Column

徳山壮磨(大阪桐蔭)、リミッターを外した魂の力投!

2017.07.30

 7月29日、[stadium]大阪シティ信用金庫スタジアム[/stadium]。大阪桐蔭履正社との一戦が行われ、8対4で大阪桐蔭が制し、決勝進出を決めた。この試合のヒーローは強打の履正社打線を4失点に抑えたエース・徳山壮磨だろう。その投球は魂の力投ともいえるほど気迫あふれるピッチングであった。

初回に安田から三振を奪った意味の大きさ

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徳山壮磨(大阪桐蔭)

 この日の徳山はまさに力での勝負だった。これまでの徳山は、常時130キロ後半の速球とスライダー、カーブを高低に投げ分けて打たせて取る投球。技巧派に見える投球だが、この日は別だった。注目が集まったのは、高校通算62本塁打の安田尚憲との勝負。徳山は安田に対して自慢のストレートを投げ込み、真っ向勝負に挑んだ。初球のストレートは140キロを計測。これを安田は見逃すと、2球目も、140キロのストレート。安田はフルスイングで真後ろのファール。このスイングに観客はどよめいた。ストレートにタイミングは合っていた。しかし徳山はそれでも迷わず、ストレートを投げ込んだ。3球目もストレートで安田は空振り三振に斬って取った。

 7割打者の安田を空振り三振に打ち取ったことで、大阪桐蔭は大きく乗った。そして徳山も大きな自信となっていた。逃げの姿勢では打ち取ることはできないと、これまでの安田の打撃データを見て実感したことだろう。2回以降の徳山は非常に逞しかった。3回表に大阪桐蔭が1点先制したものの、3回裏に3失点。履正社のハイレベルな打撃に何度も安打を浴びながらも、徳山は攻めの姿勢を崩すことはなかった。徳山は1イニングで必ず140キロ台のストレートを投げ込んでいたこと。最速は142キロだが1点を追い上げた、4回裏には、三者凡退。さらに140キロ以上を4球計測。飛ばしすぎというぐらいの出来だった。それができるのは、後ろに多くの投手が控えているというのもあったことだろう。だが、履正社相手というのが徳山の感情を昂らせているようにも見えた。

 いわゆるアドレナリンが徳山の潜在能力を引き出していた。

 そして5回表、徳山は打撃面でも見せる。なんと同点ホームランを放つ。広い[stadium]大阪シティ信用金庫スタジアム[/stadium]のフェンスを軽々と超える場外本塁打だった。その後はバックの好守備に救われた。いや徳山の力投が選手たちを必死にさせたといっていいだろう。5回表、一死一塁から4番若林将平の一ゴロ。処理が難しいバウンドを一塁の中川卓也が好処理し、併殺。6回裏に1点を勝ち越されたが、7回表に逆転すると、7回裏、安田の4回目の打席。初球の138キロのストレートを強振される。打球はぐんぐん伸びてセンター後方へ。しかしセンター・藤原恭大は冷静だった。一瞬で、落下地点に追いつき、フェンス際でジャンプ一番で好捕。8回になると、140キロを超えることも少なくなっていたが、それでも気持ちのハリは失われない。8回裏、一死一塁の場面で7番竹田祐が犠打。打球は徳山の前に転がり、徳山は迷うことなく二塁へ送球。鮮やかなダブルプレーで、相手のチャンスをつぶしたのだ。


 8対4で迎えた9回裏、一死一塁で強打の石田龍史(3年)を最後、138キロのストレートで併殺に打ち取り、徳山は大きくガッツポーズ。宿敵・履正社に完投勝利を挙げた。

 この日の徳山は140キロ以上が20球計測。最速145キロ右腕だが、これほど140キロを超えるイメージはなかった。リミッターを外して、ばててもいいぐらいという気持ちで投げ込んだのだろう。徳山が素晴らしいのは、全力で投げても、コマンドが安定していて、しっかりと投げ分けができていること。また球持ちが素晴らしく、球速以上の勢いを感じさせる。全国を回ると、140キロを計測する投手が多くなった。打たれてしまう投手、抑える投手がいるが、徳山は抑えることができる投手。春先と比べて、一段と勢いが増して直球で押すことができる回転量の高さがあり、そして125キロ前後のスライダーは手元で曲がり、130キロのカットボールのキレも良い。縦系の変化球は頻度が少なかったが、1つ1つのボールの精度が高いだけではなく、徳山はピッチングが組み立てられること。

 大阪桐蔭の歴代の右投手の中では、ボールのクオリティ、投球術の高さ、メンタルの強さを持った投手。徳山がいるからこそ、今年の大阪桐蔭は盤石な戦いができるのだろう。

 いよいよ決勝戦。相手は打力も、守備力を兼ね備えた大冠。侮れない相手である。だが、決勝戦でも気持ちのハリを失うことなく、ゲームセットの瞬間まで魂がこもったピッチングを見せ続ける。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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