Column

アスリートと視力補正

2015.09.30

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 眼が悪い、いわゆる視力が悪いといわれているスポーツ選手にとって、視力を補正するためのコンタクトレンズやメガネはスポーツ現場においても欠かせないものです。通常では両眼で0.7以下の視力の場合、補正する必要があるといわれています。野球選手にはどのような視力補正器具が適しているのでしょうか。今回はこうした視力補正器具の選択や、扱い方、注意点などについてお話をしたいと思います。

メガネと各種コンタクトレンズの比較

 一般的に使用されるメガネとハードコンタクトレンズ(ハードコンタクト)、ソフトコンタクトレンズ(ソフトコンタクト)、使い捨てコンタクトレンズ(使い捨てコンタクト)について、それぞれの特徴を表にまとめます。

競技特性から考える

 野球は選手同士の接触プレーが比較的少ない非接触型競技(ノンコンタクト競技)に分類されます(ホームでのクロスプレーなど例外はあります)。相手とぶつかって眼を打撲するといったシーンはあまり考えにくいですが、イレギュラーバウンドが眼に当たるアクシデントは想定できます。ハードコンタクトレンズは眼に大きな衝撃を受けたときに、破損して眼を傷つけてしまうことが考えられますので、ケガのリスクを回避するためにもソフトコンタクトレンズ、使い捨てコンタクトレンズを使用するようにしましょう。

 またハードコンタクトレンズは瞬きの際にレンズが上下に動いてしまう特性があります。眼からの情報で一瞬の判断力を迫られる野球選手としては、ソフトコンタクトレンズや使い捨てコンタクトレンズの方が、パフォーマンスの面でもより適しているといえるでしょう。

 コンタクトレンズに比べるとどうしても視野が狭くなってしまいがちなメガネは、一時期、野球選手に敬遠されていましたが、現在ではスポーツ用に装用感などが改善され、メガネを装用してプレーする選手も増えてきました。メガネは直接眼球に触れることなく装用するため衛生的であり、最近は塵や埃などに強いゴーグルタイプも増えてきています。花粉症などに悩まされている選手はゴーグルタイプのメガネを装用することで、眼の痛みやかゆみに対してその発症が抑えられるなどの効果が期待できます。


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[page_break:使い捨てコンタクトレンズの管理 / 屋外スポーツならではのトラブル]

使い捨てコンタクトレンズの管理

 スポーツ現場で最も主流になっているのが使い捨てコンタクトレンズではないでしょうか。取り扱いが簡単で異物感も少なく、プレーの時に支障となることが少ないといったことがその理由として挙げられます。しかし決められた使用期限(一日タイプ、二週間タイプ等)を守らないことで、眼のトラブルを訴える患者が急増しているともいわれています。

 使い捨てコンタクトレンズはそれぞれ決められた期間に耐えられる薄さでできているのですが、付けたり外したりを繰り返すうちにレンズが劣化し、酸素透過性や保湿機能が低下していきます。その結果、眼球に傷がついてしまったり、見えにくくなるといったことが起こります。

 特に一日タイプのものは一度外した後に、再度装用することを想定して作られていないため、こすり洗いに耐えられないほどペラペラの薄さです。こすり洗いをせずに保存液にだけつけて翌日また使う人もいますが、汚れたレンズを目に入れることになり、感染症の原因となります。もったいないからといって使用期限を延長して使うことはせず、必ず使用期限を守って装用するようにしましょう。

 またコンタクトレンズを装用している角膜は常に酸素を必要としますが、コンタクトレンズをつけたままうっかり寝てしまったりすると長時間まぶたを閉じることで酸素が角膜に供給されないため、酸素不足によって角膜のトラブルが起こりやすくなります。コンタクトレンズは必要最低時間の装用を心がけるようにしましょう。

屋外スポーツならではのトラブル

コンタクトレンズとメガネを上手に併用しよう

 野球は屋外でプレーすることが多いため、風や風によって舞い上がる砂埃等の影響を受けやすいと言えます。メガネは塵や埃に対して比較的影響を受けませんが、コンタクトレンズは異物感や乾燥感を伴うことがあります。またハードコンタクトレンズの場合はレンズそのものが砂埃などによって傷ついてしまい、その傷ついたレンズを使用することで眼にも悪影響を及ぼすことが懸念されます(参考ページ:第104回 風の強い日に気をつけること)。

 こうしたトラブルを想定し、プレー後はコンタクトレンズを外して眼を洗浄し、通学時はメガネを装用するといったことも眼のトラブルを回避するためにはオススメです。

 スポーツをする環境と使用する人の眼の状態により、その状況にあわせた視力補正器具を使用する必要があります。選手によっては両方の特徴をうまくいかして、眼鏡とコンタクトレンズを併用する人もいます。また普段から眼の調子があまり思わしくない場合などは、必ず眼科医の診察のもと判断するようにしましょう。

【アスリートと視力補正】
・両眼で0.7以下の視力の場合、視力を補正する必要がある
・野球の競技特性を考えるとソフトコンタクトレンズ、使い捨てコンタクトレンズがオススメ
・ゴーグルタイプのメガネは花粉症対策に有効
・使い捨てコンタクトレンズは使用期限を必ず守る
・コンタクトレンズは風や埃の影響を受けやすい

(文=西村 典子

次回コラム公開は10月15日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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