ドラフト総括2016!【高校生編】投手豊作のドラフト なぜ上位指名、下位指名が分かれたのか?
今年は多くの選手がドラフト指名を受けた。まず高校生を中心に今年のドラフトを総括したい。
上位指名された投手は甲子園、U-18の活躍が大きかった
堀 瑞輝(広島新庄)
今年の高校生投手は豊作だとドラフト前の展望でも述べた。140キロ後半の速球を投げる投手が非常に多く、かつてないほどの人材の多さである。それが1位~3位、4位~6位と分かれた理由を冷静に考えると、公式戦の試合内容をシビアに見ていることが挙げられる。地方大会で敗れていても、内容、選手として将来性を最大限に評価した指名が多かった。
今回、1位指名になったのは今井達也、藤平尚真、寺島成輝、堀瑞輝。今井、藤平、寺島は今年の甲子園前からスカウトの評価は非常に高かったが、甲子園の活躍でドラフト1位が確定した感じだ。
堀は夏の甲子園が終わった段階では、左スリークォーターで独特の球筋で変化球もコントロールも良いので3位~4位ぐらいで獲れたら面白いなという評価も多かった。しかしU-18大会ではアジア制覇に貢献する快投。その投球は甲子園以上の投球であった。また、その後の国体でも148キロを出すなど調整力の高さを披露した。堀は国際大会で最も評価を上げた投手で、国際大会の活躍がとても大事であることを証明した。
ドラフトが終わったので明かせることだが、堀のもとには11球団の調査書が届いていた。調査書の多さが上位指名に直結するわけではないが、日本ハムが1位指名したのを見ると、多くの球団が上位指名として検討していたのではないかというのがドラフトの流れから分かる。
上位指名された投手の中で、特に気になったのが、地方大会敗戦ながら2位指名を受けた古谷優人(江陵)だ。古谷は左腕から最速154キロのストレートとキレ味抜群のスライダーを武器に北北海道大会で奪三振を多く量産。46イニングで50奪三振と存分に実力を発揮した。全国的に見ても古谷以上の速球とスライダーを投げる投手はいない。左腕ということも大きなポイントとなった。
甲子園出場なしの3人が3位指名された理由
才木 浩人(須磨翔風)
3位で指名を受けた才木浩人(須磨翔風)、梅野 雄吾(九産大九産)、島孝明(東海大市原望洋)。この3選手は何が評価されたのだろうか。まず才木については「ポテンシャルの高さを生かす姿勢の良さ」だといえる。187センチの長身にしてダイナミックに体を使えるフォームバランスの良さ、145キロ前後の直球。スカウトに「彼は間違いなくすごくなる!」とときめきを感じさせたのではないだろうか。
才木は夏が終わっても練習を重ね、今が一番状態が良いという。指名したのは地元の阪神で、学校に通いやすい場所にある阪神のスカウトが才木の様子を見て、上位でいけると感じたのだろう。阪神は金本 知憲監督になってから技術力が高い選手よりも、才木のような体が強くスケールのある選手を評価するようになった。その流れを上手く汲んだといっていい。
梅野については、それほど大きくはないが、それでも最速154キロのストレート、鋭い変化球など投手としての総合力の高さをしっかりと評価された感じである。また梅野の良さは、負けん気の強さだ。そういった性格的なものも評価しているのかもしれない。
そして島は「安定性」を評価されたのだろう。今年は150キロ以上を投げる投手が非常に多いが、島はこの夏にかけてかなり実戦的になった。リリーフとしては150キロ近い速球を投げるが、先発としても145キロ前後の速球、スライダー、カーブを上手く投げ分ける投手へ成長。この夏は防御率0.00で終えるなど、乱れが少なかった。
4位以降に指名された投手の顔ぶれを見ると、まだもろさがあり時間がかかりそうだなと感じる投手たちで、たとえ140キロ後半~150キロぐらい投げる投手であっても、4位以下の指名になっている投手が実に多かった。ただ、例年ならば上位で指名されてもおかしくない投手ばかりだ。今年は高校、大学、社会人とすべてのカテゴリーにおいて投手に人材が偏っていたからこそ起きた事態だといえるだろう。
また野手については以前少数精鋭と述べたが、ドラフト1位、2位で指名されるような野手はいなかった。最高順位は3位の九鬼隆平、松尾大河の秀岳館コンビと、遊撃手の岡崎大輔(花咲徳栄)、石垣雅海(酒田南)だ。野手はドラフト前からかなりシビアに見られていたが、想像以上に厳しい内容となった。評価されるのは全国大会でも実績を残し、さらに走攻守の総合力が高い捕手、または遊撃手は評価がされやすいのが分かる。石垣の場合、外野手での指名。これはもとのポジションに戻った指名ともいえる。石垣はプロを見据えて遊撃手を守るようになった。これがすべてではないが、結果的に遊撃手を守るようになったよかったといえるのではないだろうか。
来年は清宮幸太郎を中心にスラッガーの年となる。増田珠のように走攻守三拍子そろった大型外野手は評価される傾向が強いが、スラッガーは三塁・一塁・左翼というポジションを守っている選手が多いので、よほどのプラスアルファがなければ指名されるのは難しい。それでもスカウトの厳しいチェックを乗り越えて上位指名される野手がどんどん出てくることを期待したい。
(文・河嶋 宗一)
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