試合レポート

東邦vs秀岳館

2015.11.13

東邦はエースで4番の主将が2発で快勝

東邦vs秀岳館 | 高校野球ドットコム

藤嶋 健人(東邦)

 朝8時32分にプレーボールの試合、秋も深くなっての早朝の試合は比較的冷たい空気の中で淡々と始まった。
どちらも得点がないまま前半を終了したのだが、ここまで秀岳館は背番号4の堀江 航平君が3四球は与えたものの、歯切れのいい投球で東邦打線を2安打に抑えていた。

 東邦は1年生で甲子園も経験している大黒柱の藤嶋 健人君が先発。6回までで、2回を除く毎回安打こそ浴びてはいたものの、その後をしっかりと抑えて力と投球の上手さを巧みに自分で調整しながらの投球だった。こうしてスコアとしては0対0のまま均衡が続いていたのだが、それを打ち破ったのも藤嶋君のバットだった。

 6回の東邦は、この回から代わった左腕中井 雄亮君に対して、先頭の3番松本 凌弥君が中前打で出ると、続く藤嶋君が左翼スタンドに2ランを放り込んだ。大きな弧を描いたプロ野球の中田 翔(日本ハム)や中村 剛也(西武)などが放つような本塁打だった。

 この2点を藤嶋君がそのまま守り切っていくのかなというような試合展開だったが、8回に秀岳館がいったんは追いついた。この回の秀岳館は、一死から3番木本 凌雅君が内野安打で出ると、4番九鬼 隆平君に対して藤嶋君が「強気でストレート勝負に行った」ところを捉えられて、中越二塁打で木本君がホームイン。さらに内野ゴロで進むと、その後に三振捕逸があって三塁から九鬼君が帰って同点となった。

 藤嶋君は自分で打ってリードして、自分で打たれて追い上げられ、バッテリーミスで同点とされてしまった。ところがその裏、東邦秀岳館の3人目有村 大誠君に対して、6回と同じパターンで、再びリードする。先頭の松本君が右前打で出ると、続く藤嶋君は今度も打った瞬間に入ったとわかる大きな本塁打を左翼席に運んでいった。2打席連続の2ランである。


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九鬼 隆平(秀岳館)

 結果としては、これが決勝点となる。藤嶋 健人君が自分で決めたという形のわかりやすい試合になった。

 エースで4番打者、しかも主将も務めている藤嶋君である。森田 泰弘監督は、「投手としての能力はもちろんのこと、野球選手としての能力も優れていますから、野手としても一番信頼ができます。そして、1年生から試合に出ていますけれども、天狗になることもなく、人間性からも自然に主将に…ということになりました」と、高く評価している。

 学校としては、前の週に修学旅行があったということで、調整としては必ずしも十分ではなかったようだ。それでも、「全国で勝てるチームということを意識して、やってきていましたから、こういう舞台で戦えることで、これをいい経験としてほしい」と、森田監督も言うように、選手たちの気持ちは強いものがある。

 社会人野球の松下電器(現パナソニック)で監督も務め、NHKで高校野球の解説者も経験している鍛冶舎 巧監督が就任して2年目の秀岳館、「就任3年目で全国制覇」という大スローガンを掲げているが、その目標へ向けてまず大きな一歩となったこの秋の明治神宮大会進出。相手ミスなどもあって、一旦は同点に追いついたものの、結局東邦の藤嶋君の2発に沈んだ。

 しかし、鍛治舎監督は、「ここ一番というところでミスをしないチーム、そういう選手を多く育てていきたいですね。そのためには、やはり誰もがいいチームだと評価してくれる、そんなチームを目指しています」と、思いを語っていた。神宮球場の人工芝に鮮やかに濃い黄色のストッキングが印象に残ったが、来春の甲子園でどんな映え方を見せてくれるのか、一冬越えての秀岳館も楽しみだ。

(文=手束 仁

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・第46回明治神宮野球大会 特設サイト

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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