試合レポート

東邦vs関東一

2016.03.22

投打に光った東邦・藤嶋 健人の伸びしろとは?

東邦vs関東一 | 高校野球ドットコム

藤嶋健人選手(東邦)

 超高校級のバッティングとピッチングが注目されている東邦の先発・藤嶋 健人(3年)がその実力をいかんなく発揮した。

 プロ野球のスカウトはほとんど「プロでやるならバッター」と口を揃えるが、8回3分の2を投げて被安打1、奪三振11のピッチングを見ればピッチャーとしての素質にもきちんと向き合わなければいけないと思う。

 この日のストレートの最速は自己最速に4キロ及ばない142キロ。130キロ台後半が多かったにも関わらず、ストレートの角度と打者近くでのキレが素晴らしく、「130キロ台後半」が物足りなく見えなかった。

 体格は176センチ、80キロと平均的。しかし、ストレートも変化球も真上から腕を振って投じられるのでボールの角度が素晴らしい。さらに左右打者に関係なく、鋭く内角をえぐってくるので打者は容易に踏み込めない。内角のあとの外角、そのセオリーはわかっていても内角球の残像があまりにも強烈でどうしても腰が引けてしまい、外角球に対して腰を据えたバッティングができないのだ。

 高低の攻めも見事だ。
変化球は120キロ台のスライダー、100キロ台のカーブ、110キロ台のチェンジアップと、真上から投じられるストレートも交えて高低の投げ分けが行われ、ときには意図的なボールが高めに投げ込まれ、これを振らされるバッターが目立った。

 緩急の攻めは主にカーブを交えて行われる。1、2球がカーブで3球目がスライダーという配球は4回、3番の山室 勇輝に対して行われた。カーブが2球くれば次はストレートというのが打者の読みだ。山室はこのスライダーになす術もなく二塁ゴロに倒れた。自身もバッターとして非凡な力を持っているので、打者心理をよく理解していると思った。


 ピッチャーとしてのフィールディングもうまい。
2回には1死一、三塁というこの日唯一のピンチを迎え、8番打者の一塁方向へのバントが小飛球になるとこれに楽に追いつき、帰塁できない走者を尻目に一塁に送球して併殺。5回には先頭打者にヒットを打たれるが次打者のバントを処理して一塁走者を二塁に封殺。一塁けん制がうまいため走者が十分なリードを保てないことも関係しているのだろう。

 バッティングは1回裏、2死三塁の場面で2ボール1ストライクからの3球目のスライダーを捉えて先制タイムリーを放っている。昨年秋の明治神宮大会を見たときも思ったが、藤嶋は思い切りがいい。

 明治神宮大会1回戦の秀岳館戦(試合レポート)では第3打席、1ボールからストレートをレフト中段へ2ラン、第4打席は初球113キロスライダーをレフトスタンドへ2ランを放っている。早いカウントから積極的に狙い球を絞って打っていくのが藤嶋流で、その基本線はこの甲子園でも健在だった。

 スカウトの評価はおおむね高いようだが、あるスカウトは足が遅いのがネックだと指摘する。このヒットのときの一塁到達は5.22秒。ヒットは多くの打者が流して走るので仕方がないが、5秒以上かける打者走者の走塁は感心しない。

 第3打席の二塁ゴロのときは4.61秒とやはり速くない。走る能力が低いのか、4番打者のため走ることがチームから求められていないのか。もし後者なら、藤嶋に今求められているのが「志」だということを理解して、もう少しきちんと走るべきである。藤嶋の能力が高いための要求で他意はない。

東邦vs関東一 | 高校野球ドットコム
注目記事
第88回選抜高等学校野球大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.10

【京都】昨年秋2回戦敗退の鳥羽が京都国際と対戦、昨年秋Vの京都外大西は西城陽と対戦<春季大会>

2024.05.10

【香川】昨夏甲子園Vの慶應義塾を招待!春4強が迎え撃つ<招待試合>

2024.05.10

【宮城】5大会連続V狙う仙台育英は名取北と白石工の勝者と対戦、東北とは同ブロック<春季大会組み合わせ>

2024.05.10

【和歌山】2季連続Vを狙う耐久と10大会連続決勝進出を狙う智辯和歌山が対決<春季大会>

2024.05.10

【大阪】「2強」撃破の大阪学院大高が決勝まで突き進むか、興國は45年ぶりの決勝進出に挑む<春季大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【関東】山梨学院と常総学院がそれぞれ優勝、出場校の対戦が確定<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>