Column

第6回 埼玉県高校野球指導者勉強会

2014.01.18

指導者としてのこだわり

司会進行の柴田隆幸先生

 高校野球の指導者、関係者の間では対外試合がオフとなっている期間の12月から2月(厳密には3月の1週目)までの間は、有志が集まり発起人となって、それぞれの地域などで勉強会や、研修会などが開催されることが多い。埼玉県では、南稜の遠山 巧監督や大宮南の配島 耕太郎監督、現在は野球部のない川口北で充電中の柴田 隆幸先生などが中心となって、30代を中心とした比較的若い指導者たちの集まる勉強会が行われている。
 今年も1月第2日曜の12日に、南稜高校で地元川口市の中学校の指導者なども参加して行われた。今回のテーマは、「指導者としてのこだわり」ということで、チーム作りから指導方針、あるいは野球のスタイルなどについて、それぞれのこだわりについて話し合われた。

 会は、6つのテーブルに分かれて、分科会形式でディスカッションしていき、とくに結論を求めていくというものではないのが特徴でもある。
 さまざまな意見が出ていった中で、川口市立在家中で指導をする酒井 顕正監督は、体力も体の成長も考え方も、すべてが発展途上の中学生相手の指導という中で、あえて「心技体ではなくて技心体という考え方」に対してのこだわりを示していた。
 これは、野球を通じて身につけて欲しいことはたくさんあるのだけれども、野球をやっている以上、上手になって自信を得るという成功体験も大事なのだというこだわりである。

さまざまな意見、考え方、こだわりが発表される

 東京都から参加していた都立永山の西 悠介監督は、「社会に出た時にレギュラーとして活躍できる人材の育成」が最大のこだわりだというが、そのためにはまずは学校生活をきちんとしていくところから始めていったという。ことに、都立永山の場合はグラウンドには恵まれていたものの、西監督が赴任してきた当初は、勝とうとする野球という意識はまったくなく、(違った意味で遊びのように)楽しく野球がやれればそれでいいという考えがほとんどだったという。それは、西監督が早稲田実で経験してきた、甲子園を目指して必死にボールに食い下がっていこうとする野球とは全く対極にあった。

 それでも、徐々に意識を作り上げていくところから始めたという。そうした中から、選手個々にも野球に対するこだわりを育てていったのである。そうした、ゼロからのチーム作りについての意見なども交わされた。

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チーム作りのためのキーワード

それぞれの分科会で討議

 分科会は休憩を挟んで、一度シャッフルする形で再度、グループのメンバーを変えて討議が進められていくという方式で、午後3時から6時まで行われた。
 そうした中で、他にも次のようなキーワードがあがっていた。

「進塁」…もちろん、次の塁を狙うことと、相手に次の塁を与えないこと、このことに拘るだけで野球の質が違ってくる。
「慣例を壊す」…何か言われたら、やみくもに大きな声で「はい」と言わせるのではなく、本当に理解しているのかどうか、わかっているのかどうか、そのことを確かめていく。そのためには、慣例となっていたことを壊すことも必要。

分科会で熱い討論

「役職」…主将も含めて、選手個々に一つひとつの役職を与えていく。試合に出る出ないではなく、部としてその役職を果たしているのかどうか、そのことにこだわって選手を評価していってあげる。
「壁を破る」…チームの序列や格として上だと思われている相手に対して、名前で萎縮するのではなく、その壁を破るところから始める。
「準備」…公立校が私学の強豪を倒すには、考えられない相手のミスなど、棚から牡丹餅のこともある。ただ、その牡丹餅を食べられる準備だけは、絶対にしておかなくてはならない。

 今年もまた、さまざまな思いで、新しいシーズンを迎えることになるのが、楽しみになるような指導者たちの熱い思いの吐露だった。

(文・手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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