Column

早稲田大学高等学院(東京)【前編】

2015.06.25

 昨秋今春と激戦区東京で16強に進出した西東京の早大学院。まだ甲子園出場は叶わないまでも、10年夏4強に躍り出るなど、勉学と両立させながらコンスタントに勝ち上がっている。そして迎える今夏。早大学院は4人の好投手を擁し、いよいよ“聖地”を射程圏内にとらえた。

盛り上がる早早対決!

ミーティングの様子(早稲田大学高等学院)

 今春、早大学院都大会4回戦早稲田実業と顔を合わせた。いわゆる「早早対決」が実現したのは13年夏の3回戦以来。09年10月から指揮を執る木田 茂監督にとっては3度目のことだった。
「早早対決」はいつも盛り上がりを見せるが、この時ばかりは過去2回とはまるで雰囲気が違ったようだ。

 [stadium]八王子市民球場[/stadium]は、早稲田実業の注目の新入生・清宮 幸太郎を見ようと集まった観客で膨れ上がった。木田監督は、
「報道関係者も多かったですし、いささか異様な感じでしたね」
と振り返る。清宮の一挙手一投足にスタンドの視線が注がれたこの試合、早大学院は2対11で7回コールド負けを喫する。

「3度目の正直を狙ったんですけどね(苦笑)。ただ、昨年12月中旬から4月上旬まで改修工事で全くグラウンドが使えない中、この春は『ベスト16に進出してCシード獲得』という最低限の目標はクリアできたと思っています」

 その一方で、またしても早稲田実業という厚い壁を越えられなかった。木田監督は表情を引き締めると
早稲田実業に勝って甲子園に行くという大目標は変わっていません。早稲田実業に勝ってこそ、早大学院の価値が高まると思っています」
と続けた。

 なぜ木田監督は、“打倒・早稲田実業”に闘志を燃やすのか?
時は木田監督が早大学院の指導に携わる以前にさかのぼる。私的な事情から時間を得た木田監督は、2年間かけて全国約400の高校チームの練習を見て回った。
「この経験が今も指導の基盤になっている」
と語るが、訪問先の監督との話題が母校(早大学院)に及ぶたびに、残念な思いをしたという。

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早稲田大の直系である誇りを持ってほしい

夏に向けて練習を重ねる早稲田大学高等学院ナイン

早稲田実業は当然、誰でも知ってるんですが、早大学院野球部はまるで知名度がない。中には『予備校にも野球部があるんですか?』という人もいて。『都の西北』から始まる早稲田大学と同じ校歌を歌えるのは、早稲田実業ではなく早大学院なのに、野球部の現実はそうなのかと、一人のOBとして、いたく傷つけられました」

 勉学だけでなく、野球でも早稲田大の直系である誇りを持ってほしい―。
木田監督は縁あって08年より早大学院のコーチになると、「当時は同好会のようだった」というチームの改革を始める。

 もっとも、頭がいい選手たちに“俺についてこい式”の指導は通用しない。木田監督は、なぜこの練習が必要なのかと丁寧に説き、選手を納得させることに力を注いだ。

 すると監督就任2年目の10年夏、指導が早くも花開く。早大学院は実に56年ぶりとなるベスト4に。41年ぶりの「早早対決」で屈し、決勝進出こそ逃すも、野球においても早大学院の名を知らしめた。

「私だけが意識過剰なのかもしれません」
木田 茂監督は言うが、もちろん現チームの選手たちも、打倒・早稲田実業に燃えている。青木 俊汰主将(3年)は、
「春は悔しい負け方をしたので、夏は絶対にリベンジしたいです」
と言葉に力を込める。春の早稲田実業戦では本来の投球ができなかった嵯峨 悠希(3年)も、一時は早稲田実業入りに傾きながらも早大学院の門をくぐった経緯があるだけに、むろんこのままでは終われないだろう。

 木田監督は、
早稲田実業さんは練習量が豊富ですが、ウチは限られた練習時間(平日は15時30分から18時まで。朝練習は7時から1時間程度)の中で培った集中力がある。これだけは負けていないと思います」
とキッパリ。

今夏、互いに勝ち進めば、早大学院早稲田実業は準々決勝で再戦する。果たして早大学院のリベンジはなるか―。

後編では、いよいよ今夏に挑む早大学院ナインの戦力紹介していきます。タイプが異なる4人の好投手とは?

(取材・文=上原 伸一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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