Column

市立習志野高等学校(千葉)

2015.06.26

 千葉県を代表する名門・習志野。夏の甲子園出場8回中、全国優勝2回を誇る。さらに、OBにはミスタータイガースの掛布 雅之氏(元阪神タイガース)、2000本安打を達成した谷沢 健一氏(元中日ドラゴンズなど)等、数多くの野球人を輩出している。

 そんな習志野は今もなお、県内の強豪校として君臨。夏に向け着実に戦力を整えてきている。

昨秋ベスト8も、冬はゼロからのチーム作り

ダッシュに取り組む選手たち(市立習志野高等学校)

「前チームからのレギュラーが1人しかおらず、新チームではゼロからのチーム作りでした」
そう小林 徹監督は振り返る。

 千葉県の秋の一次予選は8月中旬と準備期間が短い。それでも、習志野ブロック予選を3試合連続のコールドで勝ち上がり、秋季千葉県大会でも、3回戦で昨夏の甲子園出場校・東海大望洋に4対0で勝利し、ベスト8に進出。準々決勝では、松戸国際に惜しくも2対3で敗れた。習志野の選手たちは決して、8強入りの結果に満足はしていない。
「我々は欲張りですから、3割打てる選手は3割5分、防御率2.00で抑えられる選手は1.50と求めてしまう。だから、選手たちも現状に満足せずにその先を目指していくのだと思います」

 チームは、冬の期間、走攻守だけでなく体力面をしっかり鍛え直して、個々の力を伸ばしてきた。そして迎えた春。春季県大会では2回戦から登場した習志野
まず、初戦は7対2で東葉に勝利したが、3回戦柏南戦では、8回終了時点まで3対0とリードしながらも、9回表に同点に追いつかれると、10回に勝ち越しを許し敗戦。2大会連続のベスト8進出はならなかった。

 この大会を振り返って小林監督は、
「彼らの冬の期間の練習の成果が表れていました。個人として間違いなくレベルアップを果たすことができたと思います」と評価した。

 その中で、大きな成長をみせたのは、エースの土井 大輝(3年)。130キロ中盤の速球と変化球をコントロール良く投げ分ける右腕。秋までは2番手、3番手の立ち位置だったが、練習試合で好投を続け、実力で背番号1をつかみ取った。その土井は、柏南戦で好投を見せるも9回に同点を許してしまい、課題が見つかる大会となった。

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僕らの熱い夏 2015
第97回全国高等学校野球選手権大会
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
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個人として間違いなくレベルアップを果たした春季大会

松井和輝(市立習志野高等学校)

 また3番を打つ内山 京祐(2年)は入学当初から大きく長打を伸ばし、柏南戦で2本塁打を放った。175センチ73キロと上背は高くないが、分厚い太ももをした選手で、それがパワーの源となっている。内山は、「ソロではなく、勝負所で本塁打が打てる選手になりたい」と夏に向けて、レベルアップを誓っている。

 そして、この春にレギュラーの座を獲得したのが、レフトを守る習志野松井 和輝(3年)だ。松井は東北楽天ゴールデンイーグルスで活躍する松井 裕樹投手の弟である。松井は、1年秋の関東大会(2013年秋季関東大会)にベンチ入りを果たすものの、その後はレギュラーを獲得できず、昨秋は背番号16と、悔しい思いを味わってきた。

 レギュラー入りを果たすにはパワーアップしかないと思い、素振りとトレーニングで長打力をつけた。また、下級生時代に打撃投手を務めていた経験から、肩も強くなった。そして春の練習試合で活躍し、巧打強肩の外野手としてレギュラーの座を獲得。柏南戦でも適時打を放つ活躍を見せてくれた。

 習志野は、「組織の活性化は、競争がないといけない」と小林 徹監督が話すように、激しい競争の下、レギュラー入りを決めていく。それは小林監督と選手たちの約束ごとでもある。
「判断基準がない中で選手を選出することはできません。普段の練習内容、オープン戦での結果、成績を重ねていけば、客観的に数値として出てくるわけなので、判断基準、判断材料を増やしていくことができます。そういう中で、平等に出場機会を与えるようにやっていきました」
と多くの練習試合を組み、多くの選手たちが出場できるように、工夫をしてきた。

 それでも、ケガでメンバーを外れれば、そこから再び熾烈な競争が待っていることも事実だ。

昨秋
のエース・尾形 康平(3年)はこの春、ケガでベンチを外れた。今は復帰したが、まだ不動のエースという立場ではない。
夏の大会で投手が何人ベンチ入りするのかは、これから決めていくことですが、尾形も仲間と切磋琢磨しながら、成長していってほしい」(小林監督)

 そんな小林監督の口調からは、エースの座を勝ち取りたいならば、文句なしの結果を残して実力で勝ち取れ!そんな、エールが込められているように感じた。

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[page_break:チームとして結果を結び付けるには3年生の意地が必要]

チームとして結果を結び付けるには3年生の意地が必要

 そんな習志野は、個々の課題を克服するためにどんな取り組みをしているのだろうか?
 小林 徹監督は、課題克服のために一番大切なことは、「選手たちの自覚が重要です」と話してくれた。

打撃練習を見守る小林徹監督(市立習志野高等学校)

 指導者が、強烈なプレッシャーを選手にかけるチームもある。公式戦と同じ緊張感を想定しているなど、いろいろな理由があるが、習志野はそれをやらない。その理由としては、
「本当に達成感があるのは、何が必要なのか自分で見つけて気付いて、そして自ら作り上げて、自分の思い通りの結果を出すことだと思うのです。その成功体験を積み重ねることが、彼らにとって一番面白いことだと思います。もし、私が夏へ向けてすべてを計画し準備して、戦略も立てるとします。生徒が私のプランニングに乗っかって結果を出したとしても、本当に嬉しいと思えるでしょうか。ホッとしたという気持ちだけでつまらないと思うんですよ」

 だから小林監督は、選手たちの自主練習には一切口出しをしない。口を出した時点で、自主練習ではなくなるからだ。そういう意味で、2011年甲子園ベスト8入りした選手たちは、自主練習の質も量も多く、非常に意識が高かった選手たちであったという。

「強いチームには、必ずしも先導役というべき選手がいるのですが、あの代にはその役になる選手がいました。また高校生には様々な性格を持った子がいますが、一つの方向に向かっていたと思います。また、それぞれの選手が自分の役割を理解していた代で、そこが強みでしたね」

 さらに小林監督は、最後の夏は3年生の意地が必要だと語る。
「能力が高い1、2年生がいても、最後のひと踏ん張りをするには、3年生の意地、気持ちの強さが絶対に必要。だから3年生がこのチームの屋台骨になることを期待しています」

 振り返れば、2011年夏は3年生が中心だった。2010年は、2011年の主力だった宮内 和也(現・明大)、泉澤 涼太(現・中大)が出場していたが、捕手の山下 斐紹(現・ソフトバンク)が中心で、3年生がチームを引っ張っていた。

 そんな偉大な先輩たちの姿を追って、今年の主将・内澤 優介は、夏に向けてこう語る。
「あの試合は習志野らしい試合ができなかった。習志野らしさとは、粘りある試合運び。今年は突出した選手がいないので、団結力で勝負をしていきたいです!」

 そんな内澤キャプテンのもと、この夏に挑んでいく習志野には、「雑草の如く逞しく」という代々語り継がれている言葉がある。今年はと悔しい負けを経験してきた。今年のチームはその言葉に相応しい雑草集団。雑草のように何度も這い上がり、戦国千葉の頂点を勝ち取っていく。

(取材・文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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