試合レポート

向上vs横浜隼人

2014.07.30

向上、高いバッティング技術が光り、横浜隼人を下す!

 向上のバッティング技術の高さに注目した試合だ。1回に横浜隼人に先制された2回裏、向上は打者8人を送る猛攻で4点を返したが、そのよさがはっきり出ていた。

 無死一塁で打席に立った8番高橋 裕也は0ボール1ストライクから内角球を捕手寄りで捉え、押し込むようにしてレフト方向へ二塁打を打ってまず同点。一死後、1番三廻部 憂磨、2番鈴木 陵史の長短打で2点を加え、尚も一死三塁で打席に立ったのが3番菅野 赳門。2ボール1ストライクから投じられた内角寄りのストレートをやはり捕手寄りで捉えると、打球は右中間を深々と破る二塁打となって4点目を加えた。

 このミートポイントは以前からこのサイトで話題にしてきた。曰く、打者にとっては理想的だが、スイングスピードが緩く、押し込む力のない高校生では凡打を量産する“諸刃の剣”になる危険性がある――と。

 しかし、向上はそういう危険性には頓着しない。菅野は4打席連続でヒットを連ねるが、第4打席などは初球ストレートに軽くバットを合わせて逆方向のレフト前に運ぶなど、ミートポイントを奔放に替えて緩急に対応していた。このヒットなどで二死一、二塁とし、代打田村 将太の二塁打で1点を加え、向上は勝利を盤石なものにした。

 横浜隼人が2回に先制した場面ではやはり“押し込むバッティング”があった。二死一塁で打席に立った百合野 剛は捕手寄りのポイントでボールを捉え、レフト線へ二塁打を放っているのだ。これ以外、横浜隼人では捕手寄りのミートポイントは見られなかったが、7番打者による高度な技術への挑戦は高校野球の可能性を強く感じさせてくれた。


 3番宗 佑磨の走塁も見事だった。6月に右ヒザを骨折し、状態は完璧でないと聞いている。しかし、二死一塁の3回には初球ストレートをライト前に運んで走者一、三塁、と思ったらまったく足を緩めずに猛然と二塁に向かって間一髪のタイミングでセーフ、単打を二塁打にしてしまった。

 横浜隼人は2回の先制以降、8回まで得点機は再三訪れたが、あと1本が出ない。向上の先発・高橋 裕也の投げっぷりがよかったと言う他ない。球速は最速140キロ台中盤だが体全体を使って投げ込まれるストレートはバットを押し返す勢いがあり、これにスライダーとカーブを交えた緩急が冴えわたり、横浜隼人打線に付け入るスキを与えない。

 最大のピンチは9回に訪れた。横浜隼人は先頭の5番野田 翔也が一塁手のエラーで出塁、一死後7番百合野がマウンド付近にフライを打ち上げると、これを向上の投手と三塁手がお見合いをしてヒットにし、このチャンスに代打大堀 純一が右前に弾き返して3点差。尚も一、二塁とチャンスは続くが、後続が三振、内野ゴロに倒れ、万事休した。

 試合を振り返れば、走塁面で向上が圧倒していた。打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」を目安とする全力疾走では横浜隼人が1人1回しか達成していないのに対して、向上は5人9回達成していた。

 4点を入れた2回には先頭の亀井 智寛が内野安打で4.19秒、一死二塁で打席に立った1番三廻部の内野安打が4.25秒、そして2番鈴木 陵の三塁打が11.72秒という具合だ。2つの内野安打が得点に絡み、それらがいずれも一塁到達4.3秒未満だったというところに足の重要性が思い知らされた。

(文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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