試合レポート

早稲田実業vs国士舘

2016.07.18

早稲田実業ナイン、今大会最後の八王子球場で成長した姿を見せる

 早稲田実業vs国士舘という好カードもあって、八王子球場は試合開始2時間前から多くの観客が詰めかけ、内野席は満員。通路席にもほぼ人がいてどこが通路なのか分からない状態。外野席もほぼ入り、なんと観客数は1万人!とてつもない規模となった。誰が注目といえば、もちろん高校通算52号本塁打を放っている清宮幸太郎である。

 その清宮の第1打席は相手投手がかなり警戒していたといったのもあるのか、いきなり死球。二死一塁。これでうまく切り抜ければよかった国士舘だが、野村大樹の時にエラーで二死一、二塁にすると、5番工藤航輔が絶妙な中前適時打を放ち、1点を先制する。

 そして3回表、一死二塁の場面で打席が回った。2ボールからだった。国士舘バッテリーは本塁打を打たせまいと外角低めを投げようとしたが、少しだけ内よりにきた。振り脱いだ打球は高い放物線を描いて、ライトスタンドへ消える2ランホームランとなった。これで高校通算53号。打った瞬間、本塁打と分かる豪快な当たりだった。これで今大会、3本目と去年と違い驚異的なペースで本塁打を積み重ねている。

 この本塁打はとても大きなものだった。このホームランで先発の吉村優(3年)も楽になったのか、すいすいと打者を打ち取る。その投球ぶりは去年のエース・松本晧(3年)を思い出させるものだった。

 球速は130キロ前後とそんなに球速が出るわけではない。徹底としたコントロール重視のピッチング。そこには三振を奪ってやろうという欲はない。内野ゴロに打たせて取り、結果的に三振を取れればという投球だ。ヒットを打たれてもシングルならばOKという割り切りもできているように実感させた。立ち上がり、一死一塁と走者を背負ったが、併殺に打ち取った。そこから楽になったのであろう。たびたび走者を出しても慌てる様子は全くなかった。強打の国士舘打線を7回まで無失点の投球であった。


 7回裏、橘内の適時打で1点を追加し、4対0とすると、8回表からは背番号10の服部雅生(2年)が登板。服部は9回表に無死一、二塁のピンチを招くが、これも併殺に打ち取り、二死にすると、最後は一ゴロに打ち取り、試合終了。勝利の瞬間、ガッツポーズを見せた服部。3か月前、大逆転負けを喫し、失意の中、[stadium]八王子球場[/stadium]を後にした早稲田実業ナイン。そして今大会、[stadium]八王子市民球場[/stadium]でプレーするのはこれが最後。

 清宮は10打数6安打とまさに敵なしの結果を残しているが、チャンスメイク・チャンスメーカーに徹し、安定した守備を見せる金子銀佑、思い切りの良い打撃スタイル、俊敏な動きを生かした二塁守備が光る橘内、勝負強い打撃と堅実な守備を見せて存在感を示す工藤、自分の投球を確立した吉村、春から粘い投球ができるようになった服部といった主力選手がそれぞれの持ち味を見せていた。今日のような我慢強い戦いができたのは大きな成長点といえる。次は聖地・明治神宮球場で、どんなプレーを見せるのか、楽しみだ。

 今日の国士舘だが、自慢の打線が影を潜めた。振れないというより、空回りをしていて、自分の狙い球を絞り切れなかった。これは国士舘だけの話ではない。去年の西東京大会、甲子園でも、早稲田実業と対戦する強打のチームが打てないで敗戦することがよく見られた。今年もそんな現象が起こっている。プレッシャーなのか、何かは分からない。この目に見えない重圧を打破して、自分たちの野球ができたチームが早稲田実業と素晴らしい戦いを見せてくれるはずだ。

 

【試合経過速報ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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