享栄vs大府
昭和の匂いが漂う中で享栄、古豪復活へ着々と…
享栄・成田君
古豪復活を目指す享栄は、昨秋には東海大会出場を果たしているが、今大会も確実にベスト8まで勝ち上がってきた。その享栄に、県内では公立の雄として実績のある大府が挑む形になった。
大府はエース浅野君の評判がいいが、この日は背番号18の左腕八木君が先発。野田 雄仁監督は、「このところ、ずっと調子がよかったので、この大会はどこかで投げさせたいと思っていた」と言う八木君に機会が回ってきたのだ。その八木君、いきなり松波君に安打されたものの、併殺で切り抜けたかと思ったら、今度はシュアな村西君に打たれて、という不安さをのぞかせたものの、凌ぎながら投げていくうちに何とかまとまっていった。
享栄は右横手投げでスライダーの制球がよくクセ球もある成田君が先発。コーナーを丁寧について低めに集めていくタイプだ。
先制したのは大府で3回、二死から1番杉谷君が右翼へ運んでソロ本塁打。逆風だったが、文句なしの一発だった。成田君も、ちょっと簡単にストライクを取りに行こうとしてしまった失投だったかもしれないが、その失投を逃さず打った杉谷君の集中が見事だったと言えよう。この杉谷君に対しては、野田監督の評価も高く、「リーダーシップもあって、チームをよくまとめていってくれています。学校の成績もよくて、校内の評判もいいんですよ」と、べた褒めである。そんな杉谷君の一発でムードの盛り上がる大府のはずだった。
しかし、享栄も負けていなかった。4回すぐに、内野安打とバント、暴投で一死三塁とすると、7番早川君が中前打して同点。そして6回、やや疲れも出てきたかなという八木君に対して、6番飯田君が左翼へ二塁打すると、バントで一死三塁となり、途中からマスクを被っていた前田君が起用に応えて中越二塁打で逆転。さらに成田君も右前へ落して一三塁。ここで、野田監督は八木君を諦めて大西君を投入したが、二死二三塁から2番馬渕君が左中間へ二塁打して2者が帰った。
大府・越野君
8回にも享栄は、3人目の越野君から押し出しで追加点を奪った。そして、4回以降、成田君は8回に打たれた杉谷君の安打一本のみに抑えていく好投で、そのまま逃げ切った。
柴垣 旭延監督は、「今日は低めにコントロールして、よく投げてくれました。ホームランは打たれたけれども、100点あげていいんじゃないかな」と褒めていた。また、4回途中からマスクを被り、初打席では逆転となる二塁打を放った前田君に関しては、「こうして使った選手が期待に応えてくれると嬉しいね。チーム内でもいい競争になっていくと思いますよ」と喜んでいた。
そして、71歳のベテラン監督は、「ベンチでスコアボード見たらね、ウチもそうだけれど大府とね…昔強かった同士で、こういう舞台で戦えて、懐かしかったですね」と、久しぶりの熱田球場での大会上位のカードをしみじみと語っていた。「昔の話も、選手たちにもしますけれども、今は、どこの私学も強化してきていますから、ウチなんかも、今は来てくれている子の中で戦わなくてはいけませんからね」と、時代の流れの中で、高校野球も少しずつ変化をしていることも実感しているようだ。それでも、変わらぬ「KYOEI」のユニフォームを着る孫のような選手たちに、ひときわ愛情を感じているようである。
また、一方の雄・大府は今年も100人を超える部員に膨れているという。野田監督は、「まだ、チーム作り途中ですけれども、例年以上に選手たちは考える野球に対して自主性をもってできていると思いますよ」と、ベスト8まで進出して夏のシードを得たことも含めて、夏へ向けて手ごたえは感じているようだ。
(文=手束 仁)
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