【第88回選抜大会】プロ注目投手だけではない…注目の好投手たちを一挙紹介!
全国大会はその年のトップクラスの選手が集結する。今年も左右の好投手がずらりと揃った。大会が始まればドラフト候補に挙がるような投手が注目される傾向にあるが、その他にもぜひ試合で注目してほしい投手が多くいる。そこで、今大会で注目の好投手たちをピックアップ!今年はどんな投手がいるか、紹介していきたい。
今年の選抜を代表する4人の右投手
髙田 萌生(創志学園)
右投手は高田萌生(創志学園)、山﨑颯一郎(敦賀気比)、藤嶋健人(東邦・2016年インタビュー)、菊地大輝(東海大甲府)の4人が注目株になりそうだ。髙田は最速150キロのストレートを投げ込むが、注目されているのは松坂 大輔とフォームが似ていること。確かに大きく振りかぶってからフィニッシュまでの一連の流れが本当によく似ている。スライダー、チェンジアップの精度の高さなど、完成度でいえば今年の高校生右腕でもトップクラスで、登板する試合はかなりの注目度になりそうだ。選抜では自慢のストレートで圧倒する投球を見せられるか注目してみたい。
そして山﨑は昨夏の甲子園(花巻東戦・試合レポート)で144キロを計測。ただそれよりも注目なのは、滑らかな体重移動が目立った投球フォームと縦割れするカーブだ。このまま体作りが上手くいけば、さらに凄味が増した本格派右腕になるのではないかと期待されたが、その後はなかなか100の力を出せずに苦しんでいる。
敦賀気比の東 哲平監督も、「チームのカギは山﨑が握っている」と語るように、100パーセントの力を発揮できたとき、とてつもないボールを見せてくれるという期待感を持った投手である。選抜で恵まれた才能を開花することができるか。
藤嶋は投打で注目されている。投手としての藤嶋は、今年の高校生投手の中で投球術のレベルはトップクラス。先輩の丸山 泰資(東海大)から教わったカットボールを、打者の内角へしっかりと攻めることができるようになった。さらにカーブを用いての緩急が使えるので、140キロ前半でも球速以上に見せる投球ができる。率いる森田 泰弘監督も「藤嶋はインコースの使い方が上手くなった」と評価するように、選抜では、投球の上手さに加え球速面でも見せることができれば、投手として高く評価されそうだ。
菊地は、最速146キロのストレートと130キロ台のカットボールと、速球、変化球のスピードが高校生としてはずば抜けている。あとはいかにストレートを速く見せたり、緩急を使ったりといった、投球の幅を広げられるかにかかっているだろう。このオフはしっかりと体を絞った。同学年の松葉行人の急成長や、中学時代の先輩だった望月惇志(横浜創学館)がプロ入りしたことに、かなり刺激を受けている様子だった。「昨年の甲子園は全く良い投球ができなかった。この選抜こそ、ベストピッチングしたい」と意気込む菊地は、一段と成長した姿を見せることができるか。
関東・関西を代表する左腕のパフォーマンスも見逃せない
高山 優希(大阪桐蔭)
左腕は、関東、関西を代表する投手が登場する。関東では早川隆久(木更津総合・2015年インタビュー)、鈴木昭汰(常総学院)、高橋昂也(花咲徳栄)、関西では高山優希(大阪桐蔭)の4人に注目だ。早川は開きが遅く、球持ちが良いフォームから繰り出す140キロ前後の速球は球速以上に勢いを感じさせ、変化球も多彩で、関東大会まで圧巻の投球だった。だが、投球を見ると詰めの甘さがあり、そこを突き詰めていけるかが課題といえる。
鈴木はクレバーさと感情豊かなところを兼ね備えた技巧派左腕。関東大会1回戦で、強豪・横浜打線を1失点に抑えた投球は見事だった。スライダー、シュート、チェンジアップと球種は多彩だが、打者に応じて押したり引いたりすることができるのが強み。投球だけではなく感情をうまくコントロールできる投手で、ピンチの場面では常に冷静、抑えたときは大きく喜びを表す。チームに良いムードを持ち込むことができる投手だ。
高橋は、最速145キロのストレートとフォークで三振を量産するパワーピッチングがウリ。関東の左腕の中では、プロのスカウトからの評価も高い逸材だ。そのまま球速を伸ばし、ピッチングもしっかりと組み立ててゲームメイクができれば評価はさらに上がるだろう。岩井 隆監督は、「小さくまとまらせず、大物に育てる」と以前語っていたことがある。この選抜では大物だとアピールすることができるか。
高山は明治神宮大会準決勝の高松商戦で、常時140キロ後半・最速150キロを計測したことで一気に見方が変わった。それまでも、角度を生かしたフォームから繰り出す140キロ前後のストレートと曲りの大きいカーブで勝負する左腕で、いずれは150キロ近い速球を投げられるかもしれない可能性を持っていたが、想像以上に早いスピードで成長を見せた投手といっていいだろう。あとは高山が速球派左腕という名に相応しいパフォーマンスを見せられるか。高山は「150キロではなく、常時140キロ台が出ていて、打者から強さを感じるストレートをコンスタントに投げられる技術と体力と、そして両サイドにそのボールを投げられるコントロールを磨いていきたい」と意識は高い。左腕で150キロを投げられる高校生はそうそうにいないだけに、勝利を導く投球がしっかりとできれば、今秋のドラフトでも大きく話題になるのではないだろうか。
ブレイクが楽しみな好投手たち
内池 翔(桐生第一)
ここからは右、左問わず選抜でのブレイクを期待したい投手たちを紹介する。
昨秋、強豪・浦和学院を抑えた内池翔(桐生第一・試合レポート)は、同校の先輩である藤岡 貴裕(千葉ロッテマリーンズ)に憧れる左腕。腕を真っ向から振り下ろす135キロ前後のストレートには角度があり、シュート、チェンジアップもうまく使い分ける投手だ。まだ体の線が細いが、しっかりと体ができれば、140キロ台に達する可能性は十分にあり、楽しみな存在だ。
樫村雄大(常総学院)は、関東大会準決勝で完封勝利を挙げたように実力派の右腕。恵まれた体格から振り下ろす最速143キロのストレートが武器だ。
また甲子園の活躍次第ではドラフト候補に浮上しそうなのが松山 仁彦(東邦)だ。左スリークォーター気味から投げ込む直球は最速143キロだが、何より素晴らしいのはスライダー。打者の手元で急激に曲がっていく軌道を描くので、左打者からすれば相当打ち難く、さらに130キロ台のカットボールも投げ、インコースにもしっかりと投げ込んでいくので、かなり打ち難い。公式戦の登板経験が少なく未知数な部分が多いが、選抜でしっかりとアピールすることができるか。
新2、3年生問わず、潜在能力が高い投手が揃う
その他、上出拓真(札幌第一)は緩いボールを使い分ける右腕で、体ができれば、140キロ台の速球を投げ込む姿が期待できそうだ。そして青森山田には完成度の高い投球ができる堀岡隼人がいる。最速143キロを誇る近久輝(東邦)は指にかかった時のストレートはエース・藤嶋以上という評判だけに、甲子園では自分の投球ができるようにしたい。また左腕から最速143キロを計測する岩本 悠生 (大阪桐蔭)は制球力を磨き高山の負担を減らしたいところ。市岡 奏馬(龍谷大平安)は指にかかったときの速球は135キロ前後だが、球速以上に威力を感じさせる左腕だ。
初出場の明石商では、2人の投手に注目。エースの吉高壯は、140キロ前半の速球、キレのある変化球をコントロール良く投げ分けゲームメイクできる投手で、見ていて安心感がある選手だ。また2番手の山崎 伊織は、長身から投げ込む140キロ台の速球は角度があり、この選抜で実力を遺憾なく発揮したい。
村上 頌樹(智辯学園)は速球のマックスは140キロ程度だが、緩い変化球をうまく使って、メリハリを付けた投球ができるのが強みである。近畿6枠目の出場を決めた市立和歌山は、好不調の波が少なく安定した投球ができる右腕の赤羽 陸、威力ある速球が武器の栗栖 拓巳の二枚看板で勝負する。
神宮大会優勝の高松商のエース・浦 大輝は、最速141キロのストレートで、また複数の変化球を投げ分けてゲームメイクできる投手だ。下級生の時から経験豊富な中野 恭聖(明徳義塾)も、速球は135キロ前後と突出してはいないがしっかりと試合を作ることができる好投手。
有村 大誠(秀岳館)は、昨年埼玉西武を引退した西口 文也のような躍動感あるフォームから140キロ前後の速球を繰り出す。微妙に揺れ動く球質で、さらにスライダーの切れも良い。この冬はかなりのスピードアップに取り組んでおり、大化けとなるか注目だ。またセカンドを兼任する堀江 航平も、現在は本調子ではなく130キロ後半となっているが、復調すれば140キロ中盤が期待できる投手だけに復活を期待したい。
また21世紀枠では園田 涼輔(長田)に注目したい。最速140キロのストレートとキレの良い変化球を武器に昨秋は県大会ベスト8。甲子園での快投に期待したい。
神村 月光(滋賀学園)
新2年生では報徳学園、龍谷大平安を抑えた神村月光(滋賀学園・2015インタビュー)に注目。伸びのある速球とキレのあるスライダーを度胸良く投げこんでいく投球は見応えがあり、新3年生の投手たちと比較しても実力はトップクラス。
最速142キロ右腕・渡辺 啓五(いなべ総合)も、期待の速球派右腕。大阪桐蔭は新2年生に速球派投手が揃っており、最速142キロの香川麗爾、140キロ近い速球を投げ込む徳山 壮磨と能力は高い。ベンチ入りしていない投手でも、140キロ近い速球を投げる投手が多くいるようで、2人以外の投手が浮上する可能性もありそうだ。
冨樫 颯大(札幌第一)はしなやかな腕から振り繰り出す130キロ前半の速球はキレがある。今年、どんなピッチングを見せてくれるだろうか。
センバツは気温が低い中でプレーすることも考えられるため、思った以上のパフォーマンスができないこともあるかもしれない。しっかりと対策をして、大会が終わっても何度もクローズアップされるようなベストパフォーマンスを見せてほしい。
(文・河嶋 宗一)
注目記事
・第88回選抜高等学校野球大会 特設ページ