

「お前らは本当に甲子園でプレーしている姿が想像できていない」ここが全ての原点となった。

 よって、成長へのアプローチをかけたのは打撃だけではない。守備は基本をさらに積み上げつつ、外野手を一例にすれば「実戦で使える攻めの守備をやってみよう」(川﨑 愛弥)と練習試合や練習では極端な守備位置を入れながら、実戦のポジションバランスをチェック。バックホームもノーバウンドとワンバウンドの2種類をメニューに導入。内野手は「壁当てを使って不規則バウンドへの脚の運び方を練習しました」(黒田 一成)と、試合で使える基本練習に取り組んだ。

 なお、これらの守備メニューは主に選手側の発案で進行。日下監督はサポートに回り、逆に打撃は監督がメニューを落とし込んだ中で、選手同士での切磋琢磨を刺激。基本が入ったところで、詳細に条件を明示しての打撃練習を導入し、実戦での勝ち方も醸成した。

 女子マネジャーの川田 那菜さんもそこに力を加えた。

 おにぎりの秋から継続してきた補食「おにぎり」のレパートリーを継続した上で、練習後の体重測定を導入。練習後だったプロテイン摂取のゴールデンタイム時摂取も推進した。
「甲子園出場校の強さがどこにあるかと調べたら気付きました」。個々のデイリー目標を、部員全員が共有できるホワイトボードに書き出すよう提案したのも川田さんである。

 そして春季県大会優勝。
「試合の中で聞いた指示を自分で体現できるようになった」(日下監督)冬のアプローチを部員たちが吸収した結果は、2つ目の中間目標達成となって現れた。

「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【後編】に続く

(取材・文=寺下 友徳

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【前編】 | 高校野球ドットコム
注目記事
2017年秋季大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!