埼玉西武ライオンズ 菊池 雄星投手(花巻東高出身)
高校時代、左腕から投げ込む最速154キロの速球、キレのあるスライダーを武器に3年春のセンバツでは強豪校を破り、準優勝投手となった菊池 雄星(埼玉西武ライオンズ)。
菊池選手といえば、肩、肘の関節が柔らかく、ムチをしならせるような腕の振りから150キロを計測するのが魅力だ。その肉体を作り上げたルーツと背景、また、どんな感覚で速球に磨きをかけてきたのか。そして、グラブについても菊池選手のこだわりを語っていただいた。
高校時代のトレーニング、メンタル面
埼玉西武ライオンズ 菊池 雄星投手
――花巻東高校時代、一番きつかったけど、身になったと感じる練習は何でしょうか?
菊池 雄星投手(以下「菊池」) ウエイトトレーニングですね。ほぼ毎日やっていました。特にきついのはスクワットでした。
僕の場合は、高校時代は140キロぐらいの重さでしたが、今では200キロ近くを持ち上げられるようになりました。やはり、筋肉量と比例して、体も強くなって、球速も速くなると思うんです。
――菊池投手は中学時代から、身体作りはしっかり行っていたようですが。
菊池 そうですね。基本的には、フォームから入らなかったのが良かったと思います。僕はそれまでアーム式だったんですけど、フォームをいじらずとも体を作れば、フォームも直るというのが中学の指導者の方針で。
身体作りをしっかりとやった結果、フォームも安定してきました。身体作りを先にやってきて良かったと思います。
――ほかにも、今の菊池投手の実績につながっている練習はありますか?
菊池 走り込みは、あまりやらなくても良かったかなと思っています。ランニングよりも、僕は投内連係をやったほうがいいと思いますし、ランニングで疲れて投球練習をやる気持ちが下がってしまうのは、もったいないので。
やはり一番大事なのは投球練習で、足りない分はトレーニングでこなしたいですね。
――菊池投手が、投球練習で意識をしていることは何でしょうか?
菊池 やはり抽象的になってしまうのですが、リズムを大事にしています。調子が良くないときは、腕がどうで、手がこうでと考えるんですけど、良い時の共通点は、自分が良い動きが出来る感覚を掴んでいて、自然にできるということ。そういう時ほど、良い投球ができますね。
――本来の投球が出来ないときはどんな取り組みをしていますか?
菊池 腕が小さく出たり、テイクバックの動きが悪い時は、反復練習しかないですね。リズムを戻せば、それに沿って身体もついていくので、自分が良く動けるリズムを意識するようにして、大切にしてほしいと思います。
[page_break:菊池雄星投手が語る速球を投げるポイント]菊池雄星投手が語る速球を投げるポイント
埼玉西武ライオンズ 菊池 雄星投手
――菊池投手が考える『速いストレートを投げるポイント』は何でしょうか?
菊池 速い球を投げるコツというのは人それぞれで、チェックポイントが違うので、他の人に合うか分からないですけど、僕の場合は人よりも多くボールを投げてきたと思っています。
小学校の頃から投げることが好きでしたので、投げていく間に速い球を投げられるポイントを掴みました。
――菊池投手は、高校1年夏の甲子園で145キロをマークして、3年夏に154キロに到達しました。なぜ、ここまで球速が伸びたと思いますか?
菊池 花巻東は、身体作りを積極的にやる学校だったので、食事もかなりの量を食べました。身体が大きくなったことで、球速も伸びたと思います。
ただ、球速を上げるというのは、本当にコツというのが難しく、今日やっていることと同じことをやっていて、来年、コツが掴めるかどうかというのはまた別なんです。
コツを掴むには、今でも変わらず投げることが好きで、野球が好きで、野球のことを長い時間考えることで、見つけていけるものではないでしょうか。『これだ!』という感覚を掴む時があって、その翌日に試すとばっちりハマることもあるんです。
――なるほどですね。コツは言葉にできないにせよ、菊池投手がピッチング時に大事にしているポイントはありますでしょうか?
菊池 考えないで投げることが一番ですね。腕をしっかりと振れるところで投げる。自分は考えすぎてしまうところがあるので、やはり感覚を大事にして、マウンドの上では迷わずに行く。そこが大事ですね。
グラブへのこだわり
埼玉西武ライオンズ 菊池 雄星投手
――菊池投手は、グラブ選びの際にこだわっているポイントはどこですか?
菊池 自分が持っていて、テンションが上がるグラブを選んでしまいますね。色も形もデザインもこだわります。
形に関しては、最初に投げた瞬間で合うグラブ、合わないグラブが分かるんですよね。形によって投げるフォームが微妙に違ってくる感覚はあります。
――そんな菊池投手のグラブの型作りでのポイントはありますか?
菊池 僕の場合は特に型作りをすることなく、キャッチボールをしながら、ならしていきます。そうすると、グラブも手の動きに合わせて、しっくりした形になっていきます。
――菊池投手のグラブを見ると、指と指の感覚が広いという印象を受けます。
菊池 そうですね。僕自身、グラブに合わせるというよりも、グラブが(自分の手に)あってくれた方が良いので。僕のグラブは小指と親指が開くようになっています。というのも、そこに制限があると、捕れる打球が捕れなくなるので、そこの可動域の広さは、常に重要視しています。
――グラブに対して、こだわりのポイントをいくつも持っているのですね。
菊池 僕の場合、本当に手の動きと一緒の動きをしてほしいので。僕はこの薬指と中指にぐっと力を入れるので、柔らかく動いていくれるグラブを求めていますね。
――そうなると試合で使えるようになるまで、かなり時間をかけてグラブ作りをするのですね。
菊池 僕がシーズン中にグラブを変えるということはまずなくて、やはりオフの間に作って、それを1年間かけて使うので、時間はかかると思います。
また、他の選手は、練習用・試合用で分けるんですけど、僕は練習の時からグラブの重さは同じでいたいので、キャッチボールの時から試合で使うグラブを使用しています。シャドーピッチングでも、そうですね。
練習用のグラブで良いボールを投げていても、グラブが違ったら、感覚が多少違ってしまうので、試合用も、練習用も、同じグラブを使いたいんです。
高校球児へのメッセージ
埼玉西武ライオンズ 菊池 雄星投手
――1年夏と3年春・夏に甲子園に出場しましたが、甲子園はどんな場所でしたか?
菊池 幸せな場所でしたね。あそこで、高校野球が終われるのは幸せなことで、高校野球はプロに入っても、二度と味わえないスリルがありますし、出来ればもう一度味わってみたいと思っています。
――特にこの場面に戻りたいという場面は?
菊池 試合のワンシーンよりも、寮生活に戻りたいですね。寮生活は本当に楽しかったんです。勝ち負け以上に、みんなで過ごした3年間の方が、僕にとって大きかったです。
――今、プロの一軍で活躍している菊池投手の基礎となっているものの一部は、高校3年間で過ごした時間かもしれません。改めて、プロで活躍するために大事なことを教えてください。
菊池 どれだけ、自分の力を出せるかだと思います。プロ野球選手は、力があるからプロに入ってくるわけで、環境が変わったからといっても、故障をしない限り、自分の思い通りのボールを投げることが出来れば打たれないですし、それが投げられなければ打たれる。そういうものだと思います。
だからこそ、大事なのは自分が持っている能力100%のうち何%を出すことができるか。なので自分の100%をいかにして出していくかということを常に意識しています。
――それでは最後に、この夏に挑む高校球児たちにメッセージをお願いします!
菊池 夏まで残り少ないです。とにかく野球に集中することが一番だと思っています。僕が、あの時間に戻りたいと思っても、戻れるものではありません。ほかに興味のあることがあったとしても、本当に野球だけに集中して、最後は100%を出し切ってほしいと思います!
菊池投手、ありがとうございました!今後の活躍も応援してします!