Column

報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球のメリット」【Vol.1】

2017.05.20

 今春、ひとりの名将が勇退した。
94年の監督就任以来、報徳学園を春夏合わせ18度、甲子園に導いた永田 裕治氏だ。甲子園通算23勝。2002年センバツでは全国制覇を成し遂げた。最後の指揮となった2017年春のセンバツ大会では準決勝履正社に惜敗したものの、堂々のベスト4。大会終了後、13年間、部長としてチームを支えた大角 健二氏にバトンを託し、23年間に及んだ監督生活に終止符を打った。

「こんにちは!こちらの部屋へどうぞ!」
選抜大会が終了し、3週間が経過した頃、放課後の報徳学園を訪ねた。出迎えてくれた永田元監督の佇まいはまだ勝負師の香りを存分に残していた。
「僕の監督としての考え方は多くの方とは違うと思います」
そんな前置きとともに始まったインタビュー。永田氏はゆっくりとした口調で語り始めた。

23年間貫いた「全員野球」

報徳学園高等学校(兵庫)永田裕治元監督「全員野球のメリット」【Vol.1】 | 高校野球ドットコム

永田 裕治・元監督(報徳学園)

 高校野球は教育的な意味合いが大きいという思いが私の中にあったため、「どうすれば彼らを勝たせてあげられるか」ということよりも「全員で野球をする」ということにこだわり、徹底してきた23年間でした。

 私が考える「全員野球」の大前提は全員に同じ練習機会を与えることです。バッティング練習でいえば、入学間もない1年生は別にして、全員に同じ本数をローテーション制で打たせます。ノックといった守備練習もそう。全く一緒のメニューを同じ量でおこなう。そのため、全体練習内において、一人当たりが打てる本数はかなり少なくなります。

 うちの硬式野球部は誰でも入部がウェルカムということもあり、毎年部員は多いです。今春の選抜大会時は2学年で77人。昨夏は三学年で136人の部員が在籍した大所帯チームです。

 それでいて専用グラウンドはなく、ほかの部との併用。午後8時半には完全下校のため、部員の多さを考えると練習時間はけっして豊富とは言えません。

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予想だにしなかったメリットとは

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練習中の永田監督と報徳学園ナイン

 監督に就任した当初は、「全員に同じ練習をさせるような非効率なことをしていたら絶対に勝てないぞ」といろんな人に何度も言われました。人数をしぼって、うまい選手を中心に練習機会を与えるべきだと。そうしなければ勝てないぞと。

 しかし、それは全員野球とは到底呼べません。縁あって一緒に同じ釜の飯を食いながら野球をやっている仲間なわけですから、そういうやり方だけは絶対にしたくなかった。全員でやるからこそ、チームは本当の意味でひとつになれる。勝てなければ、ぼくが責任をとって辞めればいいだけのこと。そのかわり、やる以上は自分の信念に基づいてやらせてもらう。そんな思いで23年間、監督を務めてきました。

 しかし、実際、全員に同じ練習機会を与えるやり方を徹底すると、ひとりあたりの量はたしかに少なくなるのですが、それ以上のメリットがあることに気づかされました。1球当たりの集中力は増しますし、手を抜くこともなくなる。1球当たりの重み、厳しさというものが生まれることがわかったんです。

 量の不足をカバーするため、各選手が時間を作り、場所を懸命に探し、自主練習をするようになる。この方針を徹底したからこそ23年間で18回の甲子園出場を果たせた。私はそう確信しています。

■元報徳学園監督・永田 裕治監督
「全員野球を貫いて得たもの」【Vol.2】へ続く

(取材・文=服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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