城南vs穴吹
城南「4年に一度」への確かな予感
先発・林 大嘉(城南)
高校野球の選手たちは3年、正確には2年半が大会に出場できる期間となるが、世界のスポーツ競技は「4年に一度」が厳然たる括りとして存在する。
2020年の東京招致が決まったオリンピックに、サッカーではFIFA・ワールドカップ。他にも数多くの世界大会が4年に一度開催を行っている。よって、各競技の選手たちは4年間をかけ、最高のパフォーマンスを発揮する準備を日々整えていくのだ。
それとは一線を画すように見える高校野球にも実は「4年に一度」のタームは確実に存在する。中学生の進路選択はたいがい中学3年の春から夏にかけて固まってくるもの。実際に子どもを持つ親御さんや現役中高校生なら理解をして頂けると思うが、10月まで行われる秋季大会の状況を見て急遽進路を変更することは、学校との関連性や、推薦入試の時期、受験問題への対応を考えると困難である。となると中学球児へ1年秋から2年夏にかけてインパクトを残した高校が4年後に再び躍進を遂げていくのは、ごくごく自然の流れなのだ。
今大会での徳島城南が正にそうである。まずは4年前を振り返ると、2010年秋には県大会初優勝を遂げ(準決勝レポート)、初出場の四国大会も大会準優勝した香川西(香川)に7対6と健闘(試合レポート)
さらに21世紀枠出場ではじめて刻んだ翌年センバツでも、1回戦では田村 伊知郎(現:立教大2年)擁する名門・報徳学園(兵庫)に対しまったく臆することなく戦い、エース・竹内 勇太(現:関西学院大3年)の3ランなどで下す大快挙(試合レポート)。2回戦では鹿児島実の前に力負けした(試合レポート)が、相手の最低限の情報は与えつつ選手たちが個々の力を出し切るように仕向ける森 恭仁監督の采配、「5点以上取って3点以内に抑える」チームスタイルが、その後の徳島県勢躍進に先鞭を付けたことは間違いない。
穴吹のエースナンバーを背負う平岡 和真(1年)
あれから4年。この試合でも「スタイル」は貫かれた。1番・中川 直人(1年・遊撃手・右投左打・161センチ53キロ・徳島東リトルシニア出身)、3番・森下 天(2年主将・右投左打・166センチ62キロ・生光学園中<ヤングリーグ>出身)といった俊足選手を軸にベスト4進出へ挑んだ穴吹に対し、徳島城南は真っ向勝負で対抗。林 大嘉(2年・右投右打・170センチ65キロ・小松島市立小松島中出身)は140球12安打を浴びながらも7奪三振4失点で踏ん張る間に、打線は先発全員の22安打12得点。12対4で徳島城南が穴吹に勝利した。
「5分間の3箇所シード打撃時間でも、ペアを組んで3球限定で交代をして、試合での集中力を高めてきた」と、この試合では5打数5安打1打点、一塁駆け抜け3秒9台の3番・森山 翔太(2年・二塁手・右投左打・170センチ66キロ)は、試合後にその秘訣を披露してくれた。進学校ならではの「効率化」と「集中力育成」。これが、徳島城南を徳島城南ならしめている理由である。
加えて、第2回西日本野球選手権大会兼ダイアモンドカップで3位に入った徳島中央シニア勢は、森山、1番中堅手の若原 正樹(2年・両投左打・172センチ67キロ)、4番主将・捕手の奥居 大輝(右投右打・177センチ69キロ)など、センターラインを中心にスタメン9名中5名。投手が軟式出身というのは、4年前の構成とほぼ同様だ。
「4年前よりはみんな小粒ですが、元気がある。そして、この年代は小中で勝ち方を知っている子が多いので、練習でも押し付けることはせず、まず『何をやりたいか?』聞くようにしています。それで成功すると自信につながるし、今大会も勝つにつれて自信がついてきていますね」(森監督)
かくして、4年前の雰囲気が漂い始めている徳島城南。ベスト4の次に目指すものは、もちろん四国大会出場、そして野球の素晴らしさを学んだ「あの場所」である。
(文=寺下友徳)