都立紅葉川vs青稜
ベテラン指揮官も苦悩するチーム状態。しかし急成長を見せ、都立紅葉川が都大会進出を決める!
3失点完投の小山 紀洋(都立紅葉川)
高校野球の難しさは代が変わっても強さを維持することだ。この夏、東東京大会ベスト32の都立紅葉川は、今年ほど強さを維持するために悩んだ年はない。
都立紅葉川の田河監督によると、今年のメンバーが夏にベンチ入りしていたのは僅かに2人。そのため新チーム当初は打たれることも多く、「いつも弱いといいませんかといわれますけど、今年は本当に実力がなく、悩む日々でしたね」と打ち明けた。しかしそういうチームでもしっかりと作り上げるのは、やはり長年、高校野球の現場でチームを育ててきた実績・指導力があるからだろう。新チームがスタートして2か月ほどでだいぶチームらしくなったという。
試合は都立紅葉川が優位に試合をすすめた。
2回裏、都立紅葉川は、二死二塁から1番浦野真治が左中間を破る適時二塁打で1点を先制。さらに3回裏には、5番望月直也の適時打で1点を追加すると、5回裏には4番青木進弥の適時打、5番望月の右翼線に落ちる適時打、6番菅澤一生の適時二塁打で、一気に3点を入れて、5対0と大きくリードする。
しかし6回表、青稜は二死から6番渡辺大聖の適時二塁打で1点を返し、さらに7番柴野慎也の適時打で5対2と3点差に迫る。青稜は上位打線、下位打線問わず活発に振れる打者が多く、塁上に出れば、積極的に仕掛けようとする意図が見える。常に塁上をにぎわせており、攻撃力は高いチームで、自分の持ち味を出そうとしていた。
田河監督は「青稜さんは、前の試合では、バントなど基本忠実な野球をしている印象を受けたのですが、この試合ではエンドラン、盗塁などをしっかりとやってきて、我々を研究してやっているなと感じましたね」と敵将も評価する攻撃ぶり。それでも都立紅葉川の先発・小山 紀洋は、「コントロールと打たせてとることを意識して投球をした」と丁寧なピッチング。9回表、青稜が追い上げ、犠飛で1点を返したが、都立紅葉川内野陣が三塁へ進む二塁走者を逃さずアウト。好守備で、都大会出場を決めた。
田河監督は試合を振り返って選手の成長ぶりを評価した。
「大会に入る前までは不安があったんですけど、初戦で勝利してから、だいぶ変わりましたよね。選手は1つの勝利で自信をつけてくれましたね」
やはり苦しいチーム状態でも本大会出場までこぎつけるところはさすがだ。まだ本大会まで時間がある。チームを鍛え上げる時間がある。田河監督は、「投手陣もだいぶ整備されてきましたが、都大会まで時間があるります。彼らはどん底を知っていますし、あとは下から上がっていくだけです」とさらなる上昇を求めた。
主将の青木は「今日は投手がしっかりと投げてくれたおかげで勝てたと思います。まだ課題も多いですが、目標だった都大会出場を決めたので、しっかりと練習をしていきたいと」と意気込んだ。
都大会出場が成長のきっかけとなるのか。半月後、一次予選とは一味違う姿を見せることを期待したい。
(文=河嶋 宗一)
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