Column

股関節の硬さを克服しよう

2015.04.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 遅くなりましたが新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます! 新たな新入部員を迎え、多くの選手たちが活気あふれるクラブ活動を送っていることと思います。皆さんの高校野球生活の中で、「セルフコンディショニングのススメ」が少しでもケガ予防や、パフォーマンスアップにつながるようにこれからも現場に役立つ情報を提供したいと思います。どうぞご期待くださいね。さて今回は股関節の硬さをストレッチやトレーニングで改善するためのポイントを挙げてみたいと思います。

そもそも股関節が硬いとは?

 股関節の硬さに悩む選手は少なくないでしょう。股関節が硬いと低い姿勢で捕球体勢を維持することがむずかしかったり、下半身の力がうまく伝えられず、上体だけで投球動作を繰り返し、ケガをしやすくなったり、といったことが挙げられます。股関節の硬さは、関節そのものの動きやすさと筋肉や腱などの柔軟性とを分けて考えるようにしましょう。

 関節そのものの動きやすさとは、股関節に限らず、肩関節や手関節などすべての関節においてその動く範囲(関節可動域)には個人差があり、動きの中でその動く範囲が十分活かされているかということです。すべての関節において比較的どの関節も柔らかい選手がいる一方で、どの関節についても硬い選手がいます。この場合、あまり柔らかすぎると関節のもつ支持能力(安定性)が下がりますし(いわゆる「関節がゆるい」といわれる状態)、硬いとそれだけ関節の支持能力は上がることになります(関節弛緩性:かんせつしかんせい)。

 もともとの骨格や骨の配列(アライメント)などで関節の動く範囲が人によって違ってきますので、動きの中で十分な動作ができれば問題ないと考えましょう。一方で筋肉や腱の柔軟性に関していえば、運動することで柔らかくなります。体が冷えたところでストレッチを繰り返すよりも、体を十分に温め、筋線維を伸び縮みさせたほうが柔軟性は改善します。「柔軟しているのに柔らかくならない」と嘆く前に、こうしたことをまず見直してみましょう。

壁を利用して骨盤を立てる

壁にそって背中をつけ、骨盤を立てる意識を持つ

 股関節が硬いといわれている選手が開脚してストレッチを行うとき、どうしても骨盤が後傾(こうけい:後ろに傾くこと)してしまい、背中が丸まった状態で何とか前に体を倒そうとしています。これでは痛いばっかりでさほど効果のあるストレッチとは言えません。股関節が硬い選手ほど壁を使って骨盤をまっすぐにする姿勢をまず身につけましょう。ムリに前に倒れる必要はありません。この姿勢を維持するだけでもかなりきついと思いますが、慣れれば少し時間を長くする、開脚の幅を少しずつ広げるようにしていきましょう。

 骨盤を立てる姿勢を身につけることは、野球のプレーにおいても重要になってきますので、毎日コツコツと続けるようにしましょう。

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[page_break:ランジ動作で動きやすい股関節に / 使った筋肉を伸ばすとより柔軟性がアップする]

ランジ動作で動きやすい股関節に

 さまざまな動作の中で股関節を動きやすくするためには、自重負荷などで股関節を十分に使っていくことが重要です。前に一歩踏み込むフロントランジや横への動きを意識したサイドランジでは、ただ単なる下半身強化のエクササイズととらえるのではなく、股関節に体重をしっかりとかけた上で、ストレッチ性を重視しながらエクササイズを行うと良いでしょう。ボールなどを使って行う場合は、より実践に近い動きが再現できますので、体の軸を意識して左右前後にぶれないように行うようにしましょう。

使った筋肉を伸ばすとより柔軟性がアップする

トレーニングした部位を伸ばすと、よりストレッチ感が増す

 股関節周辺部の筋肉に限ったことではありませんが、トレーニングなどである一定の負荷をかけた後にストレッチを行うと、いつもよりもよりストレッチ感が増し、柔軟性がアップします。これは筋線維を伸び縮みさせて動きがよくなったところにストレッチを行うことで起こります。例えばもも上げ動作を繰り返して太ももの前側の筋肉を鍛えた後に、ストレッチを行うと太ももの柔軟性がアップするということが見られます。

 これを応用すると、選手の皆さんそれぞれの「筋肉が硬い」と感じる部位をあえて負荷をかけてトレーニングを行い、その後にストレッチを行えば柔軟性の改善が大いに期待できるということです。ただし、こうした即効性の高いものに満足してしまい、その後のケアを怠っているとやがて柔軟性は以前の状態に戻ってしまいます。トレーニングもストレッチも同じ、小さなことの積み重ねが大きな結果を生み出します。

 股関節をすぐに柔らかくする魔法のようなエクササイズはありませんが、個人個人の持つ関節や筋肉の柔軟性を知り、エクササイズを練習前後に取り入れる、入浴後のストレッチを欠かさないといった日々の努力が必ず結果となって現れます。コツコツ続けて行うようにしてくださいね。

【股関節の硬さを克服しよう】
●股関節の柔軟性には「関節の動きやすさ」と「筋肉・腱などの柔軟性」がある
●骨盤が後傾してしまう選手は壁を利用してストレッチを行おう
●すべてのプレーにおいて骨盤を立てる意識を持とう
●体重を股関節に「乗せる」イメージでランジ動作を行う
●トレーニングをした後にその部位をストレッチするとより伸びる
●即効性を求めず、地道にコツコツと続けることが大切

(文=西村 典子

次回コラム公開は4月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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