Column

県立伊勢崎清明高等学校(群馬)「信頼関係を大事に僅か10年で上位進出常連校へ成長!」

2016.10.03

 1915年に女子高として創立し、2005年の男女共学化に伴い野球部も創部された群馬県立伊勢崎清明高校。強豪私立が次々と台頭し、伝統校もいまだ実力を有している群馬にあって、上位進出の常連となっている同校の取り組みについてうかがってきた。

部員1名からスタートした伊勢崎清明

県立伊勢崎清明高等学校(群馬)「信頼関係を大事に僅か10年で上位進出常連校へ成長!」 | 高校野球ドットコム

練習を見つめる齊藤宏之監督(県立伊勢崎清明高等学校)

 創部1年目は部員がわずか1名しかおらず、公式戦の出場は2年目からだったという伊勢崎清明。しかし、チームを率いて6年目という齊藤 宏之監督が指導にあたるようになってから風向きが変わっていった。
「私が伊勢崎清明に来た当初は、実力があるのに結果を出せないチームだったんです。でも、監督になって2年目の12年夏健大高崎を破って県8強まで進んだことで、これまで他地域に進学していた地元の中学生たちがレギュラー組も含めて集まってくれるようになったんです」

 旧女子高ということもあり、男子生徒は約200名と全校生徒の3割ほどだが、その中の70名が野球部に所属しているという。
「部員のほとんどが伊勢崎周辺の出身で、この地区から甲子園へ行くことを目指しています。地元の選手が多いので、地域の住民の皆様からも応援していただいています」(齊藤監督)

 2年前の14年夏には群馬大会の決勝まで進出し、甲子園まであと一歩に迫った。
「その年は、新チームを結成した時の部員が25名ほどで、全員、軟式出身者でした。ただ、その中に県選抜として全国大会に出場した選手が2名いましたし、各ポジションに実力のある選手が揃っていたんです。そして、1年生大会から結果を残し、初めて中毛地区の代表になって県3位と早くから経験も積んでいたのが、夏の大会でも勝ち上がっていけた理由だと思っています」

 また、その翌年にあたる昨年も結果を残した。

「この代は逆に入部当初はキャッチボールもまともにできないような選手たちが多く、それほど実力はありませんでした。人数も少なかったのですが、『自分たちもできる』という気持ちを持って戦ってくれ、ともに県でベスト8。強豪校が相手でも、先輩たちが頑張って勝ってくれていた姿を良い手本にしてくれました」(齊藤監督)

 伊勢崎清明が毎年のように安定した好成績を残している理由はここにある。
「チームを指導していく中で最も大切にしているのは、上級生が下級生に尊敬される選手になるように促して、野球の技術も学校生活も先輩の姿から後輩が学ぶようにしていくことです」(齊藤監督)

 中井 碩人主将も「チームをまとめていくうえで、『あの時、先輩はこうやっていたな』と思い出して、『じゃあ自分たちもこうしていこう』と参考にさせてもらっています」と話す。また、「3年生の岡本 卓也さんや原 一真さんはすごい選手でしたが、学校では掃除などもしっかりやっていたので、自分も生活面からきちんとしていかなければいけないと感じています。技術面では、肩を強くするために上腕三頭筋を鍛えるトレーニング法を先輩から教えてもらったので、この冬はしっかりと鍛えていくつもりです」

[page_break:信頼関係を築くには褒めることが大切]

 投打の中心である霜田 健太選手も「夏のエースだった岡本さんに憧れていて、野球の技術はもちろん練習に取り組む姿勢も良かったですし、勉強もしっかりされていました。今は自分が最上級生になって後輩にいろいろとアドバイスをすることも多いですが、1年生の時に当時の3年生から教えてもらったことを忘れずに、学校では先生から信頼される存在になれるように意識して生活しています」

信頼関係を築くには褒めることが大切

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霜田 健太選手(県立伊勢崎清明高等学校)

 このような関係性を作るために齊藤監督がやっているのは選手を褒めること。「良いことは、みんなの前で褒める。悪いことは叱る。当たり前のことですが、特に野球以外の部分をよく見てやることが監督の仕事だと思っています」
伊勢崎清明には昔気質の厳しい上下関係はなく、先輩と後輩の関係が良いバランスで成り立っているのだ。

 月水金は16時から、火木は17時から練習を行っている伊勢崎清明。全体練習が終わってからも、選手は各自で個人練習に励んでいる。「練習後は場所の取り合いで、自由にやらせておくといつまでも練習しているので、今は21時までに終わらせるように言ってあります。選手には主体性を持ってほしいので、この夏はポジションごとに練習内容を考えさせたこともあったのですが、あるポジションが良い練習を始めると他のポジションも真似したりして刺激を与え合っていたと思います」(齊藤監督)

 霜田選手も「選手が自分で考えて練習するのが伊勢崎清明の良いところ」と話すように、自主性を重んじる考えはチームに根付いているようだ。

 また、毎週水曜日は投手と打者に真剣勝負をさせるなど、実戦形式のバッティング練習も多い。「練習時間が限られているので、バッティング練習をしながら守備練習も兼ねてやっている感じです。ノックをするよりも試合形式の打撃練習で守った方が最初の一歩が鍛えられると思いますし、トスバッティングでも守っている選手は打球をキャッチしたらすぐに投手へ。投手もボールを渡されたらすぐにバッターに向かって投げ、ボールを捕ったらすぐに投げるという守備の基本を徹底させています」(齊藤監督)

[page_break:夏へ向けての課題]

来年へ向けての課題

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中井 碩人主将主将(県立伊勢崎清明高等学校)

 しかし、今秋の群馬県大会では2回戦で敗退。「夏の群馬大会はベスト4まで勝ち上がったので、その分、新チームの始動が遅れ、秋の大会はまだ仕上がっていない状態で臨むことになってしまいました。ただ、ピッチャーの霜田は制球力がありますし、守備陣も安定しているので、あとはどれだけ打てるか。今年の群馬には好投手が多いのですが、その中で5点を取れる打線を作っていきたいと考えています」(齊藤監督)

 打撃力アップは、当然、選手も念頭に置いている。「連続ティーやロングティーで多い時は、1日500スイングほどしています。代々、伊勢崎清明はチームバッティングで勝ってきましたが、それでもある程度は打たなければいけないと思うので、春までにレベルアップしていきたいです」(中井主将)

「秋は甘い球を逃してしまって悔しい思いをしたので、チャンスで打てるようにミート力を上げて三振しないバッターになりたいで」と話す霜田選手。守備ではエースも務めることになる。「今、球速はMAXで139キロなのですが、来春には制球力を保ったまま142~143キロは出るようにしたいです。また、メンタルがまだまだ弱いと思うので、この冬はスタミナの向上も兼ねて長い距離を走りたいと考えています。走るのは得意ではないのですが、チーム全体のランメニューでもみんなで声を出して盛り上げていきたいですね。地味な練習もイヤイヤやるよりは楽しくやった方が身になると思いますから」

 齊藤監督は「攻守ともに、選手たちにはいろんな経験をさせてあげたい」と話す。「同じ無死一二塁でも相手投手や守備のシフト、試合展開などによってバントをするべきなのかバスターをするべきなのか変わってきます。ですから、引き出しを多く用意して春を迎えられるようにしていきたいです」

 部員1人から始まった伊勢崎清明はまだ創部12年目と歴史は浅いが、先輩が後輩の模範となり、後輩が先輩を敬うという素晴らしい伝統を築きながら、チーム一丸となって甲子園出場を目指している。

(取材・文=大平 明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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