試合レポート

高松商vs済美

2015.11.01

高松商「井の中の蛙」越え、20年ぶりセンバツへ前進!

後半持ち直し5失点完投の高松商・浦 大輝(2年)

 非常にみごたえのある125分間であった。

 先に進軍ラッパを奏でたのは済美。1回裏、彼らは高松商エース・浦 大輝(2年・右投右打・179センチキ78キロ・香川県立高松北中出身)の立ち上がりに的を絞る。

 1番・和田 蓮次郎(2年主将・遊撃手・170センチ63キロ・高槻リトルシニア<大阪府>出身)右中間二塁打を口火に、一死二塁から3番・八塚 凌二(1年・左翼手・右投右打・175センチ71キロ・新居浜リトルシニア出身)の右前適時打、さらに4番・小山 一樹(2年・捕手・右投右打・177センチ77キロ・三田ボーイズ<兵庫県>出身)は「インコース低めに来たスライダー(実際はカーブ)」に身体の軸を力強く回し、レフトポールにぶち当てる大会第9号、高校通算11号2ランにより一挙3点を先制する。

 しかし高松商も負けてはいない。
直後の2回表に準々決勝・今治西戦では高校通算14、15本目となる2ラン、グランドスラムを放った4番・植田 響介(2年・捕手・右投右打・180センチ80キロ・東かがわ市立白鳥中出身)が四球。犠打、二塁ゴロで二死三塁とすると7番・大熊 達也(2年・右翼手・右投右打・174センチ71キロ・高松市立太田中出身)が、長尾 健司監督が準々決勝・鳴門(徳島)戦で2安打完封の済美菊池 怜雄(2年・左投左打・172センチ73キロ・宇和ボーイズ出身)攻略法として授けた「逆方向」を体現する右前打で1点を返し、なおも暴投、2四死球で二死満塁。

 ここで左打席に歩を進めたのは2014年の秋季香川県大会・大手前高松戦で「全力疾走を続けられる体力・精神力」について指摘させてもらった1番・安西 翼(2年・中堅手・右投左打・170センチ58キロ・高松ボーイズ出身)である。

 それから1年余りが経過し、この四国大会では「全力疾走」の旗手的存在となっている安西。「僕の話を素直に聴くようになった」(長尾監督)心根は「リトマス試験紙的」状況としても格好となったこの打席でも全く揺るがなかった。

「この1週間は1年生の左投手たちに投げてもらって、(ボールになる)低めのスライダーを振らないことと、逆方向を意識してバッティングをしてきたし、外野フライでいいと思ったので余裕があった」安西。


本塁打を放った小山 一樹(済美)

 ここでは1ストライク後のアウトコース高めのスライダーを素直にはじき返し、左中間を真っ二つに破る逆転3点三塁打。さらに4回表一死一・三塁の第三打席では遊撃ゴロも3秒80の駆け抜けで併殺を悠々と防ぎ1打点を加えると、即座に3秒29で二盗も成功させ、この試合でもチームに勢いを与えた。

 それでも済美は粘り続けた。
浦 大輝の乱調に乗じ4回裏には二死三塁から和田 蓮次郎が右前適時打、続く5回裏にも二死一・二塁から7番・三浦 俊哉(2年・中堅手・右投右打・175センチ73キロ・西条少年野球団<ヤングリーグ>出身)の三塁線適時打で一時は同点に。1年間試合から離れていた彼らの境遇を考えれば、ここは十二分に賞賛すべきところだ。

 しかしグラウンド整備が終わると、状況は大きく変化する。
6回以降、済美は「犬伏(英人)部長に『お前がエースだろ!』と喝を入れられて」見違えるように立ち直った浦の前に2安打のみ。そして6回表一死一、三塁から真ん中やや低めのスライダーに巧く反応しての決勝中犠飛を放ったのは・・・・・・。これが5打点目の安西 翼。「クリーンナップより1、2番でやられた」と乗松 征記監督がため息をついたのも無理はない。

「素直に嬉しいが、ここがゴールではない。明日勝って四国一にならないと」。

 試合後「(8月22日に高松商グラウンドで開催された)履正社(大阪)との練習試合で寺島(成輝)くんに2安打15奪三振完封されて(結果は0対5)全国の壁は厚いと感じた」。

「(1対2で)敗れた小豆島戦の後の3週間が勝負と思っていた。チームだけのミーティングでも『全力疾走をせな(いかん)』と確認しました」と、変化へのステップアップを話した安西は最後にこう誓う。

 そこにはもうかつての「井の中の蛙」はいない。あるのは第1回大会優勝校の栄光をはじめ25回の出場を誇るセンバツ出場暦を20年ぶりに塗り替えにいくだけでない、「全国で勝つ」過程を踏む戦う集団である。

(文=寺下 友徳


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2015年秋季大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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