Interview

川端健斗(秀岳館) 「15奪三振の快投を生んだ緻密なコンビネーションと強靭なメンタル」

2017.09.03

 9月2日、第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ2日目。日本代表はアメリカ代表と対戦。試合は0対4で完封負けに終わったが、その強力なアメリカ打線相手に渡り合うピッチングを見せたのが川端健斗秀岳館)である。5.2回を投げて4失点を喫したが、15奪三振。世代屈指の左腕の実力を思う存分発揮した。

幾度の中断にも動じずに投げることができた

川端健斗(秀岳館) 「15奪三振の快投を生んだ緻密なコンビネーションと強靭なメンタル」 | 高校野球ドットコム

川端健斗(秀岳館)

 日本は雨の影響で、三度も試合開始時間が変更となった。

17:00→16:00→17:30→18:30

 思わずうんざりするような時間変更だろう。しかもこの試合、1時間半に近くに及ぶ中断もあった。その中、動じずに投げられる男がいた。それが川端健斗秀岳館)だ。甲子園4度の甲子園出場。最速148キロとキレ味鋭いスライダー、カーブ、チェンジアップを武器に、甲子園11試合で防御率1.48と優秀な成績を残した世代屈指の速球派左腕へ成長した男は、こういう状況化でも、「自分の中では体の準備、気持ちの準備ができていた」

 平常心で強打のアメリカ打線に立ち向かった。初回、先頭打者に安打を打たれながらも三振ゲッツーで二死にすると、この回ストレートで2三振を奪う。

 川端とすれば、どちらの球種を軸に置くのか、初回は手探りだった。だが、アメリカの打者たちのストレートに対する反応を見て、変化球で攻めることを頭に置きながらもストレートで押すことを決めた。
「アメリカの打者を見ると振り遅れのファール、初回のヒットも逆方向へのヒットでしたので、高めのストレートも振ってくれたので、いけると思っていたんですけどね…」と川端が悔やんだのは2回表。4番ケレニックに二塁打を打たれ、一死三塁から6番カサスに2ストライクからの3球目、高めの142キロのストレートを打たれ、先制の2ランを浴びてしまう。

 「3球目は外しにいった高めのストレートが甘く入り、持っていかれました…。1球の重みを感じた場面です」と唇をかんだ。次の打者を四球に出してあと、突如の豪雨で、1時間半に及ぶ中断。投手としては難しい進み方だが、川端はこの長い中断でも集中力を切らさず、自分のピッチングに集中することだけを考えた。
「雨の中断の後に、打たれてしまうのは、よくある話なので、肝に銘じて気持ちを切らさず、全力で投げられるように心がけました」

[page_break:川端のピッチングは他の投手陣にも大きなヒントを与えた]

川端のピッチングは他の投手陣にも大きなヒントを与えた

川端健斗(秀岳館) 「15奪三振の快投を生んだ緻密なコンビネーションと強靭なメンタル」 | 高校野球ドットコム

川端健斗(秀岳館)

 またバッテリーと再打合わせをした。高めのストレートを打たれたが、ストレートは振り遅れ気味。このストレートを有効的に使うために、変化球の割合を増やすことを決めた。交わすのではなく、あくまでストレートを主体にしながらも、変化球でも攻めていく配球だ。川端は緩く落ちるカーブ、スライダー、カットボール。この3球種をうまく使った。

 すると、再開直後の2回表、二者連続三振。そして3回表にも変化球とストレートをうまく織り交ぜアウトはすべて三振。4回表には本塁打を打たれたカサスを先頭打者に迎え、最後はストレートで空振り三振。川端自身、カサスに対して意識はしていなかったが、攻める気持ちを忘れず投げ込んだ。結果、6回途中まで4失点をしたものの、15奪三振。降板直後、スタンドのファンから川端のピッチングを讃える大きな拍手が起こった。

 15三振を奪った要因について川端はこう振り返った。

「5.2回と短いイニングでこれほど奪三振を取ったのは初めてです。投げていくうちにアメリカの打者の特徴を掴めたことです。アメリカの打者は変化球に弱く、タイミングが合っていなかった。カーブ、カットボールをうまく使えたことで、打者を迷わせる配球ができたと思いますし、アメリカの打者が振り遅れ気味だったストレートも変化球をうまく使うことで、より生きるようになった」

 アメリカ打線に戦える手応えを掴んでいたのだ。川端のピッチングは、6回表以降に登板した投手、マスクをかぶった古賀 悠斗福岡大大濠)に大きなヒントを与えた。2番手・田浦文丸秀岳館)は、スライダー、チェンジアップ主体のピッチングで2.1回を投げて、5奪三振。9回表に登板した磯村峻平中京大中京)も、ストレートは130キロ後半と走りは今一つも、スライダー、フォークを使い、3奪三振。計23奪三振を記録するピッチングを見せたのであった。

 敗れはしたが、再びアメリカと対戦するとき、戦える手応えはつかんだ試合だった。そのきっかけを与えてくれたのは、川端健斗である。次なる戦いへ向けて川端はこう意気込んだ。

「今回敗れてしまいましたけど、今日の反省するところはしっかりと反省して、自分のピッチングを見直し、チームが勝てるピッチングを心掛けていきたい。またアメリカと対戦する機会となれば、相手も、自分たちの特徴を掴んでいると思うので、気持ちで負けないで投げたいと思います」

 幾度も変わる試合開始時間。長い中断時間があったとは思えない快投の裏には、決してそれに動じない強靭なメンタル。そして相手打者の傾向を掴んだ緻密なコンビネーションが15奪三振を生んでいたのだ。

(取材/文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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