Interview

東邦高等学校 松山 仁彦選手「スケール感ならば藤嶋に負けない剛腕左腕!」

2015.11.15

 東邦の森田監督が昨年、「今の1年生たちは良い選手が多いですよ」と語っていた。今年の明治神宮大会の出場メンバーの力量を見れば、それが十二分に理解できた。その中でも藤嶋健人にひけをとらないスケール感たっぷりのパフォーマンスを示したのは、松山 仁彦だった。
リリーフで登板した松山は、最速143キロのストレートと曲りが鋭いスライダー、カットボールを駆使して5回を投げて1失点の好投。来年のドラフト候補として期待が持てる内容だった。そんな松山投手にここまでの振り返りと今後へ向けての意気込みを語ってもらった。

よりキレのあるスライダーを求めてフォームもスリークォータに

松山仁彦(東邦)

 中学時代(岡崎中央ボーイズ)は藤嶋健人とともに騒がれた選手。入学時は投手も務め、練習試合や1年生大会でもたびたび登板してきた松山。今では打力を評価されて野手を兼任。

「僕自体、打撃は大好きなので」と語るように長打力抜群の強打者として腕を磨いてきた。東海大会決勝で2本塁打を放つなど野手としての活躍が光る一方で、投手としての登板は秋季愛知県大会準々決勝で投げた1イニングのみ。

 藤嶋が打たれた、また投げられない事態に備えて準備をしていたが、藤嶋は秋季大会通して安定した投球を展開し、松山の出番はなかった。神宮大会準々決勝の1日前では藤嶋が投げず、リリーフでの登板はあるということは森田 泰弘監督に伝えられていた。試合前日のブルペンでは「好調でした」と振り返る。

 そして登板がめぐってきたのは4回裏からだった。これが初の全国デビュー。松山は衝撃的なピッチングを展開する。

 背中がやや入るぐらいのテークバックから左スリークォーターから繰り出す140キロ前後(最速143キロ)のストレートを計測。今の高校2年生左腕で、常時140キロ台の速球を投げられる投手はそういるものではない。さらにこれだけではなく、130キロ台のカットボール、125キロ前後のスライダー、110キロ前後のスラーブと横の変化を多用。

 特に外角に大きく滑るスライダーの切れは絶品で、かなり大きな武器といえるだろう。松山自身、これは中学時代から武器として投げてきた球種であった。状況に応じて使えるのも強み。カウントを取るときは小さく曲がるもの、そして空振りを奪うときは、大きく曲がるスライダー。それを自在に投げ分けているのだ。よりスライダーをうまく曲げたい。

 そういう思いからフォームも、スリークォーター気味のフォームになった。スライダーのような横の曲りをする変化球は、スリークォーターかサイドスローの腕の振りの方が曲りが鋭い変化球を投げやすい。今は縦の変化を投げる投手は多くなっているが、これほどの横の角度から鋭く曲がる変化球を投げられる投手も少ない。

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[page_break:来年は藤嶋に並ぶダブルエースへ]

来年は藤嶋に並ぶダブルエースへ

松山仁彦(東邦)

 4回から登板し、7回まで被安打1本のみに抑えていたが、8回裏、四球から走者を出し、2つのバッテリーミスからランナー三塁までいかれて、内野ゴロで1点の勝ち越しを許してしまった。そのままチームは敗れてしまった。

「ああいうふうに走者を出して、進めて、点を与えたのは自分の実力不足です」と悔やんだ。

 だが初の全国舞台。実戦登板もかなり久しぶりで、5回1失点は上出来といえる内容だろう。
森田 泰弘監督は「松山は良かったです」と評価。松山 仁彦自身も「全国で通用するかがこの大会のテーマだったので、しっかりと投げられてよかったです」と振り返った。

 実戦で投げたことで課題も明らかになってきた。
「だんだん投げていくごとにコントロールにばらつきが出ていて、スタミナがないことに気づきました。長いイニングでも、しっかりとコントロールできるようにしていきたいと思います」

 140キロ台の速球、キレのある変化球を自在に投げ分ける投球が持続できれば、相手打者からすればたまったものではない。そうなってくれば東邦からすれば大きな戦力になることは間違いない。

 これほどの実力を持った左腕はそういない。エースナンバーを狙うつもりはあるか?と聞くと、
「エースは藤嶋だと思います。僕は打ったり、藤嶋が投げない時にサポートできるような裏方の存在であり続けたいと思います」

 あくまで打者や控え投手として徹するつもりだ。その心がけは確かに素晴らしい。だがこれほど素晴らしい才能を持った選手が控え投手という立場は勿体ない。今日のような投球を続ければ、森田監督から大きな信頼を得ることができるだろう。

 そうなれば、今夏、全国制覇を果たした東海大相模小笠原慎之介吉田凌のようなダブルエースと呼ばれる日も実現することだろう。来年、藤嶋健人に負けない剛腕左腕としてクローズアップされることを心待ちにしたい。

(取材・文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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