試合レポート

富山商vs福井工大福井

2014.06.10

流れが変わった!

富山商vs福井工大福井 | 高校野球ドットコム 

5回裏、小フライになった打球を追う富川(富山商)

 前半の5回まで、福井工大福井のエース・田川佳弥(3年)の前に、わずか1安打に抑えられていた富山商打線。先発した背番号10の左腕。岩城巧(3年)は3回に1点を失っていた。そんな展開の中で、流れを変える出来事がおきる。

 5回裏、福井工大福井は四球と犠打、ヒットで一死一、三塁と富山商の岩城を攻めた。打席は3回に先制タイムリーを放っている1番島田優樹(2年)。ベンチの前﨑秀和監督はタイムを取って、背番号12の椎名喬平(3年)を伝令に送った。
「スクイズ(で点を取られるの)は仕方ないから、とにかくバッターでアウトを一つ取れ」と指示を受けた岩城と内野陣。

 1ボールからの2球目。福井工大福井の大須賀康浩監督は、富山商サイドが予測していたスクイズを仕掛けてきた。しかしキャッチャー・富川征哉(3年)の前へ、小フライとなる。キャッチした富川は、スタートを切っていた三塁走者・刀祢賢太郎(3年)が慌てて帰塁するのを見逃さず、送球してダブルプレーを完成させた。

 1点を覚悟してアウト一つを狙いながら、「ラッキーでした」とダブルプレーでベンチに戻った岩城。ゲームはグラウンド整備のため、少しだけ間が空いた。


富山商vs福井工大福井 | 高校野球ドットコム 

1失点完投の岩城巧(富山商業)

 整備直後の6回表。富山商は先頭の8番岩城が1ボール2ストライクからライトへヒットを放った。
「気を抜いたわけではないのですが、8番打者でピッチャーだし、油断しました」と相手投手に打たれたヒットを悔やんだ田川。このヒットをきっかけに、前半を完全に抑えられていた富山商打線が目覚めた。

 送りバントなどで二死二塁と場面が進んで、2番横道詠二(3年)がレフト前へのヒット。二塁からピッチャーである岩城が一気に返ってきて、同点に追いついた。

 そして3番坂本潤一朗(3年)がレフトオーバーの二塁打を放ち、勝ち越しに成功。さらに4番轡田拓馬(3年)も二塁打で続いて、このイニング3点目が入った。

 スクイズ失敗から流れを変えて、グラウンド整備後に自分達の流れへと持っていった富山商。逆にマウンドの田川は、「1回戦より球が走っていた。ただ中盤に失点するのは課題でした」と唇を噛みしめた。

 完全に流れを掴んだ富山商。岩城自身が打ったことで、ピッチングも前半以上にリズミカルになった。前日の小松大谷戦で完投したエース・森田駿哉(3年)とは対照的な技巧派左腕。球のスピードでは叶わないものの、「投球の上手さが自分の武器。そこでは(森田に)負けていない」と自信を持って話す。7回以降はノーヒットに抑え、勝利の瞬間は大きくガッツポーズをした。
「森田は自分の目の前に立ちはだかる大きな壁。それを乗り越えたい」と、夏のエースの座を奪いにいくために勝負をする決意を語った。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【宮崎】日章学園、富島、小林西などが初戦を突破<県選手権大会地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?