試合レポート

北海vs秀岳館

2016.08.20

1回表の攻防が勝敗を分けた!秀岳館、痛恨の敗戦!

 秀岳館有利の下馬評を北海が見事に覆した。1点差で幕を閉じた今、勝敗を分けた分水嶺はどこにあったのか考えると、「1回表の攻防がすべて」と言い切っていいと思う。

 1回表、秀岳館の打線の圧力を北海の先発・大西 健斗(3年)はまともに受けた。実力上位校に逃げまくれば相手はかさにかかって攻めてくるのは当然。先頭の松尾 大河(3年)に右中間を破る三塁打を打たれると、大西は2番原田 拓実(3年)に逃げまくって四球を与え、早くも無死一、三塁のピンチを迎える。

 ここで秀岳館はかさにかかろうとするが、それが裏目に出る。二盗を試みた原田に対して、北海のキャッチャー・佐藤 大雅(2年)は2.20秒という平均的速さながらドンピシャのコースに投げてこれを殺す。一死三塁に局面は変わって、3番木本 凌雅(2年)の3球目がワンバウンドになり、これをキャッチャーの佐藤大が後ろに逸らすと三塁走者の松尾は猛然とホーム生還を狙うが、佐藤大からベースカバーの大西にボールがわたって間一髪アウト。

 無死一、三塁が、相手投手が3球投げただけで2死走者なしになるという不条理。ここで木本がヒットを放つので、普通に考えれば2、3点入っていてもおかしくないが、4番九鬼 隆平(3年)が3ボールからレフトライナーに倒れ無得点に終わってしまう。1回表の攻防がこの試合の勝敗を分けたと言いたい気持ちがわかってもらえると思う。

 大西が2、3回を三者凡退に抑えると、3回裏、今度は北海が攻勢をかける。1、2回にも満塁の場面を作って追い込んでいるので、北海の「秀岳館から受けるプレッシャー」はこの時点でだいぶ軽減していたと思う。

 この3回、北海は先頭の佐藤大がストレートの四球で歩き、5番川村友斗(2年)が初球をセンター前に弾き返して無死一、二塁。6番のバントが投手フライ、7番打者が三塁ゴロで倒れた時点でチャンスは潰えたと思ったが、8番の大西が2ボール1ストライクからの低めストレートをとらえ右中間に三塁打を放ち2点を先制、さらにこの大西を9番鈴木大和(2年)が三塁内野安打で迎え入れ、北海は待望の先取点を取る。

 この試合で北海が放った内野安打は5本もあった。秀岳館が圧倒的優位の下馬評を背に戦いながら拙攻を続け、さらに打ち取ったと思った打球がヒットになるというのは精神的にも辛かったと思う。

 5回の北海の攻撃ではノーアウトから大西が四球で歩き、二死後、二盗を企図すると秀岳館の二番手・中井雄亮(3年)の投げた球が暴投になって局面は二死三塁になり、1番小野雄哉(3年)がレフト前に弾き返して4点目の走者を迎え入れる。

 強烈なストレートパンチを顔面に受けるというダイレクトな痛みではなく、ボディに7分程度の力で打たれ続けるという痛み、とでも例えたらいいだろうか。

 秀岳館はというと2~6回まで一度も走者が得点圏に進めず、強いライナーが内・外野手の正面を突くことが3回もあった。とくに九鬼は第1打席がレフトライナー、第2打席がサードライナーという不運。

 それにもめげず九鬼は第3打席で先頭打者として右中間に二塁打を放ち、このときの二塁到達タイムが俊足と言っていい7.98秒。第4打席の8回には二死二塁でライト前に強烈なヒットを放ち、これをライトが後逸している間に自身もホームインしてスコアを3対4とする。ちなみに、このときのベース1周は全力疾走と認めていい14.99秒。九鬼を俊足と思ったことが一度もないので、この2つの走塁には心底驚かされ、九鬼の敢闘精神を見事と思った。

 しかし、反撃はここまでが精一杯。どう考えても1回表の拙攻が尾をひいたとしか思えない展開で、秀岳館にしてみれば痛恨の敗戦と言っていいだろう。

(文=小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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