トレーニングの組み立て方
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いよいよ冬本番。オフシーズンを迎え、この時期に身体を鍛えようという選手も多いのではないでしょうか。でも、トレーニングって何をどうやったらいいんだろう、何に気を付ければいいんだろう、なんて思ったこと、ないですか?一番大事な基本だけど、いまさら聞けない、どこに聞けばいいのかわからない。
そんなモヤモヤを解消しようと、プロ球団でトレーナーとして指導し、理学療法士でもある片田敬太郎さんに、冬のトレーニングの組み立て方や注意点について伺いました。
トレーニングの組み立て方
トレーニングをする、となるとどうしても、体の一部位に特化してやってしまいがちです。全体的なバランスを考えてトレーニングメニューを組みましょう。冬は気温が低いという環境的な要素が強い時期ですので、まず体温を上げること。
ウォーミングアップをしっかりして筋肉を暖めてからトレーニングに入るようにしましょう。
まずそこの一番初めの取り掛かりが無く、身体が硬いままトレーニングを始めてしまうとケガもしやすいですし、より硬い身体を作ってしまう可能性も出てくる。だから最初にしっかりとしたウォーミングアップをすることが大切です。寒い屋外はもちろん、暖かい屋内でもです。
トレーニングとなるとすぐにやってしまいたい気持ちはあると思うけど、ストレッチやウォーミングアップをしっかりとして、トレーニングを始める前の身体がどんな状態なのかを把握することから始めてください。
昨日と比べて肩は動くか、どこか痛い部分は無いか。それはどのトレーニングを行ったから出ているものなのか。ストレッチには準備の意味合いもありますが、このように身体の状態を把握するという意味が大きいんです。
その上でトレーニングをして自分の身体の変化を追えなければ、効果はあまりありません。日々の自分の身体と向き合い、確認をしていきましょう。
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どこから鍛えればいいの?
では、実際にどういうトレーニングをしたらいいのか?というところですが、まず、俗にいう体幹。身体の中心や骨盤の周囲のトレーニングをすること。
そこを最初に鍛える理由としては、そこが崩れてしまうと、余計な力が入ったり正しい姿勢が維持できず、目的とするトレーニングができなくなります。どんないいトレーニングであっても、姿勢が崩れてしまったらまったく意味がない。やらないよりはマシかもしれない、というレベルになってしまう。とにかく姿勢が大事。一に姿勢、二に姿勢、です。
姿勢が崩れるとどうなるか。鍛えるべき部位と違う部位を使ってその動作をしてしまうんです。そしてそれは、自然と楽な方に向かいがちです。人間は楽をする生き物ですから。本人は頑張ってやっているのに、身体は無意識に楽をします。だから僕らから見たら、あ、楽な形でやってしまっている、ということが良くありますね。
そうなると、良かれと思ってやっているトレーニングが、身体のアンバランスを生む、ということがよく起こりがちです。楽な姿勢になるということは、弱いところを強化している、というより、強いところをもっと強化してしまっていることですから。
正しい姿勢とは
▲骨盤が立ち、体幹が一直線になっている
では、正しい姿勢とはどんなものか。それは基本的に、骨盤が立っている姿勢です。
この骨盤が立っている状態というのは、実は自分にも周囲にもわかりやすいものなんです。要は、前に丸まってしまう姿勢が良くない。例えば座っていて背中が丸まっている時は、骨盤が真っ直ぐ立っていない。胸を張って背筋を伸ばしてみると、骨盤周りも真っ直ぐになります。この感覚ですね。真っ直ぐ、を意識していれば、だいたいは大丈夫。
一流の選手はそのような姿勢を勝手にやっていたりするんですよね。イチロー選手なんか、すごくピッと真っ直ぐしていますよね。あんなイメージです。球場で活躍している選手で、ふにゃっとしている選手、いないですよね。
良い姿勢の定義は、皆さんが想像する、背筋が伸びた良い姿勢、っていうイメージで大丈夫です。猫背じゃなくて、胸が張って、真っ直ぐ綺麗に立ってるな、というもの。わりとイメージをしやすいし、一目でわかりやすいけど、なかなか出来ている人って少ないんです。
テレビを見ている時の姿勢が崩れていないか、本当にそこからですね。特別なトレーニングももちろん大事だけど、日常の姿勢から見直すことも、言ってみればトレーニングの一環です。
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[page_break:ゴールの決め方と注意点]
ゴールの決め方
選手が立てる目標、ゴールはわかりやすいもので良いと思います。「球速アップ!」「飛距離アップ!」「身体を大きくする!」とか。ウエイトトレーニングなんかで、30kgしか負荷をかけられなかったのが50kgまでかけられるようになった、というのも十分ゴールだとは思うんですけど、それって実際の競技とは別ですもんね。選手としては、一冬越えて、野球選手としてどうなったかの結果が欲しいと思うので。
例えば球速を10km/h上げる。これは高校生であれば、体幹を鍛えること、正しい姿勢を心がけることで十分可能です。
見直しの期間は3週間
▲数を追及するのではなく、姿勢を意識しよう
目標を決めたら、それに対してトレーニングメニューの組み方を定期的に見直しましょう。期間はだいたい3週間。ウエイトトレーニングをやったことがある人はわかると思うんですが、最初にやり始めたときに20kgで結構キツイと思っていたものが、3,4日たつと楽になってくるんですよ。
でもそれは、実は筋力が上がったわけではなくて、脳が楽だと感じているだけなんです。筋肉に指示を出すのは脳です。脳がその動きの指示を出すのに慣れた、ということなんですね。筋肉が強くなったわけではないんです。神経の量が増えただけ。だから、その時点でさら負荷をかけるのではなくて、もう少し正しい姿勢を意識していく、ということが大切です。
脳が慣れる、ということは、気を抜くとまた身体が楽な方向へ動いている、ということですから。3週間というのが、その脳の感覚、動きの馴れが終わる時期。休息も入れつつ筋肉が壊れて再生して、というのを繰り返して、タイミングが良いのが3週間なんです。
それで、あまりにも楽だったり、正しい姿勢でトレーニングが出来ていて、回数を増やしても問題なさそうだ、となったら、はじめておもりを増やしていくようにしましょう。
ウエイトトレーニングを始めたばかりの選手は特に、「やった感」がすごく出るんですよね。なんか満足。しかも、ちょっとやったら軽く感じちゃった、俺強くなってる!って。本当は、適正な負荷をかけて正しい姿勢でやると、大体15回くらいで出来なくなるんです。そのくらいの負荷から始めてください。
15回やっても楽、もしくは回数増やせるぞ、という場合は、本当に負荷が軽いか、姿勢が正しくないかです。「10回だったのが、15回、20回出来るぜ、どうだ!」とすぐになりがちなんですけど、じゃあ本当にそれって正しい姿勢で出来ているの?となると、楽な姿勢になっている人がほとんどですね。違う筋肉を使ってしまっているので、本当に鍛えたいところにはあまり意味のないトレーニングになってしまうんです。
とにかく姿勢を意識しましょう。
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トレーニングの注意点と振り返りの重要性
▲理学療法士 片田敬太郎さん
あと、日々の振り返りですが、筋肉痛が出るところを注目することがすごく重要。筋肉痛が出るということは、そこを使ったということですよね。その痛い部分は本当に鍛えたいところなのか、ということです。
そことちょっとずれていたりした時は、姿勢が正しくないか、負荷が大きすぎるか、もしかしたら回数が多すぎるかもしれない。使った筋肉が痛みでわかるので、ちゃんとトレーニングが出来ているのか、良い判断材料になります。
トレーニングはその振り返りの連続です。今、鍛える方法は本などをちょっと見ればいくらでも知ることが出来ます。そのほとんどが良かれと思って書かれているものなので、身体を鍛える方法論としては説得力があるんです。でも、基本が出来ていない選手がやってしまうと、意味がないどころか身体を壊してしまうことさえある。
選手は一生懸命なので、「このメニューを100回やれ」っていったら100回やるんですよ。ただその100回は、本当に意味があるのか。そこを振り返らないといいトレーニングとは言えないです。
だから、回数だけをやる、方法論だけを見る、というのは危険ですね。振り返りをしっかりと行って、意味が無いかな、少し方向性が違うな、となったら、変えることも必要です。
そういったことを判断するためにも、やはり自分の身体の状態を把握しておくことが必要です。日々のウォーミングアップ、日々のストレッチで身体と向き合う、ということを欠かさないようにして、この冬のトレーニングを良いものにしていきましょう。
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