3年生座談会 県立船橋芝山高等学校(千葉)「快進撃は1回戦の9回表から始まった」 ・後編
前編では不安ばかりの夏前の様子を振り返っていただきました。後編では奇跡が起きた夏の大会に入っていきます。
1回戦敗退のピンチを乗り越えて、快進撃が始まる
金城 貴也(県立船橋芝山高等学校)
――夏初戦の相手は2015年春の県大会ベスト4まで進出したこともある市立松戸でした。嫌な相手だったと思います。
真鍋:実は市立松戸と5月に練習試合を計3試合をやっていて、すべて最悪な形で負けているんです。すべてエラー絡みで負けていてイメージが悪かったので、対戦が決まった瞬間、市松かよ!と思いましたね。
――確かに嫌なイメージがありますね。夏の初戦では、9回表まで1対3で敗れていました。
真鍋:正直終わったな思いました(笑)。埜下(翔真)の四球が出てから、稗田(陽介)が打って、追い上げてきて、誰が打って同点だっけ?
渡部:2対3にしたのが諸節だね。4対3にしたのが、エラー絡みですが、金城。5対3にしたのが原田でした。
――凄い逆転ですね。逆転の瞬間、テンション上がりましたか?
真鍋:めっちゃ上がりましたね!なぜか僕たち3年生より2年生が泣いていました(笑)。最後、良い感じで終わったよね。
大塚:全部ニゴロで終わりました!
――凄い試合でしたね!次は西武台千葉。どんな印象を受けましたか?
真鍋:西武台千葉は、春の地区予選で流通経済大柏に勝利して県大会に勝ち上がっているのですが、僕らは流通経済大柏と練習試合をしてボコボコに負けているんです。そこに勝っているのだから、これはまたやばいという話になって(笑)。でも5回表、奇跡的に僕らが2点を先制しました!
大塚:打ったのは真鍋なんです!
――真鍋君、投打で大活躍ですね!
真鍋:あれは本当に奇跡ですよ。
――西武台千葉の投手は結構良かったと聞いています。
大塚:そうですね。2人とも良かったです。最初からエースが投げていたら負けていたかもしれません。
真鍋:確かに佐伯君は速かった。僕が打ったのは2年生の関根 拓海君ですね。佐伯君が出てきてから殆ど打てなかったですね。
――でも西武台千葉も良い打線だと思うんですが、真鍋君はどう抑えようと思ったのですか?
真鍋:高めに行ったら打たれるので、低めに徹底しようと思って。低めに決まって、打たれなかったですね。
渡部:あの日の真鍋の調子だと打たれるイメージはなくて、低めにしっかりと投げれば、内野ゴロで打ち取れるイメージができていましたね。
――2対1とリードして、9回表にも1点を追加しています。
渡部:9回表なんですが、満塁でインターフェア(打撃妨害)が起こりました!1回戦から、相手のエラーから点を取ることがあって、ついているなと感じました。審判のジャッジもこっちに向いている感じがして、何かいけるんじゃないかという気持ちになりましたね。
千葉経大附戦は負けるべくして負けた
諸節 凌平(県立船橋芝山高等学校)
渡部:大髙は初めての夏のマウンドで不安があったと思うんですけど、ストレートには非常に勢いがありましたし、かなり吠えていて気合いが入っていたので、これはいけるかなと思って。また四球も少なく、一番大きいと思いました。
――真鍋君は大髙君を見てどう思いましたか?
真鍋:完封されて、これやばいなと思いましたね。出番があるかなと(笑)
――この試合、金城君も打っていますね。
金城:それまであまり打てていなくて、たまたま甘い球がきてなんとか打てた感じですね。
――この試合、また相手にミスがあったんですよね。
大塚:普通の内野ゴロだと思ったら、ミスが飛び出ました。ついているなと思いました。
――4回戦の匝瑳戦では、6対1で勝利しています。スコア上で見ると、投打がかみ合った印象を受けます。
真鍋:いや、それが結構苦しい試合でした。初回に1点を取られて、ベンチから返って来た時、本多監督から「おいここで負けるのか!」といわれました。その後、全然点が入らなくて、5回裏になんとか逆転した試合ですね。
諸節:その時は僕もなんとか打てた試合でした。
――そして5回戦で松戸国際と対戦です。強敵だったと思います。
大塚:打撃が凄いチームでしたので苦戦すると思いました。
真鍋:1点ずつ取られてきて、0対2で負けている状態で、6番花野井のホームランで逆転して、そこから点取り合戦になっていましたね。
――ベスト8が決まったときの心境をお願いします。
大塚:ベスト8に来た実感は全くなかったですね。それはみんな同じだと思います。
――準々決勝の千葉経大附戦ではどんな戦いをしようと思いましたか?
大塚:強いというのは分かっていたので、しっかりと守って、そこから流れを作ろうと思っていたのですが、守備から崩れてしまいましたね。千葉経大附は4番坂巻 尚哉君が凄かったです。
渡部:坂巻君はどこに投げても打たれる感じしかしませんでした。満塁になってエラーが出てしまって失点と嫌な流れでした。
――この試合、2回表に渡部君のスリースクイズで1点を返しています。
渡部:ほっとしました。夏前の練習試合ではバントのスランプに陥っていて、10回やって、すべて失敗していたんです。でも自分が打席に立っても、千葉経大附の千葉経大附中村 亮太君は僕では打てないレベルの投手。打てるとしたら、振り遅れの一塁手の頭を超えるしぶといヒットしかなかったんです。僕ができることは限られているので、この場面、失敗したら二度とチャンスが回ってこないと思っていたので、この打席では必死にボールにくらいつきました。真っ直ぐがきてくれたのでやりやすかったですね。
後輩たちにはAシードを破る存在になってほしい
座談会の様子(県立船橋芝山高等学校)
――なかなか点が取れないなかで、千葉経大附に追加点を取られる試合展開でした。
真鍋:安打は出るんですけど、走者を溜めてからのあと1本が出なかったですね。
渡部:千葉経大附は下位打線でも甘く入ったら長打は打ちますし、走者をためてから、エラーで失点するケースが多かったのは反省点だったかなと思いました。
――ベスト8に終わって改めて感想をお願いします。
大塚:準々決勝の試合内容は負けパータンというか、練習試合で負けているような内容でした。負けるべくして負けたかなと思いました。大会を振り返ると、ここまで打てたのは奇跡的でしたね。
真鍋:夏の大会に入っていきなり打てるようになったんです。それは応援が大きかったと思います。試合をするごとに人が増えてきて、みんなの声が聞こえるぐらい出ているので、それが大きな力になったと思いますね。
――改めて高校3年間はどうでしたか。
大塚:つらいことばかりで長く感じました。
真鍋:そうかな。俺は結構早く感じたけど。
大塚:いやいや、終わってみれば早く感じるけど、現役中はだいぶ長く感じたよ。嫌だと思うことばかりでした。
――いろいろとあると思いますが、何でしょうか。
大塚:勝てない時期が長かったことですね。朝早くきて練習をして、そして練習試合がある日も、試合が終わってからも練習をしてと、苦しい練習をしているのに、結果に結びつかないところが一番苦しかったですね。
金城:うちは勝てない試合があったときは走ることが多いのですが、これで本当に走ったら打てるのかよ!といつも思っていて、走ることが一番の苦痛でした。
真鍋:自分はケガをしているときがつまらなかったですね。昨年ですけど、指に打球が当たって骨折しました。大会前にも指が折れたことがあって、本当にその時期は走ることしかなかったので、つまらなかったですね。
大塚:ただ大髙が練習試合で先発として投げる機会が増えたので、結果的に良かったかなと思います。
渡部:真鍋は打線の中心ですし、真鍋がいない時に、打線としてもどうするのかを経験できたことも、振り返ると良かったかなと思います。
――いろいろな出来事が奇跡につながったんですね。ここまでの快進撃はなかなかできることではありません。何が大事だと思ってやってきましたでしょうか。
渡部:周りを盛り上げることではないかと思います。本多先生も話されていたのですが、普段の試合からベンチの雰囲気がシーンとしていたら気持ちの面で負けてしまう。場を盛り上げるには、些細なことでも喜んだり、盛り上げることが大切だと思っています。
――夏の大会はどう場を盛り上げていくかということも大切なんですね。最後に後輩たちに託すものがあれば、一言お願いします。
真鍋:僕たちもそうですけど、うちは毎年、Aシードに負けているんですよね。今年の千葉経大附もそうでしたし、去年も専大松戸。ぜひAシードを破って一泡吹かせてほしいと思っています。
渡部:投手に頑張ってもらいたいですね。2年生は前チームの公式戦では投げたことがないので、経験が少ないと思いますが、頑張ってほしいと思います。
話を聞いていて、彼らは非常に記憶力が良く、どの試合についても、こうだった、こうだった、と瞬時に話をしてくれる。そして5人ともとにかく仲が良い。このチームワークの良さが快進撃を生んだといっていいだろう。
(取材・写真=河嶋 宗一)
■関連記事
【僕らの熱い夏2016 特設ページ】