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アジリティとコーディネーショントレーニング【前編】

2015.12.05

 アジリティとは「敏捷性」のことで、今回は瞬間的な速さ、方向転換をうまく行うことで、より高度なパフォーマンスができるようになることを目的としたトレーニングを紹介していきたい。
もう一つ、コーディネーションとは異なる2つ以上の動きのパターンをまとめる能力のことで、その動きそのものをできるようになることと、すでにできているプレーでも、余計な動作をなくし、よりスムーズにパフォーマンスできるようになることを目的としたトレーニングも紹介していきたいと思う。

アジリティにはいくつかのタイプがある

■フェイントや回避のような方向転換
■ジャンプや飛び越え動作のような垂直方向への転換
■体の一部分を使っての素早い動きのコントロール

 どんなに大きい身体を持っていても、正しい動作ができなければ、競技では成果は出せない。アジリティ抜きでは大きな身体やパワーは宝の持ち腐れである。アジリティを改善するには

1.コーディネーションの改善:刺激に対応して正しい動作を作り出すこと。
2.スキルの改善:一般的な動きから、スポーツ特有の動きまで、効率的、かつ効果的に他の能力を調和させること。

この2つが必要となる。

コーディネーションとは

 コーディネーション能力は、目標とする動きを達成するために必要な2つ以上の動きのパターンをまとめる能力である。
その為には、4つの学習過程を伴う。

1.筋収縮とそれに伴う動きは、感覚受容器を刺激する
2.感覚受容器は、情報処理装置として働く中枢神経系(CNS)へ情報を送る
3.CNSはこの情報を処置、調節・改善する
4.CNSは、運動経路を伝って筋へ情報を送り返す

 この過程で動作学習を進めていく。そのスキルは、

a.刺激認識:外的な経路は外の刺激を、内的な経路は実行中の動きを司る。(この情報は、運動感覚、触覚、前庭、視覚、聴覚の5覚から経られる)
b.反応選択:入力情報はこの段階で処理されて、すでに習得されている運動プログラムを適切に選んで遂行する。
c.反応プログラミング:そのプログラムをCNSから筋へ送り、正しい動作を行う。
d.フィードバック:筋は出力と長さを、固有受容器は運動、感覚は関節と身体の位置を、視覚、聴覚は環境情報をフィードバックする。そして、理想のパフォーマンスに近づけていく。

 この結果「完璧な練習によってのみパーフェクトが生まれる」のである!
動きの準備段階で、筋力トレーニングや、さらにエネルギーシステムなど適応年齢に応じてコーディネーションを高めていくと効果的だ。

▼粗削りのコーディネーション
最初はきちんと意識して行う。ここは視覚と聴覚に依存する。そして正しい動作を意識する。

▼繊細なコーディネーション
深部感覚、受容器、固有受容器、前庭器を使う。粗削りだった動きが、筋の動きを意識してバランスを意識的に行い、他の3つの感覚器を刺激してフィードバックを高めていく。

▼効率性のコーディネーション
効率性の向上は、筋内と筋間のコーディネーションで行われる。筋内は、多数の運動単位を動員し、筋間は複数の異なる筋の間で行われる共同作用である。これは、体重負荷漸増法、重力負荷運動法、補助運動法によって能力を改善される。

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[page_break:アジリティとコーディネーションの基礎(その1)]

アジリティとコーディネーションの基礎(その1)

バランスと支持面
アジリティにおいて、バランスは基本であり、これは、『バランス=質量中心』を支持面上に保持する能力である。
質量の中心は男性の場合、身長の57%に位置している。立っているときは、質量中心は常に重心(=Center of gravity)と同じ位置にある。重心は、動きによって位置が変わるため、バランスは2つに分かれる。

【静的バランス】
スタティックバランス、またはインナーゾーンバランスと呼ばれている。基底面内バランスを維持し続ける能力。
【動的バランス】
アウターゾーンバランスと呼ばれ、基底面からどれだけ離れるかの能力。

 バランス閾値とは、バランスが崩れるところをいう。スポーツはダイナミックバランスの最たるもので、運動中に常に質量中心を支持面上に維持させる能力が求められる。

ピッチングには常に片足のバランス感覚が必要

 ピッチャーのフォームを見てもわかりやすい。
マウンドは砂と土で掘られていることが多く、片脚バランスが求められる。そのまま体重移動するため、バランスが基底面から外れる。この片脚バランスを維持したまま、接地、骨盤をまわして投げ込む、そしてまた踏み込む、という一連の中で片脚でバランスを維持しながら最大パワーのパフォーマンスをしなければならず、このためバランス能力がかなり大きく関わってくるのだ。

姿勢(パーフェクトポスチャー)
正しい姿勢は良いパフォーマンスの為に不可欠であり、体幹が真っ直ぐである事は不可欠だ。コアスタビリティは、ローカル・グローバルマッスルの共縮で起こり、骨盤、腰部、胸部を安定させ、これにより土台を安定させて力を連鎖させていく。
コアが安定することにより、頭部が安定して目線が安定する。野球は視覚からの情報が重要なので、目線の安定が必須である。
そこからのパワーポジション作りがとても大切になるのだ。

地面と足の相互作用(ポジティヴ、ネガティヴシンアングル)
足が地面とどの角度で接地するかが地面の反力を最大に使えるかのポイントになる。特に足首の背屈が大切だ。
スピードの加速ではとても大切なポイントであり、この柔軟性をキープしなければならない。
特に母指球の土で、前足を背屈させて、後脚で押し出す。これを方向転換でも行うことが荷重のポイントとなる。

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[page_break:アジリティとコーディネーションの基礎(その2)]

アジリティとコーディネーションの基礎(その2)

地面反力
地面反力は、足から床へ伝導したエネルギーと反対方向に受け取ることをいう。相反性反射で今度は逆の脚が直伸展してくる。背屈した足首をリズミカルに硬くタップする感じで行う。それを力強く連続に行うことで、地面の反力を最大限に利用できる。

反応
適切な姿勢・スタンスと体重配分をとり、正しい動きをとり、あとは視覚・聴覚、技術、戦術、予想を取り入れてトレーニングする。

加速と減速
加速は正しい姿勢、荷重、ポジションアングル、脚、腕の激しい回転で決まる。減速は、トリプルフレクションで曲げることが大切。

横方向のクイックネス動作も重要

第一歩目をクイックネスで
第一歩目は、スタンス、反応、次に進むべき方向が分かっていることに依存する。バランスの良いスタンスによって行きたい方向に推進する。どの方向でも一歩はポジティヴアングルにして、地面に叩きつけてトリプルエクステンション、特にヒップエクステンションを意識。そしてフットポジションを重心より後方にすること。

カッティング
カッティング=方向転換は、動きの最中に素早い減速と加速が必要で、一方向から別の方向へ方向転換をしたり、異なる動きで方向転換したりする。

クロスオーバー
クロスオーバーは即座の反応が要求されていない時に、横方向から後ろ、また前方へ方向転換する際に用いられ、短時間で大きな距離の方向転換に使用する。
速いスピードの際、一歩目の脚を重心の近くに置くことがポイントになる。

ドロップステップ

バックペダル

これらを活かした実際のトレーニングプランは後編で紹介する。


注目記事
・【12月特集】冬のトレーニングで生まれ変わる

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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