Column

清宮幸太郎(早稲田実業)の打撃の秘密は左腕の使い方にあり

2016.03.27

 現在の高校野球界のスターである清宮幸太郎。3月25日の練習試合で、高校通算27号、28号本塁打を放ち、改めて凄さを見せつけた。今回は清宮の特異な技術を紹介するとともに、この冬の取り組みにも迫った。

清宮は普通の右投げ左打ちの打者と比べて左腕の使い方が秀逸

清宮幸太郎(早稲田実業)

 「右投げ左打ちの選手はここ10年の動きを見ると、敬遠されている傾向にありますけど、清宮君の場合、それは関係ないんじゃないですか」と語るのが聖光学院の斎藤監督だ。それにしても清宮の当たりは凄かった。

 聖光学院戦で放った高校通算27号本塁打。低めのストレートだった。打った瞬間、外野手が一歩も動けない豪快な当たりだった。この試合、本塁打が多く出ていたが、他の選手は「行きそうかな、行きそうかな、入った」という感じだが、清宮の場合は打った瞬間、「文句なし!」と確信できるものである。聖光学院の斎藤監督は特にバッテリーに指示を出していないようだが、
「全国トップクラスの清宮君がどんなものか、試してきなさいと話しました。攻め方を見ると、結構厳しくついていたのではないでしょうか」
確かに打席を振り返ると、聖光学院戦の第2打席で詰まりながらもセンター前ヒット。この打席を見て、斎藤監督は、
「彼が凄いのは右投げ左打ちながら、左肘の使い方が上手く、左脇がなかなか出てこないんです。普通の打者では早く回ってしまうんですけど、彼の場合、綺麗に畳むことができていて、インコースに対しても厳しいコースが来ても押し込んで打ち返せる強さがあります」左腕の使い方を評価していた。

 右投げ左打ちの選手は、スイングするときに左脇が空いてしまい、ロスのあるスイングになってしまうことが多い。斎藤監督によると、「右打者は右ひじを畳んでインパクトに持っていきやすいのですが、特に右投げ左打ちの選手は左肘が空きやすい。右利きですから、左が上手く使えないのは仕方ないことなのですがただ、清宮君は右利きであの技術力の高さですからね。潜在的に左利きなのか。それともご家庭でそういうトレーニングをやっているのかもしれませんね。私は甲子園U-18国体で清宮君を見てきましたが、やっぱり別格だと思いました」と斎藤監督も脱帽の打棒を見せた。

 今まで清宮の打撃を見ていくと、リストが早く返りすぎず、上手くボールを手元まで呼び込んで打っていた。その時、打つ直前の左肘の動きを見ると引っ張るか、逆方向に打ち返すか、その打ち分けができていたのだ。これは特異な技術といっていいかもしれない。

 2本とも豪快な当たりだったが、それは昨秋、しっかりとトレーニングした影響だと語る。「体重はそんなに変わっていないと思いますけど、筋力量を上げることを意識していろいろやってきました」と意識高くやっている。また筋力トレーニングをすると、体が重くなってしまうのではないかと懸念する選手もいるようだが、清宮はそれを否定し「それは重くなるようなトレーニングをやっていると思いますし、僕はそうならないようなトレーニングをしてきました」とさらりと答えた。取材時間に限りがあったため、ではどんなトレーニング、どういうところを意識してやってきたのかは伺えなかったが、今年の清宮は走攻守の動きがだいぶシャープになっているのを見ると、それはできたといえるだろう。

 清宮はスイング軌道自体、リトル時代から変わっていない。コンパクトなスイングでボールを捉える中でも、筋力アップにより、さらにボールを飛ばす力がついてきている。1年の時から金属バットは彼にとって鬼に金棒だと思っていたが、その思いはより強くなっている。

 初戦は4月2日。去年よりも凄くなった姿を多くのファンに見せてくれるはずだ。

(文=河嶋 宗一


注目記事
2016年度 春季高校野球大会特集

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.02

【茨城】常総学院、鹿島学園、水戸一、つくば秀英が4強入り<春季県大会>

2024.05.01

【神奈川】関東大会の切符を得る2校は?向上は10年ぶり、武相は40年ぶりの出場狙う!横浜は6年ぶり、東海大相模は3年ぶりと意外にも遠ざかっていた春決勝へ!

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.05.02

【長野】松商学園、長野日大、東海大諏訪などが県大会出場へ<春季県大会支部予選>

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【長野】上田西、東海大諏訪、東京都市大塩尻が初戦突破<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?